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 ――神王・ウォーダン様の神殿。正門前広場。

「やったねリムちゃん! ボクたちといっしょに外に出ていいって!」

「これで好きなお菓子を選べるね! よかったね、リムちゃん!」


「ぜんっぜん! よくない!!! これじゃあ〝罪人〟に戻った気分だよ!!」


 小さな池ほどもある大きな噴水が虹を作り、年中美しい白い花を咲かせ続ける木々が立ち並ぶその場所。

 笑顔の二人に対し、半分以上泣いてしまっているリムルさんの姿……それは、いつものあの隠すところだけしか隠されていない、過激な服装や、両手の黒い手袋はそのままではあったけれど、その両手両足には、白く光る、〝栄光の剣の枷〟がはめられていたのだ。

 ――さて、もうお分かりだろう……そう。これが、私の〝考え〟である。

 いつ何時、どういう理由で〝獣化〟するのか? 今のところ正確な情報はなし。……というのが問題なのであれば、最初から私の〝栄光の剣〟で枷を作り、手足の自由を奪ってしまえば良いのである(※ちなみに、正確には枷自体は光魔法であり、大きさしか変化させることのできない〝栄光の剣〟は、小さく変化させ、外から枷を貫通させてリムルの手足を固定している)。そうすれば、譬えリムルさんが何の脈絡もなく突然〝獣化〟してしまったとしても動くことはできないし、逆に人の形のままであれば、翼があるリムルさんは移動にも困らない……と、そういうわけだ。

 ……まぁ、もっとも、リムルさんにとっては手足が使えないというのは非常に不便で辛いことであるし、本来であれば、〝全身とマナ〟。全てを束縛してしまう〝栄光の剣〟の〝力〟を、リムルさんの手足にのみに制御、抑制している私自身も、実はかなり辛い。

 しかし、現状こうでもしない限りリムルさんの外出許可が起きなかったのも事実だ。とは、当初私はリムルさんの〝腕にのみ〟枷を付ける予定だったのだ。――それなのに、


「逃げられたらどうするんだ!」とか、

「身体全体を拘束した方が良いのではないか?」だとか、

 挙句の果てには、「いいや! そもそも〝牢〟に戻した方が良いのではないか!?」


 ……と、もはや何の許可をもらいに行ったのか分かったものではない。私は上級兵であるその人たちを納得……いや、〝安心〟させるため、あーだこーだ、と何度も説明を続け、その結果がこの、〝翼による移動しかできない状態にする〟ということだったのだけれど……私はそんな彼らの言葉の端々から、ある〝感情〟を敏感に感じ取ってしまっていた。


 ――〝恐怖〟。


 そう。どういう〝力〟を持っているのか? それが正確に分かっていない状態にある今のリムルさんは、彼らにとってはただの〝災厄の象徴〟……私たちの世界に破壊と恐怖を産み落とし続ける〝秘王〟……それと〝大差はなかった〟のである。

 ……あんなに優しくて良い子なのに、まったく、ひどい話だ。――そう、私も心の底から思う。けれど、事実リムルさんの〝力〟は、〝希望〟であると同時に、〝脅威〟でもあるのだ。それが分かっている以上、もはや、それこそ譬え〝王〟たちであってさえも、誰にも彼らの言葉を責めることはできないのである。

 ……私も、昔は――

「――さん! エルさんってば!」

 ――はっ!?

 呼ばれていたことに気づき、私は慌てて応えた。

「あ、は、はい! 何ですか?」

「何ですか? じゃないよ~! ボク、早くお菓子買いに行きたいんだけど~?」

 ああっ!! そもそもの目的を思い出した私は、ごめんなさい! と一言謝ってから続けた。

「そうでしたね! では、遅くならないうちに早く行きましょう!」

 お~! 元気に答えたシーダさんに私は思わず笑顔を作りながら、私は噴水を外側にあるレンガの道を進み、街へと出発した。






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