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女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・30

 孫。

 とうとう祖父になる。

 孫。

 娘が親になる。

 孫。

 孫。


 孫。

「……嬉しいわ。ね、ザーフ? わたしたち、おじいちゃんとおばあちゃんね」

 レオナは可憐に微笑む。これから祖母になる彼女は、娘と年頃の変わらない外見だ。

 ザーフと一緒に歩くと、親子にも見られるだろう。

 が、当人達は一切気にしていない。自分達がしっかりと愛し合っていることを理解しているためである。

「そうだな。うん。いやー、しかし……あんなにちっちゃかった娘が……子供を産むのかー」

 感慨深い。ザーフとレオナの初めての子供。生まれたときは小さくて猿みたいで、簡単に壊れそうでザーフは抱き上げるのが怖かった。慣れるまでしばらくかかったと思い出す。

 あんなに小さかった娘が、子供を産む。母になる。

 頼りないと思っていた。いつまでも護ってやらないとと思っていた。

「大人になったんだなぁ……」

 嬉しいような寂しいような、複雑な想い。

 子供はいつまでも子供ではない。しかし、ザーフとレオナにとってはいつまでも可愛い子供でもある。

「レオナ、初産できっと不安だろうから、ちょくちょく行ってやってくれないか?」

「もちろん、そのつもりよ。わたしも初めてのお産は不安だったもの。ザーフがいてくれて、エクトやお母さまが来てくれて、とても安心したわ」

 幸い、娘は近くに家を構えている。娘婿は酪農をやっていて、牛や羊を飼育していた。たまに、牛乳や羊毛をもらうこともある。

 レオナはこれから娘の様子を見に頻繁にでかけることになるだろう。

 ザーフもこまめに様子を見てやろうと思った。


「孫!?」

 妻と遊びに来た義弟エクトが目を見開いた。

「姉上に孫!?」

 何かショックらしい。

「そうだよ。エクトにもそのうち孫ができるだろ。息子が結婚してそろそろ半年経つし」

「いやうちはまだ……ってそうじゃない。孫ができるのか!?」

「ああ。順調に行けば春先かな」

 娘から聞いた予定日を口にすると、エクトはなにやら口の中で呟いている。

「春……そうか、春か……」

 そして、ザーフににやりと笑う。

「貴様もじいさんか」

「そうとも。おじいちゃんだ。良いだろう?」

 ザーフも少々のイヤミではびくともしなくなった。堂々と返す。

「…………良いな」

 エクトもだいぶ丸くなった。しみじみと言ってくる。

「エクトもすぐさ」

「そ、そうだろうか……僕もいつかおじいちゃんになるのか……まず先に姉上に孫だが……か、可愛いだろうな」

 叔父馬鹿がさらに大叔父馬鹿にもなりそうだ。

 

「ひ孫か!!」

 祖父ゼオ、降臨。最近、主神って結構ヒマなんじゃないかと思い始めたザーフである。度々ザーフたちの家庭を訪れる神様方にも聞いてみたい。天上ってほかに娯楽はないのか、と。

「ええ。順調なら春先に生まれるそうです」

「それはめでたい……! 祝わねば!!」

「生まれてからにしてください。初産で本人はちょっと不安がってますから」

 茶と茶菓子を出すと、義父は遠慮なく手を出した。豆茶を二口ほど飲んで、また話し出す。

「なに、不安がっていると?」

「まぁ、初めてですからね。ちょくちょく様子を見に行くようにはしてますけれど」

「そうか。ではさっそくレンゲを派遣しよう」

 お産の神様の名を久しぶりに聞いた。エクトのところの四人目が生まれるときに会って以来だが、元気になさっているようだ。

「いえ、まだいいでしょう。レンゲ様も忙しいでしょうし」

「む? しかし、遅いということはないだろう? 本人が不安がっているのだし」

「まだいいと思いますよ。おなかもそんなに目立ってませんから」

「ふぅむ……」

 義父と茶を飲む昼下がり。妻ももう少ししたら戻ってくるだろう。そのとき、娘の様子を話してもらえばゼオの気持ちも少々落ち着くだろう。

 義母・エニフィーユもそのうち降りてくるだろうから、お茶を飲みながら娘の話をしようと思う。

だいぶん丸くなった義父と義弟。お茶飲んでくれるようになりました(笑)

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