#6,〝友だち〟。 6-1
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――訓練場前の廊下。
〝あたしの抱えている悩みを解決する手伝いをする〟――そう言い放ったハイジャに、あたしは問い詰めた。
「……どういうこと? あんた、いったい何をするつもりなの?」
『――おっと! まぁ落ち着けって……いいかい、悪魔の姉ちゃん? おれっちは姉ちゃんの頭の中に入ってからまだ一日くらいしか経ってねぇし、聞いてただけだから姉ちゃんの名前も〝リムル〟なんだか〝リムチャン〟なんだか、いったいどっちが本当の名前なのかも分かってねぇ。うん、まぁ、だから悪魔の姉ちゃんなんて呼んでるんだけどな? ……っと、そんなことはどうでもいいとして……しかしな、そんなおれっちにも、これだけははっきりと分かるぜ? ――姉ちゃんはその妙な〝手〟の力を〝制御〟したい……そうだろ?』
「……そう…だけど……それが、何? あんたにその制御法がわかるってわけ? ――冗談言わないでよ。何でこの〝手〟のこともつい最近知ったあんたなんかに、そんなことがわかるっていうの?」
『うん! ごもっともな質問だ。だからはっきり言わせてもらおう! おれっちは制御法に関しては全く知らん! だから――って、うぉおおおーーーいッッ!! 待ってってばお姉さま! お願い最後まで言わせて!!』
「……」
イライラ、しながらも、あたしは仕方なく止まった。それに『ありがとう! 本当にありがとう!』とウザったく礼を言ってから、ハイジャは続けた。
『いや、だからあのね? 確かに制御法に関しては全く知らないけど、でもさ? フツーに考えてみようよ! 制御するのって〝最終的な目標〟なわけでしょ!? 過程はどこ行ったの!? 魚は釣り上げた時点で料理になっているんですか!?』
「……? つまりは、何を言いたいわけ?」
『だから過程だよ! 〝過程〟! ――焦る気持ちも分かるんだけどさぁ? まずはいきなり止める方法から入るんじゃなくて、〝他にどんなことができるのか〟? それを実験していかねぇか?』
「……〝他にどんなことができるのか〟……? 〝鳳仙花〟で……???」
こいつ……いったい何を言ってるの? 〝鳳仙花〟でできることなんて、爆発させて壊すことくらいしか、ないんじゃないの?
『ままっ! とにかくだ! こうしようじゃあないか! ――とりあえず悪魔の姉ちゃんは訓練場に戻る。んで、これもとりあえずでいいからおれっちのことは誰にも言わずに、おれっちの指示どおりに……えーと何? 〝ホーセンカー〟? とかいう姉ちゃん〝力〟を使ってみてくれ! それで姉ちゃんが納得いかないような結果に終わったら……あー、そん時はおれっちも諦めるよ。言うなり報告するなりチクるなり、好きにしてくれ。どーせ逃げたくても逃げらんねぇしな?』
「…………へ、へー……そう。そこまで自信があるんなら……まぁ、いいけど……」
ホントか!? そう叫んだハイジャに、ただし! とあたしは付け加える。
「あたしが少しでも変だと思った場合や、危険だと思った場合はすぐに言いつけるからね! それだけは覚悟しておいて!」
『おう!! そん時はおれっちも一応男だ! 約束どおり言っちゃってくれ!』
「ふん! あっそ!」
そう言い放ってから、ほとんど言う気満々で訓練場に戻った。




