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 ……え?

 困惑するあたしに、ハイジャはさらに続ける。

「……今から〝百年〟も昔のことだ。当時、お前は村人からこの〝鳳仙花〟という〝力〟を持っていたせいで、〝化け物〟だと虐げられていたんだ」

「……き、聞くな、リムル!! お前は――」

 黙れ。……ハイジャは、霊王さまを強く睨みつけて話した。

「このことを最初から〝知って〟いたくせに……いや、〝知って〟いて一度は〝大罪人〟として牢に入れたくせに、いざ〝記憶がない〟と分かれば、今度はそれを隠して〝秘王〟様を倒すための研究に利用する……やれやれ、散々おれっちたちを悪者扱いしてるみたいだけどよ? これじゃあお前らも大して変わんねーんじゃねーのか?」

「な……何をバカな! 妾たちは、ただ……!!」

「――どういうこと?」

 リムル!? ……霊王さまはあたしの声に反応した。――どうやら、ハイジャが首から上の部分だけあたしに返したらしい。身体や、床の〝鳳仙花〟は変わらず、維持したままだった。

 ……だけど、今のあたしにはそんなことを気にしている余裕はなかった。ただ、ハイジャの言ったことがいったい何のことなのか? それを知りたかった。

 あたしはすがるように、霊王さまに聞いた。

「霊王さま……どういうこと? あたし……え? だって、魔界のゲートが壊れたから、お母さんに会いに行けないだけなんじゃ……?」

「そ……それ、は…………」

 ぎゃはははは! ――ハイジャがあたしの中で笑った。

『ゲートが壊れるぅ? そんなこと〝あるわけねー〟だろうが!! ゲートは〝宝具〟によって造られてんだぜ? その強度はお前らが今立っているこの世界と〝同じ〟だ! ゲートが壊れるってこたぁ、〝世界が滅ぶ〟のと同じことなんだよ!!』

「ゲートは……〝世界と同じ強度〟……?」

「なっ……!?」

 しまった! ――冷静さなど微塵もない、今のあたしにだってわかった。霊王さまはあたしの呟いた言葉に反応してしまい、顔を背けたのだ。

 ――それを見た、瞬間だった。

 あたしの中で、何かが〝壊れた〟。

「――ど、どういうことなの、霊王さま!! あたし……お母さんは!? お母さんは〝生きて〟るんでしょ!? だって、あたし……!!!」

『――いいぜ、〝思い出させて〟やろうじゃねーか。……ほれ』

「!?」

 何……これっっ!??

 ――突然、あたしの目の前に現れたのは、〝あたしが暮らしていた村〟だった。

 おそらく、ハイジャがあたしの記憶を蘇らせ、〝映像〟としてそれをあたしの瞳に映し出しているのだろう。――今のあたしにはそんなことを考えている余裕はなかったけれど、そこから現れたのはなんと、あたしの〝お母さん〟の姿だった。

 映像は、普段のあたしたちの様子……肺に持病を持つお母さんが、ゴホゴホ、と苦しそうに咳こみながら畑を耕している隣で、あたしが種や水を撒く手伝いをしているところだった。

「これは……」

 呟きつつ、あたしはその映像を瞬きをすることも忘れ、一心に見つめていると、次の瞬間だった。

 ドサッ――という、何かが倒れる音。

 撒いた種に土を被せていたあたしもその音に気がつき、すぐに音のした方向を振り向くと、そこには――

『――お母さん!!? どうしたの、お母さん!! しっかりして!!』

「……あ……ああ……!!」

 ……〝思い出した〟。そうだ、あの日……お母さんが倒れて、それで……!!

 ――ああぁ!!!!!


「やめてええぇぇぇッッッ!!!!!」


 その時だった。あたしは、叫んでいた。

「〝思い出した〟の!! あたし、〝そんなつもり〟じゃなかったの!! ただ…ただぁッッ!!!」


『――おい! あれを見ろ!! あの〝化け物〟……遂に自分の母親を〝殺した〟ぞ!!』


「『……!!?』」

 違う!! ――あたしは、映像の中のあたしと同じように、叫んだ。

「『あたしは何もしてない!! お母さんには持病があって……っっ!!』」

 突然、頭に激痛が走った。思わずあたしはそれを手で押さえ、見ると……そこからは〝血〟が流れていた。

 ……そう。〝石〟を投げられたのだ。周りにいた村人から、次々と……!

「『痛い!! 痛い!! もう止めて!! 止めてったらああああっっ!!!』」

「……り、りむ……る……!!」

 お母さん!? 倒れたお母さんが必死に起き上がり、あたしに覆いかぶさってきた。

 ――そう。お母さんはあたしを守ろうとしてくれたのだ。

 お母さんは未だ石を投げ続けてくる村人に構いもせず、あたしに向かって必死に笑顔を見せて話した。

「……だ、だい、じょうぶよ、りむる……お母さんが、守って……」


 ――ゴッッ!!


 その時だった。お母さんの頭に、大きな石が当たっ――

「『お母さん!!?』」

 力なく、あたしの上で動かなくなったお母さんを、あたしは必死に揺さぶった。

「『お母さん!? ねぇ! しっかりしてよ! お母さんっ!!!』」

 誰か……誰か助けて!! ――そう叫ぼうとしたあたしだったけど、周りを見渡した瞬間、あたしの耳には信じられない声が聞こえてきた。


『――お、おい、誰だよ今石投げたの? 母親の頭に当たったぞ?』

『あ? 知るか、そんなの。あの母親だって〝化け物〟の親だろ? なら構わねぇだろ?』

『そうだそうだ! あの母親だって本当は何か〝力〟を隠しているかもしれないぞ!』

『何!? だったら〝化け物〟と同じじゃないか! 今のうちに〝殺した〟方が……』

『よ、よし! みんな〝武器〟になりそうな物を集めろ! こいつらを〝殺す〟んだ!!』

『わ、分かった! おーい! みんなこっちだー! 〝化け物〟を〝殺す〟ぞー!!』


 ……は? ちょ……ちょっと、みんな……何で……?


『〝殺せ〟!』『〝殺す〟んだ!』『〝化け物〟め!』『〝殺す〟!!』『〝殺す〟!』『〝殺せ〟!!』


 ――ころ……す??? あたしを……? おかあ、さん……を???

 ………………許さない。

 そんなの……あたしが、絶対、〝許さない〟!!


 〝殺して〟……やる……みんな、〝殺して〟やるッッッ!!!!!!!!!!


「『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』」


 ――刹那、あたしの意識は途切れた。






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