190.試験免除とDランクで出来る事
「よし!撮影会は終わり!各員、来たるイベントへ向けて今日も研鑽に励んでくれ!」
「「「はい!!」」」
「後ソーイチ、ちょっと良いか?」
「うん、どうした?」
ユサタク〆の言葉が区切りとなり、他のメンバーはそれぞれの目的地に転移していく。俺もその流れに従い冒険者ギルドへ向かう為に転移クリスタルを手に取るが、呼び止められる。
「今からDランク昇格の手続き行くんだよな?」
「ああ。ポイントは達成済みやしな」
「そうか。ウチのクランはアースの町解放依頼の先行受注者だから免除されると思うが、万が一昇格試験があった場合、内容を書き留めておいてくれないか?」
「試験?……ああ!そういえば次からは試験あるって言ってたな!それを免除されるんか!?」
前回ランクアップをした時に受けた説明に、そんな事を言われた記憶がある。しかも知らない間に試験免除の権利を手に入れていたらしい。
「ああ。俺がDに上がった時、受付から免除ですって説明受けたぞ」
「助かったぁ〜。試験の難易度次第で、今日中にランクアップ出来へんところやったで」
「ハァ〜。試験についてはソーイチが教えてくれた内容だろ?てっきり知ってるもんだと思ってたが、念の為に確認しておいて正解だったな」
「ああ、教えてくれてありがとう。早速ギルドに行って確かめてくるわ」
俺はユサタクに感謝を伝え、冒険者ギルドへ転移していった。
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「おっ、開店より遅れたのに、この窓口では一番乗りやな」
「ははは。基本的にランクの昇格作業は、依頼達成の報告でAGP獲得後に行うものですし、朝一番に来られる方は少ないですね」
「なるほど。確かにそうなるか」
冒険者ギルドに到着した俺はまっすぐにランクアップ専用窓口に向かう。幸い前日にポイント達成してるのに翌日に回したバカは俺1人だったようで、少し遅れたのに並ばずに受付する事が出来た。
「おはようございます、ソーイチさん。本日はランクアップのお手続きをご希望ですか?」
「ああ。昨日ノア・タイムスで残業したらポイント超えてしまって。早速手続きの方よろしく頼む」
「かしこまりました。……ふむふむ、ポイントは達成しておりますね。では次に昇格試験を本来なら行うのですが……。うん、ソーイチ様の貢献度は一定水準を超えている為、今回は免除させていただきます」
「おっ、ありがとうございます!」
ユサタクからの情報通り、このままランクアップまで進める事ができそうだ。
「それではDランク昇格の手続きをしますので、一旦カードをお預かりいたしますね」
「はい、どうぞ」
受付さんは俺から冒険者カードを受け取ると、いつものように魔道具に差し込み更新作業を進める。
「……カードの更新が終わりました。おめでとうございます。ただいまよりソーイチ様の冒険者ランクはDへと昇格致しました。カードをお返しいたしますので、お間違えないかご確認お願いします」
「ありがとう。……うん、ちゃんとランクアップ出来てるな」
「では、ランクアップの手続きは終了となります。続いてDランクの特典の説明に入りますが、お受けになりますか?」
「そうやな〜。朝イチで忙しいと思うし、仕様書があるなら、それだけ貰える?」
「お気遣いありがとうございます。では、こちらがDランク昇格の小冊子になります。ご不明な点がございましたら、いつでも窓口の方にお越しくださいませ」
「ああ、その時は寄らせてもらうわ」
そう言って俺は窓口から離れた。その後総合窓口に移動し、フレンに【ビジョンスキャン】を習得した事を伝えてから、ホームへ戻った。
「さてと、調査隊開始まで2時間ちょい。まずは冊子を読み込むかね」
俺は【木漏れ日の安楽椅子】に座り、貰ったばかりの小冊子を読み込んでいった。
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「よし、読み込み完了。とりあえず要点を書き留めていくか」
10分ほどで読み終えた俺は、冊子の内容を自分流にまとめていく。
まずDランク昇格で増える機能の中で、有用なものは大きく分けて3つになる。
まず1つ目が依頼受注の枠の拡張。現在は同時に受注できる依頼数は冒険者・ジョブギルド合わせて8個までだが、Dランクからは10枠まで受注可能になった。
ただ、
「枠増えても忘れっぽい俺が、受注したやつの管理できる気がしないのが問題やな」
宝の持ち腐れになりそうではある。
2つ目は師弟システムが1枠増加。これは途轍もなくデカい!今まで以上に熟練度・経験値を得られるばかりか、瞑想実験の際の寝太郎くんのように自分を売り込む事も可能になりそうだ。
最後に冒険者ギルドが経営しているラウンジの利用権。これが1番の目玉になりそうだ。
「ふむふむ、ノアの町に複数あるDランク以上専用の酒場やカフェか。ここを訪れた冒険者が書いた手記が置いてたり、パーティー専用個室も有料で用意されてる。これは人脈作りや大冒険の前の集会場所的な役割を持った施設っぽいな」
まだまだランクは低いので、高級サロンやVIPエリアとまではいかないが、駆け出しを卒業した未来のAランクの者達が、仲間や情報を求めに集まるのだろう。
「はぁ〜。アニメや小説で見た酒場、あの喧騒と活気に溢れた場所に参加出来るんかね〜」
俺はまとめ作業に勤しみながらも、ファンタジー小説で描かれる酒場の一員となる姿を思いかべていた。
昇格試験については25話に時に書いてたりします!
次回は12月14日(日)午前6時に更新予定です。
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