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女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・34

 孫の居場所が知れた。

 まず最初のタレコミは、男前魔術師・ヘレン。顧問をやっている王立研究所に、見どころのある少女がやってきて、その少女が実は勇者のツレだということが判明。

 少女の話を人づてに聞いて、勇者というのがどういう人物であり、双子を連れていることやらなんやらの事情を確認し、ザーフたちの末の孫だと予想。そもそも、末の孫は魔王退治に出かけていたのだから、勇者というのなら=ザーフたちの末孫だ。

 王城に出入りできる大神官エッセが、念のために王城に出向いて確認。

 もし判別できなかった場合には、ヘレンが姿を転写できる鏡を貸すことになっていたけれども、小さいころの面影があったので、ちゃんと判別できた。

「間違いなく君たちのお孫さんですね」

 通話の鏡で報告され、ザーフは安堵の息をついた。

 とにかく孫の居場所は確認できたのだ。

「ですが、余計なものもくっついてますよ」

「余計なもの?」

 エッセは苦笑いを浮かべている。

「お隣さんが言っていたものっぽいのが、くっついてます」

「……大魔王か……」

 本当に余計なものがくっついている。どうにかできないだろうか。ザーフは魔法の類の知識がないので、対抗策が思いつかない。

「エッセ、追い払えないか?」

「どうでしょうねぇ……暗雲のようなものが双子ちゃんの頭上に漂っているのはなんとなく感じることができますが……アンデッドとはまた違うようですし。神聖魔法が通じれば追い払うこともできますが。お隣さんに聞いてもらえませんか? むやみやたらと追い払ってほかのところに行かれても面倒そうですから」

「……あー、そうだな。聞いておく。でもまず第一に、孫たちは安全だろうか?」

「それは大丈夫そうです。双子ちゃんたちも相手にしていません。相手にされていないので、毎日ふらふら漂っているだけに見えます」


 幼児にすら相手にされず、ふらふらするだけの大魔王。


「……それ、本当に大魔王なのか……?」

「確信はありませんよ? 確認できるのはお隣さんだけなのでは?」

 ザーフは視線を壁に向ける。壁の先には隣家がある。隣の奥さんは、長らく離れていた家の改修やら掃除やらに忙しいようだ。

 旦那もそのうち復活するらしい。今度は魔王ではなく、普通(?)の魔族として蘇生を断行するようだ。

 ザーフの姑や舅、小舅も大概だが、隣の嫁さんも職権乱用の鬼だった。

「あー、まぁ、聞いてみる。またすぐに連絡することになると思うが、よろしく頼む」

「ま、余計なちょっかいをかけられないよう見張っているので、安心してください。ヘレンも目の届く研究院に詰めてくれていますし、一応レコダも王城のすぐそばに詰めてますから」

「……盗賊ギルドの長が……城に?」

 年を重ねて、あのやんちゃ爺むさ少年も、今はギルドの重鎮だ。じじむさい言動と容姿が一致するようになったのはいいが、性格的にも職業的にも安心できる要素は薄い。

「城の物に手を付けはしませんよ。いくらレコダでも」

「……そうだな」

「ヘレンがサーバントを監視につけてますしね」

 ……大神官と大魔術師、盗賊ギルドの長を信用していない。まぁ、レコダだし、と、ザーフは思った。

 さすがに王城の物に手を付けてしょっぴかれるような真似はしないはずだ。多分、きっと、おそらく。


 隣の手伝いに行っていたレオナが戻ってきて、ザーフの話を聞いて胸をなでおろした。

「良かった……あの子、無事なのね? 双子ちゃんたちも」

「ああ。大丈夫。エッセの話だと、大魔王も相手にされてないらしくて、所在なくふらついてるだけだそうだ」

「そう……でも、すぐそばをうろついているのよね? やっぱり心配だわ……」

「そうだな。で、お隣に相談に行こうかと思ってたら、レオナが帰ってきたんだ」

「そうね。お昼を誘ってくるわ。いろいろ話をしたほうが良さそうだもの」

「頼む」


 妻が出ていくのを見送って、ザーフは己に気合を入れた。

 さぁ、これから孫たちのために大仕事が待っている。

 大魔王の手から、孫たちを救い出すのだ。


 カカァッと空が光った。

 轟音が家の外の大地を撃つ。

「……お義母さんとお義父さんだな」

 ザーフとエッセの会話を天上で聞いていたに違いない。

 いつものことなので、慣れたものだ。ザーフはうろたえもせず、出迎えるためにドアに向かった。 


居所発覚。さてどうなる?

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