7-13
「「………………………………」」
……。
……。
……。
「「…………は???」」
お菓子をいっぱい入れたら、色が……〝変わった〟ぁっっ!?
――ということは、まさか!!?
聞きたくはなかった! しかし、確かな〝確信〟を得てしまった私は、すぐにリムルさんに確認を取った。
「ま……まさか……これを作ったのは、リムル……さん!!?」
「うん? そうだよ?」
けろり、とした表情で、リムルさんは答えた。
「あのね? あたしみんなより早くゴハンを食べ終わったでしょ? それで先に部屋に戻ってたんだけど……我慢できなかったから、ちょっとだけジュースを味見しちゃったの。そしたら〝何か〟が足りなくて……それで、〝思い出した〟んだ!」
「お……〝思い出した〟? 何を……じゃ???」
霊王様が聞くと、リムルさんは、にっこり、満面の笑顔で答えた。
「〝トウガラシ〟!」
と……〝トウガラシ〟!!?
何でまたそんなものを!? 思うが早いか、リムルさんは笑顔のまま続けた。
「えっとね? 食堂のおばちゃんに聞いたんだけど、ほら、あの甘くておいしい、チョコレートとか言うお菓子あるでしょ? あれには実は、〝トウガラシ〟が入ってるんだって! だからあたし、同じように甘いトウのジュースにそれを入れたら、絶対おいしくなるんじゃないかと思って……お菓子屋さんで買ってきた、〝トウガラシのお菓子〟を入れてみたの!」
〝トウガラシのお菓子〟……ああっ!!?
記憶を辿り、〝ソレ〟を思い出した私は、瞬間大声を上げていた。
「――思い出しました!! 〝冥界行きトウガラシ〟ですね!? あの、一粒で冥界に旅立ってしまうと言われるほど〝辛い〟お菓子ッッ!!」
「そう、それ! ……って、え? そんなに辛いの? あたし、〝一箱全部〟入れちゃったんだけど……」
ひとは……っっ!!? えっ!? あれって、たたた! たし、か! 一箱〝三十個〟入りだから、もしかなんてしなくても、さ……〝三十回冥界行き〟ッッッ!!!!!???
そりゃあ誰だって悶絶しますよ!! ――だらだらだらだらだらだら、と……自分でトウガラシを食べてしまったわけでもないのに、私の身体からは汗が噴き出して止まらない。
いったい、この事態にどうやって収拾をつけ……た…………はっ!!!!!
――瞬間、だった。
事態の全容が分かり、どうにかしてそれに収拾をつけようと考えていた、その時……私の身体を、
霊王様の、〝静かな殺気〟が貫いた…………。
「……おい、エルよ…………?」
びっくぅぅっっ!!!??
……もはや、〝反射〟である。
幼い頃に刻み込まれたその〝記憶〟により、私の身体は跳ね上がってしまった……。
ギギギギギ、と……私は動き辛くなった首をなんとか動かし、霊王様の方を向くと……そこには、〝限りなく優しそうに微笑む〟、霊王様の姿が……ッッッ!!!??
ニコ❤ 微笑みながら、霊王様は続けた。
「……お前、分かっておろうな? 妾がお前の部屋に、その子らを共に住まわせておるのは、決して、〝仲よく〟させるためだけではないのだぞ? ――お前に生活の〝監督〟をさせるためじゃ……」
すく……呟くと同時に、魔王様にかけていた回復魔法を中断し、霊王様は、ゆっくりと……テーブルの形に沿うように私の方に向かって歩いてくる。
カツン……カツン……と、床を突く杖の音が、一音ごとに私の身体を震わせる。私はその恐怖に耐え切れず、思わず俯き、目を閉じてしまう……。
だけど、
カツン……っ!
無慈悲にも、〝最後の〟杖の音が……私の目の前で止まった…………。
――そして、
「……面を上げよ」
霊王様の〝ご命令〟……私は他にどうすることもできず、目を開け、ゆっくりと顔を上げると……先ほどとは一転。〝怒り〟に満ち満ちた、霊王様の――
「――ひっ! きゃあああっっ!!!」
刹那、だった。私はまるで少女のような叫び声を上げ、後方へと跳ね飛び、本日二度目の尻もちをついてしまった。
しかし、霊王様はそんなこと、微塵も気にはしていなかった。そのまま、まさに〝落雷〟がごとく勢いで私を怒鳴りつけた。
「この愚か者があああぁぁっっっ!!! 監督不行き届きだけならまだしも、仮にも〝王〟の下へ確認もせず物を届けるとはどういう了見じゃ!! 後で妾が直々に〝仕置き〟をしてくれるから、〝尻を出して〟覚悟しておれぃ!!!!!」
「いやぁあああああぁぁ!!!!! ごめんなさぁあああいいぃぃっっ!!!!!」
……こうして、リムルさんが引き起こした二度目の事件は、私の責任ということで幕――
「――あいやお待ちくだされ、霊王様!!!!!」
「「「「「!!!!!?????」」」」」




