女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・27
長女が恋人を連れてきてから数日。
息子にも恋人が出来たらしいと知った。
孫の顔を見に天界から下りてきた義母エニフィーユについてきた恋の女神、ミミユがにやにやしながらいきなり言った。。
「ほっほほー、ここんち、家の中が桃色ね♪」
家の中に入るなりそんなことを言い出して、しかもレオナとザーフを見て、さらににやついている。
「よきかなよきかな♪ 桃色大事ね♪」
「いやちょっと、なんのことですか」
「うんうん、恋せよ人間♪ 恋してる人が多いね、ここんち♪ 幸せ桃色♪」
ザーフは眉間にシワを寄せた。何を言っているのだろう、この神様。ちょっと言っていることが理解しにくい。そもそも、何故恋の女神がうちに。いや、確かに娘がこの間恋人を連れてきたけれども、それは別に普通だろう。ミミユがなにをしに来たのか分からず、助けを求めて妻を見た。
困っているザーフに、声をかけたのは義母だった。
「婿殿。孫に恋人ができたらしいのじゃ。そなた、把握しておったか?」
「はぁ……娘の恋人にはこの間会ったばかりですが」
「いやいや、息子のほうにもじゃ」
「え!?」
それは初耳。驚くザーフにミミユがにこにこ。
「桃色大事よ♪」
理解した。多分というか、確実に覗いたのだこの神様。内心で子供たちに同情するザーフだ。若い頃の俺の苦労を、今子供たちがしている。頑張れ子供たち。いろんな意味で諦めも肝心だぞ、と。
「恋人がいるらしいが、どんな人だ」
息子をこっそり手招いて、家の影で訊いたら、息子は硬直した。
「……ななななな、なんのことかな、とーさん!?」
「いや、知ってるから。どんな人なんだ? 紹介しろ」
「なんで知ってんだよ!? つか、付き合いだしたの二日前なのに!?」
心底からの絶叫だった。まさかあちこち(主に空の上)から注目の的だとは気付くまい。
神様と人間の間に生まれたということで、ザーフとレオナの子供たちは興味津々に見守られているのだ。もっとも、子供たちは知らないことでもある。言えないことでもあった。
「隠し事は無駄だといつも言ってるだろ。おばあちゃんやおじいちゃんは凄腕なんだぞ」
「……じーちゃんたちかよぉ……なんで知ってるんだ魔法使い怖い……プライベートだだもれだよ」
憂鬱そうに呟く息子に、ザーフは親指を立てた。
「心配するな、父さんはもっと苦労したから。それに比べりゃまだマシだ」
「……どんだけじーちゃんにイビられたのさ、とーさん……」
フォローになってないフォローをしながら、ザーフは息子の肩を抱いた。
「少なくとも、父さんほど反対はされないだろ。で、どんな子だ? まだあちこちには内緒にしておいてやるから、せめて父さんには話しとけ。何かあったら味方してやるためにもな」
「…………うー」
しぶしぶ、照れくさそうに息子は話し出した。
「あのね、ミミユ。あの子達もそろそろ親離れする時期みたいだから、いろいろ難しい時期でもあるの。見張るような真似は控えて頂戴」
家の中では実りの女神の欠片が、恋の女神の欠片を正座させて説教していた。
「えー、でも、桃色大事よ♪ それに、みんな気にしてるね♪」
「天界、そんなにヒマなの?」
「うん♪」
ぶっちゃけるミミユに、レオナは大きくため息をついた。神々の暇つぶしにされては子供たちが気の毒だ。というか、神と人間の夫婦は彼女とザーフだけではない。
「エクトの家は?」
「あっちはまだまだね♪ やっぱりこっちのほうが楽しいよ♪」
「ウチは娯楽施設じゃないの!」
神様がヒマだと、ロクなことをしないと女神の欠片は思った。
多分、娯楽としか思ってない神様たち(笑)み、見守ってくれてるんだよ!(説得力ない)




