第四十話 未来には幸せそうな2人しか見えません。旦那様?
✳︎ ✳︎ ✳︎
「え?」
気がつくと、さっき夢の中で見たように金色の瞳に私が映っていた。
「キース?」
「……ふ。ルティアまだ、夢を見ているの?」
さらりと、私の髪を手で梳いて、金色の瞳が細められる。
大好きな声。大好きな手。でも、キースじゃない。その瞳の色だけが、まったく同じで。
それから、その笑顔も。私を気遣うようなその言葉も。
「――――勘違いしないで。俺は一つも後悔なんてしていないから」
「――――旦那様」
「でも、今だけは名前で呼んで……。ルティアと確かに一緒にいることを実感できるように。
「――――リーフェン」
たしかに、あの時、完全に魔眼の力はキースのものになっていた。
ただ、もう二人には時間が残されていなかっただけで。
「あの時、魔眼の力で私たちは……」
「そうかもしれないね。キースは、もう一度一緒にいたいと強く願ったけど、アンナは違ったの」
「――――アンナも、同じ願いだったよ」
「そう……叶ったみたいだね。ほら、やっぱりルティアの美しい瞳は魔眼なんかじゃないって思っていた」
ところで、ルティアとキースは最後に口づけを交わしていた。
それは、たった一度だけの幼馴染からの卒業のための口づけ。
「ね……。私たちが確かに一緒にいることを実感するなら言葉より……」
私たちは、もう一度口づけをする。
これは、魔眼の力の受け渡しでも、魔力を返すための儀式でもないただのキス。
でも、きっとこれからも何度も繰り返されるのだ。
「離れないで……守ってあげるから」
「それは、俺の台詞だって言っている」
私たちは、いつでも二人、見つめ合って笑い合う。
いつか訪れる未来を想像してみても、私とリーフェン公爵はやっぱり幸せそうに笑っていた。
これで二人の物語は完結です。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
誤字報告、とても助かりました。ありがとうございました。
『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。




