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女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・15

 ザーフから言われたことに、神官エッセは呆れたため息を洩らし、盗賊レコダは爆笑した。

 仲間たちの反応は予想していたことなので、ザーフも別にあわてない。

「そういうことで、つきあってくれ」

 にやりと笑う彼に、エッセは再びため息をつき、レコダは親指を立てた。


「……姉上、本当にあの男はどこで何をしているのでしょうね。身重の姉上を放っておいて……けしからん! 戻ってきたら不眠症にしてやる」

「エクト、そう怒らないで。ザーフは私を放っておいているわけではないわ。ヘレンに来てもらえるように頼んでくれているもの」

 にこにこしているレオナに、シスコンエクトもそれ以上は強く出られない。子供のようにすねて、それでもレオナの横に座っている。レオナは編み棒を動かしながら、まだ戻らない夫のことを考えている。

 編み物は下手だ。お隣の奥さんに教わったばかりで、編み目もがたがた。ある意味芸術的なシロモノが出来上がりそうである。

「姉上……衣服ならギャレオンに頼めばよいのでは?」

「いいえ。こういうものは自分の手で作り出すのが楽しいの」

 のほほんとした時間が流れる。


「で、どうしてこんなことになっているのだろう。というか、終われるのか、これ」

 膨大な資料をめくりながら、エッセは呻く。紙の束と格闘しているレコダが返答した。

「いまさらじゃろ、エッセ。ザーフをリーダーにした時点で、そういうことはすっぱり諦めておくべきじゃ」

 すかさずザーフも反論する。こいつにだけは言われたくない。

「お前にだけは!! 言われたくないぞ、トラブルメーカーレコダ。お前のせいでしなくていい苦労を山ほどしてるんだからな、エッセとヘレンは」

「そこで自分の名前をあげないあたり、ある意味正直じゃな、ザーフ」

「うるさい。いいからとっとと調べろ」

 頭から煙が出そうな気分で、ザーフも紙をめくっている。

 なんでこんなことをしているのだろう? 魔物相手に剣を振るっているほうが、ずっと気分もラクだ、と、痛感した。

 が、自分がやりたいと思ってしていることだ。きちんと、決着をつける。


旦那、今頑張り中。なにしてるのん?(作者が言う)

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