7-12
「――うごはああああぁぁああっっッッッ!!!?????」
「ま、魔王!? ――どうしたのじゃ! しっかりするのじゃ!!」
――突然の奇声と共に床に倒れ、胸の辺りを苦しそうにかきむしり、もがく魔王様……その姿を見て、霊王様は慌てて駆け寄った。
しかし、さらにその反対側で、神王様が――
「ぐぼあぁっっ!!? ――な、何だ!? 〝灼ける〟!!? 身体が! 俺の身体が、〝内側〟から!! うおあああああああぁぁあああっっっ!!!!!」
「な、なんじゃこの〝症状〟は!? 身体が〝内側から灼ける〟じゃと!? いったい何が起こっているのじゃ!!? ――お、おいエル!! お前、いったい〝何をした〟!!!???」
悠久の時を生きる霊王様にも、まるで見当もつかないこの〝症状〟……〝災厄〟。
それを〝王〟たちの下へ〝招き入れて〟しまったことに今さらながら気がついた私は、次の瞬間……思わず、床に尻もちをついてしまった。
「ご……ごめん……なさい……ごめんなさい!! わ、わた……し……!!!!!」
謝って済むような問題なわけがない。きっと……否! 間違いなくこれは、私たちの存在を邪魔に思った者たちによる〝テロ行為〟だ!
当初の狙いは私たち〝予言の子〟……突然予定が入ったために、その毒牙は私たちからは逸れる結果となってしまったけれど、代わりに〝王〟が……!!
ああぁッッ!!! 私は何てことを……!!!!!
私は、心の中で叫んだ。
なぜ、私は何の確認をすることもなく〝王〟の下へこんな〝毒物〟を……!! 私がちゃんと確認さえしていれば、こんなことには……!!!
「――エル!! 頭を抱えている場合ではないぞ! 早く治療をせんか!!」
「――はっ!?」
霊王様の声により、我に返った私はすぐに気がついた。
――そう。霊王様のおっしゃるとおり、いつまでも頭を抱えている場合ではないのだ!
〝宝具同魂の儀〟により、〝王〟たちの魂は今〝宝具〟と共にあるため、〝王〟は死ぬことはない。……しかし、それでも肉体は肉体。破壊されればされるほど、その回復には時間を要するし、ましてや見たこともない〝毒〟の症状など……その回復には相当の時間を費やさなければならなくなってしまう。
そうなってしまえば……〝王〟が動けぬ間に〝暗殺者〟が……いや! そんな生易しいものではない! 〝世界そのもの〟が、〝王〟を危機に陥れたとして私たちを〝正義〟の名の下に〝断罪〟することだろう。
まずい!!! もはやこれは私だけの問題ではない!! ――そう思った私は、魔王様の治療を続ける霊王様の反対側……神王様の下へ急ぎ駆け寄った。そしてすぐに治癒魔法を唱える。
「――し、しっかりしてください、神王様! ……ひっく、申しわけありません……私が、私がちゃんとしていれば……!!!」
「泣いている場合でもないぞ!!」
叫んだ霊王様は、続けて言い放った。
「お前もすでに理解したとは思うが、これはお前らを狙った〝テロ行為〟じゃ! 恐らくはこの誓約書を書かせようと、ごちゃごちゃ、ずっと言い続けておった者たちの配下によるしわざじゃろう! ――今の妾たちにできることは、できる限り治療を続け、一刻も早くこやつらを動ける状態にまで回復させることじゃ! 絶対に気を抜くな!!」
「は……はいっ!!!」
くっ!! 私はより一層、治療魔法を発動させていた手に〝マナ〟を集中させた。疾病など、体内で起きたことに対する治療の際に放たれる、青色の光が、神王様の身体を包み込む。
せめて、何の〝毒〟が使われたのかさえ分かれば……!!
そう、祈るように思った――その時だった。
「……うわ! 何これ!? 最初は甘いのに、お腹の中で急に辛くなる!!」
「「!!?」」
「リムルさん!!?」――見れば、そこには鍋に指をつっこみ、〝味見〟をするリムルさんの姿があった。
「な……何をしているんですか、リムルさん!? それは〝毒〟ですよ!? そんな物を味見なんかしたら……!!」
「〝毒〟? これが???」
「そうです! 〝毒〟です! リムルさんだって見ていたでしょう!? 神王さまたちが倒れるのを! それに、最初はきれいなピンク色だったのに、そんな〝真っ赤〟な物に変わっているんですよ!? それだけでも変――」
「え? ……ああ、色? それならね?」
――お菓子いっぱい入れたら、変わったよ?




