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 ――〝鳳仙花〟制御法その一、テファイを使ったまま触ってみよう!


「というわけでリムル。そこの台の上にシーダが食ってしまった物と同じ、妾のメシでもある〝霊石〟を一粒置いた。それ一粒でも結構な〝マナ〟が含まれておるから……と言っても、べつに大爆発を起こすほどのものは含まれておらん。せいぜいが花火程度のものじゃ。お前の手でも充分に反応することじゃろう。――右左どちらでもよいから、片方の手でテファイを使いながら、もう片方の手でそれに触ってみよ。もちろん、手袋は外してな?」

「りょ、了解!」

 大きな声で返事をしてから、あたしは手袋を外し、とりあえずは左手でテファイを使ってみた。ぽう、とそこには小さな火が灯る。

「――よし、そのまま維持するんじゃぞリムル? 空いている右手で〝霊石〟を触るんじゃ」

 維持したまま空いてる右手で……えい!

 ――しかし、

 ぱんっ!

 〝霊石〟は、見事に爆発してしまった……。

「……むぅ、ダメか。ならば――」


 ――〝鳳仙花〟制御法その二、テファイとウォムを同時に使って触ってみよう!


「……どうやって?」

「簡単じゃ。どちらも指一本で使える魔法……こう、人差し指を立てたままじゃな……」

「……」

 テファイとウォムを使ったまま、なんとか触る……

 ぱんっ!

 ……。


 ――〝鳳仙花〟制御法その三、簡易的に霊王さまを召喚し、霊王さまにあたしの〝マナ〟を使って大きな魔法を使ってもらっているまま、触ってみよう!


「――〝蒼い月夜の(ライトブルー・ムーン・テンペスタ)〟……おい、リムル。早ぅ触れ。このままだとお前自身の〝マナ〟が尽きて〝死ぬ〟か、この神殿と町が一部〝消滅〟するぞ?」

 !!?

 あたしは全力で台に向かって走り、〝霊石〟目がけて飛びついた。

 しかし……

 ぱんっ!

「……むぅ? これでもダメか……ならばもっとギリギリまで〝マナ〟を消費させ、追い込んで……」

「やめてーっっ!!!!!」


 ――そして、数十分後。


「――はぁ! はぁ! も! …はぁ! ムリ……!!」

「なんじゃ? だらしないのぉ? ……しかし、困ったの……魔法を同時に使用してもダメ。〝マナ〟を使ってもダメ。試しに身体を動かしてみてもダメ、となると、あとは……」

 ――!!? まだ何かやるつもりなの!?

 このままじゃ霊王さまに殺される! そう直感し、あたしは本気で逃げようと思った、その時だった。

「――失礼します! 霊王様はこちらに…あ! 霊王様!!」

 突然、青い髪の女の神兵さんが訓練場の中に入ってきたのだ。それも、ものすごく慌てた様子で……何かあったのだろうか?

「――なんじゃ、騒々しい。妾は今、未来に生きる子どもらの育成に忙しいんじゃ。後にせぃ」

 ……え? このペースだと、未来どころか今日中にあたし、死んじゃうよ? 助けて?

「いえ! そうもいきません!」

 と、どうやらこの青髪神兵さんは文字どおり救いの女神さまであるらしい。霊王さまの言葉にも怯むことなく、どころかさらに近づいて片膝をついた。

 それを見て霊王さまは、ムスッ、とした表情になった。

「……なんじゃ? 申してみよ。ただし、くだらんことだったら――」

「――この町の付近で、〝秘王の卵〟が発見されました!!」

「「「「「!!?」」」」」

「――どういうことです! 説明しなさい!」

 ファナたちの訓練をしていたエルさんが聞いてすぐに飛んできた。それを見て青髪の神兵さんはすぐに答える。

「エル様…実は、探索隊の者が巡回路に沿って探索していたところ、昨日までは全く見つかっていなかった場所に急激に〝秘王のマナ〟が集約されて行っているのを発見したのです! その〝マナ〟の塊は僅か数分で〝秘王の卵〟と呼ばれる状態にまで急激に成長し、あと一時間もすれば孵化してしまうだろうという報告を受けたのです! ――そこで、大切なお客様である霊王様に避難していただくべく近くにいた私が霊王様の避難路のご案内に参上した次第です!」

「そんなことが……!! 霊王様! 皆さん! ここは安全のために避難を――」

「――おお! ちょうどよい。それでは皆で〝見に〟行くか!」

「「なっ!?」」「「「!!!??」」」

 霊王様! エルさんが大声を上げた。

「このような時におふざけにならないでください! 霊王様の身に万一のことがあっては、神族としての我々――」

「バカを言うでない。このようなチャンス、そう滅多にあるものではないわ。〝予言の子〟であるこの子らにも〝秘王〟というのがどのような存在であるのかを見せる良い機会ではないか」

「!!?」

「――霊王様!!」

 今度は青髪の神兵さんが怒鳴った。

「そのようなことは譬え霊王様とて認められません!! 神族の威信にかけて、力ずくでも――」


「――構わん、行かせてやれ」


 ――その時だった。

 突然の子どもの声……見れば入口には、大勢の神兵たちを引き連れた神王の姿があった!

 神王は頭を、ぼりぼり、かきながら話した。

「……俺としても、今回は霊王と意見が合致する……〝予言の子〟として未来を背負う以上、敵である〝秘王〟がどのような存在であるかも、それこそ話の中でしか知らんようでは、正直未来もクソもあったもんじゃねぇしな?」

「し……しかし!」

 その代わりに、だ――青髪の神兵さんが叫ぼうとした瞬間、神王は後ろにいた大勢の神兵を親指で指しながら話した。

「こいつらをその護衛として任に当たらせる。――外でそのために待機しているやつらも合わせて、総勢〝五百人〟を超える人数だ。しかも、今回は特別に普段は〝宝具〟の守護に努めている、〝神兵兵士長・フレイア〟にも命令してその討伐に当たらせている状態だ……どうだ? これなら避難させるよりもむしろ、〝安全〟と言えるんじゃねーか?」

「フレイア様が!? ……し、承知いたしました……神王様に私ごときが意見するなど……ご無礼をお許しください……」

「おう、気にすんな。――つーわけで霊王、後は頼んだぜ?」

 かっ! と霊王さまはそれを笑い飛ばしてから答えた。

「ガキが、誰にものを申しておる。お前なんぞに言われずとも重々承知しておるわ」

「ふん、言うと思ったぜ……」

 そう呟くと、じゃあな、と手を挙げて、神王は去って行った。

 〝五百人〟……それだけの神兵たちに命令を出して、しかもみんながちゃんと納得することができるような、的確な説明……神王って、ただの迷子バカじゃなくて、本当に〝王〟さまなんだ……〝さま〟って、ちゃんと付けた方がいいかな?

 そんなことを考えながら、あたしは霊王さまに呼ばれて、その後に続いた。





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