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女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・20

 大騒ぎである。

 ザーフとしては何をして良いのか分からない。とにかく陣痛に苦しむレオナの手を握り、頑張れと励ますだけだ。

 お隣さんと産婆さんを呼びに行っている間に、大きな雷が落ち、義母・エニフィーユがお産の神をつれて降臨していた。娘のためなら職権乱用。義父もそうだが、乱用しすぎなのではなかろうか。

 とはいえ、コレでもう安心というわけにもいかない。お湯を沸かせ、清潔な布を用意して、と、女性陣の要求に右往左往し、何がなんだか分からないうちに嫁の手を握っていた。

 レオナは呻くだけだ。陣痛が軽いときは会話もしてくれるが、今は軽口も叩けないのかザーフの手に爪を立てている。痛い。が、彼女はそれ以上の痛みを味わっているのだ。

「本当なら邪魔だから出て行って欲しいのだけれどぉー」

「まぁそう言わないでおくれ、レンゲ。婿殿は娘の心配をしているだけなのじゃ。それに、レオナも婿殿がいてくれた方が心強かろ」

 お産の神様はザーフを邪魔だと言い切ったが、義母は苦笑いしただけだった。

 

 ちなみに、空ではまた光が乱舞している怪現象。義父、また動揺しているようだ。

 落ち着いてくださいお義父さんと思うヒマも、今のザーフにはない。


「もう少しだで、頑張るだよ、娘さん」

「大丈夫よ、レオナちゃん、もうちょっとイキんでね。そうそう、その調子!」

 産婆さんとお隣さんも励ましてくれている。お隣さんは八人の子持ち。心強い。


 ひっひっふー、ひっひっふー。室内にいる全員が同じ呼吸になる。


 脂汗を流しながら呻くレオナ。その手に爪を立てられ血が流れても手を離さないザーフ。


 魔法の手鏡でこちらの様子を知って、念のために仲間で神官のエッセをつれて瞬間移動してきた魔法使いヘレンが、肩で息をしながらその光景を見て、幸せそうに微笑んだ。

「あれだけ人がいるのなら、手助けは必要なさそうだ。エッセ、お前にも出番はなさそうだぞ」

「私の出番はないにこしたことはないでしょ。レンゲ様もいらしてますし、安心していて良さそうだ。とりあえず、レオナ様のために、いつでも飲める冷たい水でも汲んでおいて……ザーフにはあとで癒しをかけてあげないと。あのままでは絶対に手が腫れる」

「そうだな。では、私はサーバントで料理でも。レオナ様も数日は無理だろう」

「……自分自身ではしないのだね、ヘレン」


 小さい小屋の中は、あたたかい想いでいっぱいであった。

ううう、うーまーれーるー。男にやることはありませんな(笑)

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