女神に惚れた人間と、女神が愛した人間と・10
レオナのお腹がぽっこりと膨らみ始めた頃である。夕食を取り終えたあと、外からドアをノックされたので、近所の誰かかと出てみると、そこにいたのは弟神(の欠片)。
ザーフは思わずのけぞった。義弟はむすっとした表情で、
「姉上は」
「え、あ、ああ。中に」
無言で弟神・エクトは中に入っていく。ザーフに挨拶は一つもなしだ。
まぁ、そういう神なので(=シスコン)ザーフはなんとも思わずドアを閉めた。
「まぁ、エクト」
「姉上!」
レオナの笑顔を見た瞬間、エクトの表情もにこやかなものへと変化した。シスコン健在。
ザーフは内心で苦笑しながら、お茶の準備を始めた。義父のように、義弟にも飲んでもらえないかもしれないが。
「姉上、お加減は? 不自由はございませんか?」
「ええ。みなさんとても良くして下さっているから」
「……そうですか」
微妙な声音の返事だ。多分、レオナに天界に戻って欲しいのだろう。
残念ながらレオナは神の欠片で、人間の娘が出産で実家に帰るように、気安く戻れるものでもない。
父神と母神は気安く行き来しているようだが。
「元気な子を産んでくださいね。ああ、ぼくもこれで叔父上になるのか……」
「ふふふ。そうね」
「あ、姉上。これ、お祝いです」
「まぁ、エクト。こんなにたくさんお祝いを……嬉しいけれど、こんなにたくさんはしまっておけないわ」
義弟よ。お前もか。
会話を聞きながら、ザーフは苦く笑う。
「いえ、ぼくからだけではないのです。ほら、姉上の親友のレイリアからも祝いを預かっておりますし、これは――」
どうやら神々からの祝いの品を運んできたようだ。
困ったな、と、ザーフは思う。
片付けられるだろうか……。
お祝い攻勢! 頑張れ若夫婦(笑)




