7-14 七話目終わり。
突然部屋に鳴り響いた大声……私を含め、全員が声がした方向を振り向くと、そこには!!
「その責任の全て……この私が請け負いましょう!!!」
「め……冥王様!!?」
そう! 部屋の中心……魔法で作り出したのだろう。光の粒が舞い散るそこには、美しくポーズを決めた冥王様の姿があった。
「な……何じゃ二代目? 〝全ての責任を負う〟、じゃと? いったいどういうつもりじゃ?」
霊王様が聞くと、むふふ❤ と不気味に笑いながら冥王様は答えた。
「どういうつもりも何も、言葉のとおりでございますよ、霊王様! エル殿をお仕置きなさるというのであれば、それを代わりに私が受けましょう! ということです。――しかし……」
と、冥王様はなぜか……今回の騒動の〝二大元凶〟でもある、鍋を持つリムルさんの下へと歩み寄り、静かに呟いた。
「……しかし、〝お仕置き〟という言葉は、いかに精霊界をお治めになる霊王様と言えど、あまりにもリムルさんに〝失礼〟に当たるとは思いませんか?」
「何? どういう――っ!?」
言いかけて、はっ! と霊王様は〝そのこと〟に気がつき、口に手を当てた。それを見て、冥王様は、ふっ! と再び笑って続けた。
「……そうです。結果がどうあれ、リムルさんは皆さんに〝喜んでもらう〟ために、自分なりに工夫を、努力をしたのですよ? ……そうですよね、リムルさん?」
「え……う、うん……まぁ、結果的には失敗しちゃったみたいだけど……」
しゅん、とリムルさんは小さくなってしまう。
しかし、ガシリ!! と、冥王様はそんなリムルさんの肩を掴み、言い放った。
「いいえ!! 失敗なんかではありませんよ、リムルさん!! あなたは〝正しいこと〟をした! それは、大いに〝誇って〟もよいことですし、そして何より、誰も〝失敗〟などとは言ってはいませんよ! ――そのジュース……私がいただきましょう!!!!!」
「「「「「!!!??」」」」」
「正気か!!? まだ鍋には〝五人前〟は残っておるのじゃぞ?」
叫ぶ霊王様に、冥王様はすでにリムルさんから鍋を受け取った状態で答えた。
「ええ。私は十二分に正気ですよ。……そもそも、女性が一生懸命〝愛〟を込めて作った料理を喰らうことが……いえ、飲むことができないようであれば、それはもはや〝漢〟にありません……〝五人前〟……〝五倍の愛〟! この〝漢〟・二代目冥王・デス! 喜んでいただこうではありませんか!!!」
ざ、ざ、ざ……冥王様は、受け取った鍋を手に、再び部屋の中央へと移動した。
その姿に私は思わず呟く。
「めい……おう、さま……ッッ!!」
「フフフ、人類の偉大さは〝恐怖に耐える誇り高き姿にある〟……人間界に存在する、とある国の史家の言葉です」
「……ッッッ!!!」
「フフフ、さらばです。私の愛する全ての女性たちよ!!!」
ぐいっっ!! ――言い終わるとほぼ同時だった。冥王様は鍋を傾け、それを一気に体内へと流し込んだ!
そして!!
「――ふぅ! とても〝美味しかった〟ですよ。リムごはああぁっっあああぁッッッ!!!!!」
「冥王様ァァァーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!」
……こうして、リムルさんが引き起こした二度目の事件は、冥王様の偉大な〝意思〟により、幕を閉じたのだった…………。
「……いや、まぁ……二代目が倒れようが、何を言おうが、妾はお前に仕置きをするがの?」
「――え゛!!?」
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#7,真に恐ろしきは〝日常〟の中に。 終わり。




