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『……え?』
ウ……ソ……???
どういうこと? 聞こうとしたあたしよりも先に、ハイジャは答えた。
「いや~、実はさ? おれっち〝たち〟って、それこそ卵さえ見つかんなきゃまともに戦うことはできるんだけど、最近じゃそれも発見される確率が増えてきちまってさ? まともに戦えなくなっちまったわけよ。……しかも、見たろ? 魔法も何も、使う前に生まれた瞬間大魔法で、どっかーん! よ? あんなんやってらんねーってのマジで!」
『……それで、生まれた瞬間魔法を発動できるようにして…………』
「そそ! 何だ、頭いーじゃんか。――おれっちの場合は、とりあえずてきとーなやつの身体の中に入って、その場から逃げる、っていう戦法をとることにしたんだよ!」
『……じゃあ、あたしの中に入ったのは――』
「うん! ぶっちゃけ、とりあえずはあそこから〝逃げるため〟だな!」
『……じゃあ、あたしに魔法を教えてくれたのも――』
「おう! 〝報告されないようにするため〟だな! ついでに〝恩を売って〟おけば、ほらこのとおり! 新しい身体だって〝手に入った〟じゃねーか! ――あ、ちなみにおれっちに身体を貸してる時〝寝ちまう〟のは〝契約〟とは関係なくて、ただ単におれっちが色々調べ回ってんのを知られたくなかったから〝眠らせてた〟だけ♪ だから今は寝てないっしょ?」
『……じゃあ……最初か、ら……あたし、のことを…………』
「ん? もちろん〝利用するため〟にあれこれしてやってたわけだが……え? 〝泣いて〟るの? 何で? 戦い……〝勝負〟ってのは、トランプみたいに〝騙し合い〟だろ? 騙された方の〝負け〟。騙された方が〝悪い〟……違うか?」
『……』
……はい…じゃ…………
あたしはハイジャの中で、流せない涙と共に、最後の〝希望〟を捨てきれずに、聞いた。
『……お願い……全部、〝冗談〟だって、言って……そうしたら、あたし…………』
……だけど、ハイジャの答えは、〝変わらなかった〟。
「ああ、ごめん。この〝勝負〟……おれっちの〝勝ち〟だわ♪」
…………そん……な……。
「――なるほどな、だいたいの事情は分かったぜ」
その時だった。エルさんの脇を通り、神王がハイジャに向かって話した。
「……お前のその身体……本物のリムルから〝奪った〟ものだったわけか……どーりで霊王が調べても分かんなかったわけだ。リムル本人の身体に、リムル本人の〝マナ〟。お前はその中にほんのちょっとだけの〝マナ〟を持って入り、隠れてたわけか……」
「そのとーり! ……って、実際はあとちょっとでバレちまうところだったんだけどな? とにかく、いや~しかしホント、運良くこんな便利な〝力〟を持ったやつの中に入れてラッキーだったぜ! おかげでそこのロリババァも〝手〟までは調べられなかったからな!」
「ババ……っく! 言わせておけば調子に乗りおって!!」
神王! 魔王! 冥王! そしてエル!!
霊王さまはそれから、大声で言い放った。
「あやつを捕らえるのじゃ! ただし決して殺してはいかん! 分かっておるな!!」
「ふん!」「けっ!」「んふふ♪」「……!!」
「「命令してんじゃねぇぞこのババァ!!!」」「霊王様の御心のままに!!」「了解!!!」
どんっっ!! ――瞬間だった。叫んだ四人は四方に散り、いっせいにあたしに向かって……ハイジャに向かって跳びかかったのだ!
――しかし!
「甘いぜ!! 今のおれっちは〝力〟を手に入れたんだ!!!」
うおおおおぉぉぁあああっっっ!!
――突然の、〝咆哮〟……!! 見ればハイジャの身体中にはあの、〝赤いマナ〟が……!!
まさかっ!?
「くっ! ……〝鳳仙花〟による〝結界〟ってやつか……ッッ!!」
ピンポーン! ハイジャは動きを止めざるを得なかった神王たちを見て、笑いながら答えた。
「文字どおり、身体中に〝爆弾〟を巻き付けたような状態だ……しかも! その〝殺傷能力〟は普通の爆弾の比じゃあねぇ! 触れば確実にあの世行きの〝必殺爆弾〟よ! どーだ? これならお前らは攻撃も防御もできねーだろ? 何しろこの身体はリムルそのものだ! 人質が特殊な爆弾抱えて戦ってるんだから、こりゃあケッサクだよな!!」
『……!!』
く……悔しいけど、確かにハイジャの言うとおりだ。これでは捕らえるどころか、触ることすらできはしない! ……もし、魔法でわざと身体中の〝マナ〟を弾き飛ばしたとしても、その〝爆風自体〟を突破するのにかなりの危険が伴う……爆風が弱くなるのを待っていれば当然ハイジャは次の爆弾を仕掛けてしまうだろうし、仮にダメージを覚悟で突破できたとしても、だ……あたしの身体を使っているせいで身体に爆風による影響がない今、ハイジャはそれに何の抵抗もなく反撃することが可能なのだ! これではまるで勝負にならない!
〝無敵〟!! ……もし、今のハイジャを倒すことができるとしたら、それは間違いなく……あたしを〝殺す〟ことだけだ。身体中の爆弾を適当な魔法で吹き飛ばした後、爆風よりも強い威力を持つ魔法で、あたしごとハイジャを〝殺す〟……いかに世界の頂点、〝王〟であろうとも、どれくらい強いのかもわからないようなこの爆風と相殺させて、ギリギリあたしを殺さない程度に魔法の威力を抑える、なんてことは不可能だろう。
へっへっへっ……ハイジャは笑ったまま続けた。
「さ、どうする? おれっちごとリムルを〝殺す〟か、それともお前らが〝死ぬ〟か……ま、おれっちとしてはどっちでもいいんだけどな? おれっちたちの〝王〟、〝秘王〟様の封印を解くも良し! 〝秘王〟様の脅威と成り得るかもしれないこの妙な〝力〟を潰すも良し! これでおれっちの役目は完璧に達成されることになったわけだ! だから――」
「――ごちゃごちゃうるせぇんだよボケがぁああッッ!!!!!」




