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ミックスジョブオンライン〜ラノベ作家はネタ集めの為賞金付きVRMMOに不遇職で挑む  作者: モトマル
4月2日①【ワールドクエストの告知と【瞑想】実験】

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151.悪魔の椅子と作家魂

「ふぅ〜。えっと感想の前に色々聞いてええかな」

「おう!なんでも聞いてくれ」

目の前の禍々しいものから気を逸らす為、俺は気になるポイントを1つずつ質問していく。


「まずは、腕と足、腹の部分にある拘束具っぽいバンドは何や?逃亡防止用か?」

「これはシートベルトだな。移動中に椅子から転げ落ちない様に体を固定することができるし、全てロックした状態だと【待機】のレベルが1つ上がるんだ」


「へえ。そりゃ凄い。で、次に移動用の台座に新しく追加された、点滴みたいな装置はなんなん?」

「これはうちの生産部が頑張って作った傑作でな。点滴部分にジュースやポーションを流し入れると、チューブを伝って流れてくるんだ。で、この先っぽを咥える事で自動的に飲み干すことが出来るんだよ!」


「ほう。ちなみに、ストッパーというか、チューブから口を離しても大丈夫な装置はあったりするん?」

「いや。一度流し込んだら飲み干すまでは流れ続けるな」

「なるほど、なるほど……って、アホか!!俺の椅子に何してくれてんの!?」


何か救いはないのかと気になるポイントを1つずつ潰していた筈なのに、結果として地獄しか残らない状況に思わずツッコミを入れる。


「うん?移動用のキャスター付き台座とかを用意すると言ってただろ?」

「『とか』の部分が多すぎや!目隠し・耳栓着けた上に全身を拘束されて、更に口にポーションを一気に流し込まれるってどんな拷問器具やねん」


「ははは、すごい絵面になりそうだな」

「笑ってんとちゃうぞ。というか訴えたら君らを何かしらの罪で問えると思うで」

「ナイスジョーク!」

「そのテンションなんなん……。というか見てみ、寝太郎くんや農協の皆さんのドン引きした顔!これが一般プレイヤーの感性というか世論や」


俺の言う通り寝太郎くんや田吾作などの一般(エンジョイ)プレイヤー達は引き攣った顔でジリジリと後退りしていた。


「う〜ん。うちのメンバーは誰一人引かなかったんだけどなぁ」

「実際効率的っすもんね」

「これに座っての実験って、町中での最高率の経験値稼ぎですよね〜」

「あ、次私が使いたいで〜す」


ユサタクの言葉に、他のメンバーからも同意の声や次の実験体を希望する声まで挙がっていく。


「ここまで人間性を捨てないとプロゲーマーになられへんのか……」※そんな事はないです。

睡眠問題の時にも感じたプロゲーマー達への恐怖を、今改めて感じてしまう。


「ホンマ怖いわ〜……ってあれ?」

俺は思わず目を逸らすついでに、椅子を情報を確認したのだが、【木漏れ日の拷問椅子】とアイテム名すら変わっている事実に気がついた。


「おいおい、名前変わってるやん!【木漏れ日の拷問椅子】って、【木漏れ日】と【拷問】がミスマッチすぎるやろ!」

「ああ、シートベルトつけた時に、名前が変わったんだ。すでに完成している魔道具を改造する事で名称が変わるとかビックリだよな」


「しかも色味も少し暗めに変化してるんですよね」

「そうそう!絶対【オモイカネ】なら高く買い取ってくれる筈っすよ!」

「コラッ!確かに驚きの新事実かもしれんけど、そこじゃなくてさぁ」


話の通じない仲間達(宇宙人)に心が折れてしまいそうになる。そんな時ユサタクが、

「ここまでクレームばっかり言いまくってるけど、お前の口元ニヤけてるぞ?」

「うえっ!?」

と、核心を突く反論をぶん投げてきた。


「笑ってるって、俺さっきから怒りのツッコミ入れまくりやったやん」

「そういう前振りというかロールプレイだろ?お前の性格だと、内心じゃあウマいネタゲットってほくそ笑んでる筈だ」

「ぐぬぬ……」


確かにユサタクの言う通り、先程までの怒涛のクレームは本気ではなく演技。実際に椅子を目にしたキャラクターが取るであろう行動を経験する為のトレースである。

実際の感情は、熱々おでんや熱湯風呂を前にした芸人に近いかもしれない。


「そこまで分かってるんやったら、そのままノってくれたらええのに……。ロールプレイって一度素に戻ったら、羞恥心ぶり返すんやで?」

「うちのクラン内だけならそのままでもいいが、今回はお客様が多いだろ。ここらでネタバラシしとかないと【ユーザータクティクス】エースとリーダーの不仲説とか流れるぞ」

「えっ!?」


ユサタクの指摘に、ガバリと周りを見渡すと農協所属のプレイヤー達が戦々恐々、ハラハラした面持ちでこちらを見ていた。


「あっ、それは考えてなかったわ。急な寸劇でビックリさせたみたいでごめんな。決して本気でケンカしてる訳ちゃうから」

「気にしないで下さい。二人が仲良しなのはわかりましたし。ははは……はは……」


我ながら配慮が足りなかったと周囲に謝罪する。観客で一番近くにいた寝太郎くんが代表して、引き攣った笑みと乾いた笑い声でなんとか許してくれた。

そんな変な空気感の中、少し離れたところで見ていた田吾作の、

「効率良いなら拷問椅子を使うプロゲーマーも、ネタの為なら喜んで座る作家先生も、どっちも恐ろしいべ」

この一言は周りのプレイヤーの心情を完全に表現したものであった。



tips

今回の実験で使用するアイテム一覧


静音の耳栓

装備時、状態異常【消音】 【瞑想】レベル+1


ずり落ちた鉢巻

装備時、状態異常【盲目】 【瞑想】レベル+1


車輪付き台座

上に載せたものを運ぶ事が出来る(最大搭載量150kg)


拘束シートベルト

両腕・足と胴部分全てに装備時、状態異常【拘束】 【待機】レベル+1


強制ポーションがぶ飲み君

上部のホルダーに飲料系アイテムをセットすると、チューブを介して摂取する事が出来る。命名:フワフワ


木漏れ日の拷問椅子

木漏れ日の安楽椅子+車輪付き台座+拘束シートベルト+強制ポーションがぶ飲み君 を組み合わせて生まれた悪魔のアイテム(分解可)

見た目が少しゴツくなり、色味も明るい茶色からダークブラウンに変色している。

次回は11月2日(日)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ソーイチが謝っているけど、ユサタクが元凶なんだから、モヤッとする。 寸劇をしたくてこんなのにしたのでは?疑惑が拭えない。 「待機」が上がるけど、拘束されているのは待機といっていいのだろうか? 動かな…
ほぼ無断での不可逆での魔改造なら流石にダメだろって思ったけど、可逆なら許容範囲か。よかった。
安楽椅子にも戻れるんだ? 良かったですね。
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