194.群れとの遭遇と作り話
「……ふと思ったんやけど、7割成功って今日の運勢が悪かったら全部失敗って事あるかな」
「はぁ?例えミスりまくったとしても失敗にはならんだろ?」
「えっ、どういう事?」
心に浮かんだ不安要素を吐き出す為に、失礼なのは承知の上で懸念点を伝える。だがクロードは不思議そうな顔で俺の不安は杞憂だと言う。
「あのな、仮に【直感】で導き出した魔物がリーダーじゃなかったとして、その時はそのベビースライムを倒す。その後は再度【直感】でリーダーを探す。それだけの話じゃないか」
「……確かに一発で成功させなあかんって訳ではないよな。でもそのスキルってホイホイと使えるもんなん?」
「一応STとMPをそこそこ使うが、ポーション支給されてるしな。後レイヤースライムの戦力的に他の4人で対処出来るから【直感】係に専念できるってのもあるけど」
「確かに運が良かったとはいえ、俺でもソロで倒せた相手やもん。熟練の冒険者なら楽勝か」
「そうそう、無用な心配してねぇで俺達に任せとけばいいんだよ」
俺が思い描いた不安は杞憂だったのだと、完全に納得。これで心置きなく群れに挑む事が出来そうだ。
「じゃあ、心配事も無くなったし、お仕事再開やな〜。っておっ?」
「来た来た来た!ノーマンの奴、何か見つけたみたいだな!」
【直感】についての杞憂が晴れたタイミングで、一番西で探索をしていた男が上空へ信号弾を放つのを目視する。俺とクロードはついに出番が来たと、テンションを上げながら彼の元へと走り出した。
『モナ、聞こえるか。こちらでノーマンが何かを発見した。当分の間ソーイチを派遣できないから、しばらく休憩しておいてくれ』
『了解!先越されたのは残念ですが、頑張ってください!』
「早速【念話のイヤーカフ】大活躍やな」
「そりゃあ、この為に借りてる訳だしな。それより俺はノーマンの元へ先に向かうから、ソーイチは東組と一緒に向かってくれ」
サブパーティーへの連絡を終えたクロードは、ペースを上げて走り出した。
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「ゼェ〜ハァ〜。さ、流石にクロード足速いな!?」
「私達のリーダーですからね。それより【ハイスピードアップ】。これで少しは楽になると思います」
「あっ、ありがとう。結構マシになったわ」
「いえいえ。今回の依頼はソーイチさんが居ないと始まりませんから」
ステータスが違いすぎるせいでクロードから大分離される中、東側の探索を任されていた女性メンバー(確かフルールだったか?)から強めの付与魔術を掛けてもらう。その効力のおかげでなんとか東側組と同時に群れの元へと辿り着く事が出来た。
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「こ、これまたデカい群れやな。ぶっちゃけ俺が見たやつより多いんとちゃうか?」
「俺もベビースライムがここまで大規模な群れで移動する姿は初めてみるぜ」
「Bランクパーティーでもまず見ないレベルなんか……。って、それよりちょいと失礼」
自分より遥かに格下の魔物であっても、この数の群れには驚くのだろう。俺は目を見開くメンバー達の横を通り群れへと近く。
そして【心眼(序)】をオフにした上で、サングラスを外し確認するも、
「う〜ん。改めて確認したけど、やっぱり目視で見分けるのは無理っぽいな」
どれがベビースライムリーダーか、見分ける事は出来なかった。
「……。なぁ、今から仕事ってタイミングで聞くのも変な話なんだが、ソーイチはなんで調査中なのに色メガネを装備したままなんだ?注意力も落ちるし、危ないだろ?」
「あっ、迷惑やった?それはすまんな」
「迷惑ってほどじゃないさ。それよりポリシーか何かなのか?」
「うう〜ん。そこまでのポリシーはないけど……。実は前回遭遇した時に群れの判別出来なかったんが悔しくてな。その解決策として、発見まで色メガネ着けることで、パッと外した瞬間に見えるスライム達の微細な違和感を感じれる様にしたって訳や」
「確かにじ〜と見てるとどれも同じに見えるけど、しばらく目を瞑った後にパッと見ると意外と気付いたりするもんな。メガネの着脱で同じ事が出来るなら、フィールドで目を閉じるってリスク無しで、先入観も排除出来る。うん、その方法使えば【直感】の精度も上がるかもしれんし俺も試してみたいな」
【心眼(序)】を誤魔化す為に、適当にでっち上げた作り話だったのだが、思ったよりウケが良さそうです安心する
「クロードカッコいいし、冒険以外でも活用したら今まで以上に女の子からモテそうやな」
「本当か!?」
「本当本当。ウチの売店で売ってるから気が向いたら来てな」
「絶対行くから、売り切れない様にしといてくれ!」
「オーケー。各種取り揃えるように伝えとくわ」
Bランクになってもモテたい気持ちは変わらないのだろう。欲丸出しのクロードの様子から完全に【心眼(序)】を隠し切れたのだと確信した。
「そんなの掛けてもリーダーはモテないんだから戻ってきて下さい。モナ達待ってるんだし、さっさと【直感】使ってくださいよ」
「非モテリーダー、さっさとして下さ〜い」
「酷い!?俺リーダーだぞ!?……はぁ、【直感】」
仲間に弄られ半泣きになるクロードは、項垂れながらもスキルを発動させる。
そして目星がついたのか群れの真ん中をスタスタと歩いていく。
「多分コイツがリーダーだ。ソーイチ【インタビュー】で確認してくれ」
「おう。【インタビュー】……。よし!一発目で引いたで!」
「おお〜、ナイスです。こりゃモテモテですわ」
「よっ!色男!」
「褒め方雑すぎんだろ!?」
まるで文化祭で見るコントの様な楽しくもコテコテなやり取りを楽しみつつ、俺は【ビジョンスキャン】からの【5枚刷り】で撮影・印刷をこなし、リーダーに【メモ】で印をつける。
「撮影完了!もう始めちゃってええで」
「聞いたな。これより1回目の調査を開始する。ソルトボールだけで倒すのと、リーダーは残しておく。この2つには気をつけるんだぞ」
「「「「了解!!」」」」
その掛け声と共に本日1回目の群れとの戦闘がはじまったのだった。
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