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女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・23

 子供が増えたから、家を増築しようと思った。さすがに手狭になってきたのだ。

 家の建て方なんてよく知らないので、大工さんを頼もうかと思っていたら、姑が派遣してくれた。

 大工と細工の神様、デッタを。


 こんな家ならいいだろ? と見せられた設計図に愕然とするザーフである。広すぎる。どう考えてもどこかの王城サイズ。そんな土地も資金もない。お隣さんに怒られる。

「いえ、あの、宮殿は結構です。ごく普通の一般家屋でいいんです」

「いやぁ、でもエニフィーユ様からは立派な家を建ててくれって頼まれてるんだよ。立派って言ったらほら、人間の建てる神殿とか王宮とかそういうのが立派なんだろ? 人間的に」

「お気持ちはとてもありがたいのですが、分相応というものがありますので」

「なぁに言ってんだ、ディオレナと結婚してもう十年だろ? 充分神の仲間入りだって」

「とととととんでもない!! 俺はただの人間ですって!!」

 とんでもない家になるところだった。少し間取りを増やしただけの家にしてもらうのにかなりの時間を要し、普通の家にしてくれたのはいいが、細かい場所がやたらと細工に凝っている。さすが大工と細工の神。多分、壁にしてくれた彫刻を切り離して売ったら、一財産になる。そんな罰当たりな真似はしないけれども。

「ありがとうございます、お義母さんにもよろしくお伝えください。孫達も喜んでます、と」

 頭を下げるザーフに、デッタは嬉しそうににやにやしている。

「いやー、いいね、こういうの」

「は?」

「俺もちょっと孫とか欲しくなったなー。息子を急かしてみるか……いひひ」

 なにやら意味深な言葉を残して、建築家は帰っていった。


 義弟も相変わらずシスコンだ。最近は下界に欠片が降臨しっぱなし。その理由を、ザーフはよく知っている。

「僕は姉上と甥っ子姪っ子に会いに来ただけだからな」

「お、いらっしゃい。エクト、久しぶりだな。嫁さん元気?」

「元気だ。当然だろう。僕の妻だぞ」

「良かったな、らぶらぶで。たまには一緒に遊びに来いよ」

 嫁さんも子供好きなので、ザーフとレオナの子供を可愛がってくれている。ありがたいことだ。エクトたちにも子供が出来たら、彼らがうちの子供たちを可愛がってくれているように、可愛がろうと思っている。

「ううう、うるさい。気が向いたら連れて来てやっても良いぞ。気が向いたらな! と、ところで姉上はどちらにいらっしゃるのだ」

「ん? 裏にいるよ。娘と洗濯してる」

 この十年で、義弟も大分ザーフに対するアタリが柔らかくなってきている。嫁を貰ったからだろうか。

「子供できたら知らせろよー?」

「うううう、うるさいっ。余計なお世話だ! どうしても知りたいというならできたときには知らせてやっても良いぞ、どうしてもというのならな!」

 ……うん、打ち解けてきたと思う。


ツンデレ?義弟。そしてお義母さま、職権乱用しすぎです(笑)

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