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我が家と異世界がつながり、獣耳幼女たちのお世話をすることになった件 【書籍化決定!】  作者: 木ノ花 
第二章

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第72話 廃聖堂の修繕開始

 反省ができたお利口さんたちにはご褒美を、ということで。

 揃って居間に移動して、サリアさんご所望の干し柿をみんなで食べる。


 うちの獣耳幼女たちの大好物のひとつなので、この前ネットショップで新たに二キロ入りの商品を取り寄せてある。レビューが高評価のやつを厳選した。


「あら、この干した果実も美味しいですね。食べる手が止まらなくなってしまいそうです」


 コタツに入って干し柿をもぐもぐとやり、緑茶を啜るフィーナさん。

 とても満足そうだ……どことなく『おばあちゃん』っぽく見えたのは秘密である。エルフのお姫様なのに、もこもこの袢纏がよく似合いそう。後で注文しておこう。


 サリアさんや獣耳幼女たちも、ニッコニコで干し柿を平らげている……いや、ちょっと食べすぎかな。ルルなんて両手に持ってぱくついている。この勢いじゃあ二キロなんてすぐにペロリだ。


 いったん塗り絵やアニメで気を引き、食べ物から意識を逸らす。

 すぐに獣耳幼女たちが俺のそばにやってきたので、くっついてのんびりと過ごした。


 しばらく経つと、今度はお昼ご飯の時間がやってくる。台所へ移動し、俺は手際よく料理を作っていく。


 今日のメニューはオムライス。エマたちがお手伝いしてくれたおかげで、とてもいい感じに仕上がった。ケチャップで『すみっこ生活』のキャラの顔を描けば大歓声が響く。ちょっと失敗したけど喜んでくれて何よりです。


「あらあら。珍しい食べ物ですが、これも素晴らしい味わいですね。色合いも素敵ですし、このお顔も可愛らしいです」


 居間のコタツへ戻り、みんなで『いただきます』と手を合わせる。

 早速オムライスをひと口頬張ったフィーナさんが、感嘆の声を漏らす。ニッコリと微笑み、またしても満足そう。


「うみゃうみゃ~」


 先ほどまでぐずり気味だったルルも、スプーンを握り締めてすっかり上機嫌。頬にまでケチャップをつけて大変なことになっていたので、こまめに拭ってやる。


 エマとリリも、『おいしい!』と満面の笑みで食べ進めている。やはりケチャップをこぼしまくって……ああ、サリアさんとフィーナさんの口元も真っ赤だ。


 俺は「おかわりもあるからね」と声をかけつつ、みんなの顔を拭って回った。ついでに、飲み物を注いでいく。

 

 それにしても、フィーナさんも意外とよく食べるな。作り甲斐があるってものだが、我が家のエンゲル係数が再び急上昇の気配を漂わせている。

 

 食後は、またお茶を飲みつつまったり。いつもなら、獣耳幼女たちがうつらうつらしてきたところでお昼寝タイムとなる流れだ。が、今日は異世界へ向かう予定となっている。


 少し時間を置いたらちょうど擬人薬の効果も切れたので、お着替えを始める。

 本格的に寒くなってきたから、うんと温かい格好をしようね。いくつかの組み合わせを並べ、それぞれ好きなものを選んでもらう。


 エマたちはいまだに、新しい服を見るたび飛び跳ねて喜んでくれる。そろそろショッピングモールや『東松屋』へ買い物に連れていってあげたい。きっと大興奮だろうな。


「サクタロー殿、見てくれ! なかなか似合っているだろ!」


「サリア、これで本当にいいのですか? サクタローさん、私はきちんと着られています?」


 洗面所で着替えていたサリアさんとフィーナさんが戻ってくる。

 二人は、色違いのおしゃれスウェット姿だ。揃ってずば抜けた美人さんなだけあり、そのままファッション雑誌の表紙を飾ってしまえそうな見栄えである。


「どうだ、フィーナ。素晴らしい着心地だろ! これを一度知ってしまえば、もうあんな服なんて着られまい!」


「あんな服……我が国でも有数のお針子が仕立てた衣服だったのですけど?」


 サリアさんはグレーアッシュのモフモフ尻尾を振りながら、おしゃれスウェットを自慢している。もうすっかり日本の衣服がお気に入りだね。


 異世界をふらつくなら、現地で流通している衣服を着たほうが無難なのだろうけど、本人が頑として頷かない。あんなのボロ布と変わらん、と断固拒否である。


 意外と言ったら失礼かもだが、おしゃれ好きなのかも。やはり近々ショッピングモールへいくべきか。

 

 フィーナさんもまんざらではない様子。白銀の長い髪を手で抑えながら全身を見回し、「軽いのに信じられないほど温かいですね」とアメジストのような美しい紫の瞳を一層輝かせている。

 

 異世界の服を見ていると、保温性を考慮すると皮革を多用する傾向にあるんだよなあ……着心地を考えたら、俺もちょっとご遠慮願いたい。


「じゃあ行こうか。みんな忘れ物はないかな?」


「はい! ぜんぶもった!」


「ん、なわとびしたい!」


「リリはおトイレいきたい!」


 水筒やブランケットなどをトートバッグに詰めたら準備完了。そのまま地下通路と通じる納戸へ移動し、獣耳幼女たちとお出かけ前のチェックを行う。サリアさんとフィーナさんは、安全確認のため先に出発してもらった。


 さて、エマとルルは問題ないみたいだね。ただ一人、リリは……さっき俺がトイレ行くか聞いたら、大丈夫って言い張っていたでしょうに。とりあえずささっと済ませ、気を取り直して異世界へ向かう。 


「おお、待っておった」


「材料は運び込んであるから、いつでも始められるぞ」


 廃聖堂のフロアへ足を踏み入れると、ガンドールさんとグレンディルさん――ドワーフ兄弟が揃って出迎えてくれた。


 俺は「お待たせしました」と挨拶を返しながら、順番にヒゲモジャゴリマッチョの二人と握手を交わす。手の平もガッチガチだ。


 実は、『今日から廃聖堂の修繕に手を付ける』と事前に知らされていた。そこで、作業の様子を観察させてもらうことにした。なにせ魔法を使った修繕だ。興味深いにも程がある。


 そんなわけで、いったん設置済みのガーデンチェアセットに荷物を置く。そこで待機していたサリアさんとも合流だ。


 フィーナさんも席についているが、数人の侍女さんたちに囲まれ何やらお話し中。近くに立っていたエルフの護衛騎士のカーティスさんとも挨拶を交わすが、なぜか祈るような仕草をされて首を傾げてしまった。


「ほれ、作業を始めるぞい。ついてこい、サクタロー殿よ」


 ガンドールさんの後を追い、獣耳幼女たちとサリアさんを連れて廃聖堂の外へ。見れば、出入口の付近に木箱を山盛り積んだ荷車が止まっていた。

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