150.協力者と最終チェック
【陽の月2週目、土の日】【4月2日15:35】
ーログアウト中、ソーイチ様の偉業が世界全体へアナウンスされましたー
少しの休憩を挟み、再びログインした俺を迎え入れたのは、俺を称える見覚えのない通知であった。
(不在中でもアナウンスは流れるで確定か。検証終了、この世界の謎がまた一つ解明されたってか?)
PPの獲得や疑問解決により気分がノリ、鼻唄混じりで小屋を出る。
「おっ、ソーイチ。おはよう」
「おはようさん。昨日議論してたアレ、不在時でも流れるっぽいな」
「らしいな。俺も流れた時はINしてなかったんだが、アナウンス監視スレで確認したよ」
「アナウンス生で聞けへんのは正直残念やけど、ログインと同時にワールドアナウンスをドーン!とかじゃなくてよかったわ」
「だよな。アナウンスでインしたって情報が他プレイヤーにバレるとか、今後の戦略見直しも視野に入るレベルだしな」
「あ、そっち?俺はプライバシーの方心配してたわ」
同じ懸念をしてたのに、違う視点だったユサタクに驚きと新鮮さを感じる。
その後少し雑談をした後、ユサタクは他のメンバーの元に向かい、俺は新聞を読み始めた。
(おお!!ホンマに俺の書いたの載ってるな!)
普段なら一面から順番に読み進めているのだが、本日はペラペラと自作の記事までめくる。
(うんうん、少し地味ではあるけど、我ながら読みやすい構成しとるな。……ところで今日の要約って、俺の記事もやらなあかんのか?正直な話、俺が書いた記事を俺が要約するって少し変な気分なんやけど)
内心違和感を覚えつつも、普段に加えて自分の記事の新聞の要約作業を行い、販売用に100部作り終える。
(記事作り終了!次は実験系のチェック作業しとくか)
要約新聞の作成を終えた後、俺はジョブ構成をサインように組み替えたり、実験中の画面の確認作業をして時間を潰す。
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「さて、時間だな。実験前のミーティングを始めるから集まってくれ」
ユサタクの言葉を受け、俺達【ユーザータクティクス】と、同盟クランの【MJO農業共同組合】の一同が駆け寄る。
「本日行う【瞑想】レベルアップの実験について改めて説明する」
全員が集まったのを確認したユサタクは、これから行う実験についての説明を開始。まずは横に立っていた見知らぬ青年の紹介を始める。
「こちらは今回の協力者の永年寝太郎くんだ。彼は同盟クラン【農協】のメンバーであり、【待機】【休憩】がLv9、【瞑想】がLv8と休憩スキルではこのゲームNo.1のプレイヤーだ」
「初めまして、永年寝太郎です。今日はソーイチさんと師弟を結び、休憩スキルの熟練度アップの補助を担当する為に参加しました。皆さん、よろしくお願いします」
そう言って素朴そうな青年は頭を下げる。
「こちらこそよろしく!寝太郎くんと師弟組む事で、スキルレベル差による熟練度アップで実験を加速させるって訳やな」
「ああ。それプラス彼の経験値も受け取れるように相互師弟契約を結ぶんだよ」
「なるほどなぁ。同盟とはいえ朝イチから付き合ってくれてありがとう!」
「とんでもない!ソーイチさんにはメチャクチャお世話になってるので、その恩返し出来るならこれくらいへっちゃらです!」
「お世話って全然心当たりないんやけど……」
「それは……」
「ストップ。その話はひとまず置いておいて、まずは期間を1日に設定して、相互に師弟関係を結んでくれ」
「はーい。寝太郎君、後で教えてな」
「は、はい!」
俺はぼやきつつも、寝太郎と今日限りの師弟関係を結び、追加でフレンドの申請もしておく。寝太郎君は驚きと喜びの入り混じった顔になり、ほぼノータイムでフレンド登録完了の通知が返ってきた。
(よし、これで実験中に話できるわ。お世話の内容とか、休憩スキル高すぎ問題とか色々ネタになりそうなん持ってそうやし取材楽しみやな〜)
「では次にスケジュールについてだが……」
無事フレンド関係を結ぶ事ができ、実験中の楽しみが増えた事にニヤニヤしている間にも説明は進む。
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「さて、次は実験中の称号やジョブ・スキルの構成についての発表だ。ソーイチ、もう決まってるよな」
「ああ。既に完璧にセッティング済みや」
俺は事前に準備していたメモを取り出し、ジョブ構成を発表する。
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① ST消費モード(メインJob:晴耕雨読 サブJob:農家)
メインスキル(9/11)耕すLv3/水撒きLv3/種蒔きLv3/収穫Lv3/種化Lv1/剪定Lv1/待機Lv3/瞑想Lv2/休憩Lv3
②MP消費モード(メインJob:司書 サブJob:見習い記者)
メインスキル(8/11)大陸語Lv5/古代語Lv1/エルフ語Lv1/待機Lv4/瞑想Lv2/休憩Lv4/メモLv10/スキャンLv 2
③MP消費モード(サブプラン)(メインJob:司書 サブジョブ:見習い付与魔術師)
メインスキル(5/11)大陸語Lv5/待機Lv4/瞑想Lv2/休憩Lv4/魔力付与 Lv2
①②③共通 称号:町の主 クラン称号:地主連合
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「①の農業専用モードはSTを消費する目的のスキル・ジョブ構成、②③がMP消費用や。称号はジョブを音声登録でササっと変更出来る様に【町の主】に、クラン称号は【地主連合】にして農家系の経験値アップ目的にセットしたわ」
「うん、いい構成だ。ちなみに全てのパターンのスキル枠に余裕を持たせてるのはなんでだ?」
「今回の実験って多分この世界で初やろ?万が一新スキルゲットした時に備えて、すぐ使えるように枠に余裕持たせたんよ」
「なるほど、確かにいい手法だな。じゃあ疑問も解けた事だし、話を進めるぞ」
俺の考えに満足そうに頷いたユサタクは説明を次の段階に進める。
「次は瞑想の効果をあげる装備や魔道具の紹介だ。ソーイチ的には気になってたんじゃないか?」
「確かに。今の時点でも瞑想中に椅子ごと運べるように改造した台座に、目隠しと耳栓とかやっけ?これ以上に何を用意したのか気になるわ」
「ふっふっふ。それは見てのお楽しみだ。と言うわけでゼロ、セキライ持ってきてくれ」
「「了解」」
「あ、これあかん時のやつや……」
テンションが高くなるとウザい芝居口調になるユサタクの悪癖が出た事に、少しの不安を感じる。だが、そんな心情を尻目にカラカラと車輪の音を鳴らしつつ、白い布で覆われた何かが目の前に運ばれてきた。
「さて、ご覧あれ!これが今回の目玉となる秘密兵器の初お目見えだ!」
そう言って勢いよく捲られ現れたのは、禍々しく魔改造された【木漏れ日の安楽椅子】の変わり果てた姿であった。
次回は11月1日(土)午前6時に更新予定です。
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