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――その時だった。ファナたちが、声を上げた。
「聞こえてるんでしょ、リムちゃん! お願い! そんなやつなんかに負けないで!! リムちゃんがそいつを止めてくれないと……このままじゃみんなが!!」
「リムちゃんは悪い子なんかじゃないよ!! ボクたちをいっつも助けてくれたじゃない!! 落とし穴に落ちた時だって! 真っ暗な部屋の中だって! ボクたちを守るために必死に行動してくれたじゃない!! だから、そんなやつに負けないで! がんばって、リムちゃん!!!」
『……ファナ……シーダ…………?』
「むっ! 〝マナ〟が急に弱まって……なるほどな。どうやらこいつらは、お前のことを唯一〝認めて〟くれる〝親友〟ってやつらしいな? ――カァー! いいねぇ! おれっちにもそんなのが一人くらいいればなぁ~! ……つーわけで、ちょうどいい」
ギロン! 突然、ハイジャの視線はファナたちに向けられた。
『!? な……何をする、つもりなの……!?』
「あ~? 何をするかって?」
決まってんだろ。呟いてから、ハイジャは言い放った。
「こいつらから先に〝殺す〟んだよ! そうすりゃ友を失った〝絶望〟で、お前の〝マナ〟はまたさらにハネ上がる! ――〝鳳仙花〟ってのはどうも、お前の〝マナ〟の総量に比例して効果範囲が伸びるらしいからな! これでちょこまか逃げるムカつくこいつらも、一掃できるってもんよ!」
「「『!!?』」」
「させるか!!」
おっと! ――ハイジャは新しい武器を手に、再び斬りかかってくる神王の方に〝鳳仙花〟を伸ばし、それを牽制した。当然、他の〝王〟たちや、エルさんの方にもそれは伸びる。
「!? これでは近づけません――ファナさん! シーダさん! 逃げてください!!」
「だめっっ!!」
エルさんの声に、ファナは大声で叫んだ。
「私はリムちゃんのことを〝信じて〟る!! だから、私は〝逃げない〟」
「ふぁ、ファナさん!!?」
ありがてぇ! ハイジャは嬉しそうに笑った。
「〝鳳仙花〟ってのは近距離なら使う〝マナ〟も少なくて便利なんだけどよ~? 身体から離れれば離れるだけ、使う量も増えていくんだ。……床にもこんだけ張りめぐらせてるんだ。ぶっちゃけ、こんな牽制はそう長くは持たねぇと思ってたところだから、助かるぜ♪」
「……くっっ!! ――おい! ファナ! シーダ! 何をしておる! 早くこっちへ戻ってくるのじゃ!! 今のそやつはリムルなどではない! 〝秘王〟の〝分身〟なのじゃぞ!?」
「戻りません! ――シーダ! わかってるね!? リムちゃんを〝信じて〟、絶対に動いちゃダメだよ!!」
「うん!!」
ぎゅっ!! 二人の繋がれた手には、より一層の力が込められたのがわかった。
しかし、ハイジャは……!!
「おう。信じて動かねぇなら好きにしてくれ。――そんじゃ、〝死ね〟!!!」
『――!! させるかああああぁぁっっ!!!!!』
ビタッ!! 「――何!?」
振り上げられた腕……それは辛うじてファナたちに振り下ろされる直前にあたしの〝意思〟で食い止めることができた。
――だけど、あくまでも〝辛うじて〟だ。ほんの少しでも気を抜けば、たちどころにその主導権はハイジャに奪い返されてしまうことだろう。
『ぐ……うううぅぅっっ!!!!! ふぁ、ファナ……シーダ……今の内に、に、逃げ……!!』
「――リムちゃん!! そうだよ! がんばって!!」
『!!?』
しまった!! ――そう、今のあたしの声はファナたちには聞こえないのだ! つまり、腕を止めたこの動きだけを見れば、ファナたちはあたしが意識を取り戻したと思って……!!!
『――っダメッッ!! お願い、ファナ! シーダ! あたし……もう〝限界〟なの!! この腕を止めるだけで、もう……ッッ!!!』
「おー、がんばるねぇ?」
くくく♪ ハイジャはあたしが抑えて動かせないでいる腕とは反対の、左腕を、ぐるぐる、と回し、今度はそちらの腕を大きく振りかぶった。
「〝契約〟魔法の束縛も振り切って、自分の意思で身体を動かしたのには正直驚いたが……どうやら本当に、止められんのは右腕だけで限界らしいな……じゃあ、改めて!!」
『!? や、やめ……ファナ!! シーダ!! お願い!! あたしの声に気づいて!!』
「リムちゃん……? が、がんばって! 負けないで!!」
だ……ダメだ!! やっぱり聞こえてない!! このままじゃ……!!!
――次の瞬間だった。
「あばよ、〝親友〟ちゃんたち……!!」
「え……リムちゃ――」
「――お姉ちゃん!!!!!」




