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「――え? ここにあるの?」

『おう、間違いなくここだぜ?』

 へー、こんなとこにねぇ……?

 ――ハイジャに案内してもらってたどり着いた場所……そこは、確か初めてファナたちと出会った時に〝落ちてきた〟……そう。この神殿の〝地下倉庫〟というやつだった。

 ……まぁ、見た目は倉庫っていうか〝ゴミ置き場〟みたいなところなんだけれどね? 実際床に色々物が散乱してるし……あ、でも逆に、要る物要らない物、それだけここには色んな物があるってことなんだよね? だからこそ、ハイジャの身体に合うような物も置いてあったわけか……。

 そう勝手に納得して階段を降りたあたしは、最初の時とは違い、テファイではなく〝テル〟という、テファイに比べれば何倍も明るい、光の魔法を唱え、先へと進んだ。……ああ、ちなみにこれもハイジャに教えてもらったことの一つである。結構便利だ。

「……で? いったいどれなの? ものすごい量の〝ゴミ〟……じゃなかった。物が置いてあるんだけど?」

『……その〝ゴミ〟におれっちは今から入るんだけど? ……まぁ、いいや。――ほら、今立ってる場所からちょい右向いてみ? 〝バカでかい〟からすぐ分かるって』

「〝バカでかい〟??? って、ハイジャ……あんたまさか……」

 〝これ〟??? とあたしは、以前びっくりさせられたその物体を指差した。

 そこにあったのは……

『そそ! これこれ! えーと、何て言ったけかな……?』

「ヘル……ハウンド……」

 ……そう。ヘルハウンドのはく製だ。魔界で最も恐れられている、超・猛獣…………。

「……え? 何? 〝これ〟??? え? ハイジャの目標って確か、〝人畜無害〟じゃなかったっけ? かけ離れすぎてない?」

『いや……んなこと言われてもよ? これが今んとこ一番合ってるって、おれっちの魔法では出たわけだしさ? どうしようもなくね? ……あ、でも、ほ、ほら? こんな形だったら誰も近寄ってこねぇはずだから……無害っちゃ無害なんじゃね?』

 ……言われてみれば確かに、好き好んでヘルハウンドに近づく人なんてまずいない。逆に、見たら見つからないように静かに逃げていくのが普通だ。……ある意味、平和に暮らしたいのならこれは〝最適〟と言えなくもない……のかもしれない。

 ……まぁ、獣同士の縄張り争いとかはあるかもしれないけど。

 ――ともかく、だ。本人がこれでいいって言ってくれているんだから、何もあたしがそれを止める必要はないじゃないか。むしろ喜んで見送ってあげよう。

 そう考えたあたしは何となく上を……ハイジャが今いるだろう頭の方を見て話した。

「ほら、じゃあ早く入りなよ? この復活する時を待ちわびてたんでしょ?」

『え? いや、こんなとこで入れるわけないじゃん?』

「……? 何で?」

 聞くあたしに、ハイジャは周りを見渡すように言って続けた。

『ほら、よく見てみ? おれっちが今この中に入っちゃったらさ? 〝出れない〟じゃん。デカすぎてさ? まさかその辺ぶっ壊して出るわけにもいかねぇだろ?』

「……」

 ……確かに。周りに見える扉や階段はどれも小さすぎて、ヘルハウンドみたいな巨体はどうがんばっても通れはしない。それこそ、ハイジャの言うとおり壊しでもしない限りは。

「……え? じゃあ、どうすんの? 〝分解〟して持ってくの? 切り刻んで?」

『いやいやいやいや! そんなことしたらおれっちめっちゃパーツ多くなるじゃん! たまに取れちゃうかもよ? 気をつけて生活しててもさ!?』

「……じゃあ、どうすんの?」

 魔法だよ魔法! ハイジャは大声で話した。

『こういうもう死んでるやつとか、物限定なんだけどよ? 魔法の中には物体を〝小さく〟したり、それを〝元の大きさに戻したり〟する魔法だってあるんだよ! それを今からリムルにおれっちが教えてやるから、リムルが使ってそいつを外に……そうだな、〝訓練場〟に運び出してくれ! あそこの大穴は最近ファナ嬢ちゃんが自分で埋め立てられるようになったらしいが、実際まだまだ〝荒い〟! そのせいであの壁は超絶〝脆い〟んだ! ――そこをおれっちは軽く掘って外に出る! んで、まさか自分とこの城からいきなりこんな怪物が出てくるとは思わねーだろ? その兵士たちの油断をついておれっちはとにかく全力で逃げる! と、そんな感じの作戦だ! ……ふっふっふっ! どうだ? 完璧だろ?』

「う……うーん……まぁ、ハイジャがそれでいいならいいんじゃない? けど、捕まっても知らないよ?」

『大丈夫大丈夫! いきなり殺されない限り、おれっち逃げ足には自信あるから!』

「……」

 ……ふ、普通に考えて、あたしが町の外までこっそり〝運んで〟あげれば、それで済む問題だと思うんだけど……これってやっぱり、教えてあげた方がい――

『――いや~! さすがおれっち! 天才! こんなこと誰も思いつかねーよ! 完璧! もうこれ以上ないってくらい完璧な作戦だな! ……な? リムルもそう思うだろ?』

「……う……うん。まぁ、ね……?」

 ……うん。黙っててあげた方がハイジャのためだよね? 黙っていよう。

 ――その後、あたしは教えてもらった魔法でヘルハウンドのはく製を小さくし、訓練場へと運んだ。






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