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女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・18

 エクトはしばらく帰って来ないだろう。

 これからどうなるかは、彼とリリー次第だ。さすがにそこまで首を突っ込む気は、いくらザーフでもない。

 恋愛は、他人が簡単に首を突っ込んでいいものではないのだ。

「レオナ、体の具合は?」

「大丈夫。元気よ。ヘレンもよくお手伝いしてくれたもの。あ、畑も大丈夫よ。わたし、二日に一度は立ったから」

「ありがとう。じゃあ、まず畑の手入れからかな」

 恵みの女神の欠片が畑に立つと、作物はにょきにょき育つ。肥料いらずでとても便利である。

 ただし、雑草などもにょきにょき育つ。虫はちょっと逃げてくれるけれども。

 手入れはどうしても必要なのだ。身重な妻に必要な栄養価の高い作物を、上手に収穫するためにも。

「少し休んだら? ヒドラと戦ってきたんでしょう?」

「大丈夫だよ。そんなにヤワじゃない」

 巨大な怪物、ヒドラと激戦を繰り広げてきたが、負った傷などは優秀な神官エッセが治してくれており、疲労すら残っていない。そもそも、ザーフは頑丈なのである。

「ヘレンもありがとう。いつもいつもすまん」

「お前が神妙に頭を下げると痒くなるな。気にするな。私は気にしていない。レオナ様の元気な顔を見て、おなかの子の経過を見るのが楽しみなのだ」

 にこやかに言うヘレンは、本当に気にしていないのだろう。レオナの体調なども事細かに記録してくれており、体調に気を配ってくれているのは事実だ。ちょっと、魔法使いらしい研究っぽくも見えるが、どこにも発表できない研究など無意味なのだから、好意のほうが強いのは確かだ。


「どうしても気になるなら、少し野菜を分けてくれ。タマネギが好きだ」

「了解」

 笑いながら、ザーフは作業道具を担いだ。


 畑は、樹海のようになっていた。

「うわ」

 思わず呟くザーフだ。コレは予想以上。さすがに欠片とはいえ女神。おもいきり加護をくれている。

「夕方までで、どこまで手入れできるかな」

 まず、鎌を手に取った。あちこちに伸びているツルや草を切らないと、畑の土すら見えないのだ。

 伸びている枝の先に果物が見えた。収穫もしながら、剪定せんていしていく。

 足元にイチゴがなっている。手のひら大だ。これも収穫しておく。妻はイチゴが好きなのだ。

 タマネギも収穫しなくては。


 懸命に手入れと収穫をしていると、あっというまに夕方になった。畑は端っこが見えてきた。

 あとは明日にしよう。手元が見えなくなってしまう。

 ザーフはカゴを背負った。収穫できた野菜や果物がごっそり入っている。

 季節、気候的に育たないはずのものがあるのは、ご近所には内緒である。

「さーて、帰るか」

 また、いつもの穏やかな日常へ。

ひと段落。でもお話はまだ続く。

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