5-16 五話目終わり。
「!??」
〝秘王の卵〟!? 〝分身〟!??
「どういうこ――」
いやー、実はよ~……と呑気な声で、ハイジャと名乗った〝分身〟はあたしが聞く前に続けた。
『何だか知らねーけどよ? 生まれたその瞬間におれっちってば跡形もなく吹っ飛ばされちまってさ? このままじゃ消えちまう! と思ってとっさに使った〝魔法〟で、たまたま悪魔の姉ちゃんの身体の中に入っちまった、と……そういうわけなんだよ。つーことで、悪ぃんだけど――っておい! 待て待て待て! いえ! お待ちになってくださいぃ~!』
急いで霊王さまに報告しに行こうとしたあたしを、ハイジャは呼び止めた。
「……何よ? あんたみたいな危ないやつ、すぐに霊王さまに言って〝退治〟してもらうんだから、邪魔しないでよ!」
『邪魔するわ!! ――じゃない! いえ! だからね? ほんのちょっとだけでいいのよ! ほんのちょっとだけでいいから、おれっちの〝話〟を聞いてくれるだけでいいんだ!』
「……話?」
べつに聞く気はなかったんだけど、思わずそう聞き返してしまったあたしに、ハイジャは慌てて答えた。
『そう! お話! ……いやね? おれっちってばその〝秘王の卵〟とかいうのから生まれておいてアレなんだけどさ? おれっちはべつに〝秘王〟なんて〝どうでもいい〟わけよ!』
〝秘王〟が……〝どうでもいい〟???
「何でよ? あんたたち〝分身〟って、そもそも〝秘王〟を封印するのに使ってる〝宝具〟とかいうのを壊すために、こっちの世界に送られてきたものなんでしょ?」
誤解だ! そうハイジャは叫んだ。
『他のヤツらはどうか知らねーが、とにかくおれっちは〝急いで作られた〟せいか、そんな使命のことは一切果たす気はねーんだよ!』
〝急いで作られた〟? 聞くと、ハイジャはすぐに続けた。
『そうそうそう! ……何でも〝秘王〟は、神界のやつらのスキをつくために普段の何十倍ものスピードでおれっちを作ったらしいんだが、結果として、知識や何やらはそれなりには詰め込めたんだが、たぶん〝秘王〟のヤローにとっては一番重要な、〝忠誠心〟ってやつがおれっちの中には全く育たなかったらしいんだよね? だからおれっちにはそもそもそんな使命を果たす気はこれっぽちもなかったんだが……見てのとおりだ。生まれた瞬間、有無を言わさずあんな大魔法で……カッッッ!!!!! ――だぜ? 聞いたろ? おれっちの哀れな最後の悲鳴をよ?』
「……あっそ。で?」
『ああ、うん! んで! たまたまとはいえ、悪魔の姉ちゃんの中に入ったのも何かの〝縁〟ってやつだと思うわけよ! そこでおれっちが〝復活〟するために〝新しい身体〟をだな、悪魔の姉ちゃんにさが――って! ちょちょちょ!? お待ちになって!? あれ!? お話し聞いてくれるんじゃなかったの!?』
「……あー、ごめん。聞き耳ないから他当たって? あたしはとりあえず報告しにいくから」
『報告されたら他すら当たれないじゃん!! ――ねぇ! だからちょっと待ってってば! おれっちは……あ! 分かった! じゃあこうしよう!』
と、ものすごく必死にハイジャは〝交換条件〟ってやつを出してきた。
でも、その〝交換条件〟というのが……
『――悪魔の姉ちゃんが今抱えてるその〝お悩み〟!! おれっちが〝解決〟のお手伝いをしようじゃあないか!!』
……え?
★★★★★★★★★★




