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「――よし、というわけで、お前ら〝予言の子〟の訓練内容が正式に決まった! これもまた書き記しておくから、各自よく目を通しておくように!」
「あの――その前に、質問……いいですか?」
そろり、と手を挙げたファナは、そのまま続けた。
「私が空けちゃった〝大穴〟……あ、あの、その…私お金、ほとんど持ってなくて……だから、弁償とか……」
「ん? なんじゃそんなことか? ――安心せい。〝穴〟なら妾とていくつも空けておる。あんなもん神王に全部押しつけとけ。……構わんじゃろ、エルよ?」
「え゛……あ、は、はい……」
……どうやら、霊王さまは全種族の〝王〟であるらしい。誰も逆らえない……。
「――というわけで、改めて続けるぞ? ええと……」
〝予言の子〟個別訓練法
・エル……今までに同じ。神兵としての仕事をしつつ、腕を磨く。
・リムル……とりあえず素手で触っても爆発しないよう、火の魔法を中心に覚え、制御を学ぶ。
・ファナ……魔法を使うためにはシーダと手を繋ぎ、かつ〝F・D〟の〝範囲外〟に身体の一部を出さなければならないことが判明。よって、シーダの休憩の合間を縫って、魔法の制御を学ぶこととする。
・シーダ……身体能力強化に使用する〝マナ〟の量を制御すると共に、体術を学び、より効率の良い身体の動きを学ぶ。
「――以上じゃ。訓練のことに関して、各自何か質問はないか?」
「あ、じゃあ……」
あたしは手を挙げて、質問した。
「爆発しないように制御するって……具体的には何をするの? あたし、一応テファイくらいだったらもう使えるんだけど……あ! それからさっきのファナの魔法のことなんだけど、確か…水があんまりないところでは水魔法は〝弱くなる〟……って、言ってた気がするんだけど、あのどこからきたのかもわからないような、大量の水と威力はいったい……ドユコト?」
「む? なんじゃそんなことか……」
はふぅ、ため息をついた霊王さまは、それからすぐに答えた。
「知らん」
「ああ~、なるほど~……って! ちょっと!?」
思わず頷きかけた頭を、あたしはギリギリのところで戻した。だけど……
「仕方なかろう? 何しろお前たちのような特殊中の特殊な者を見たのは、この千年でも初めてのことなのじゃ。――刺すだけで相手を完全拘束する詠唱不要の剣に、〝マナ〟さえそこに入っていれば触っただけで全てを爆破できる手。そして手さえ繋いでいればどんな大魔法でも無効化できる空間と、そこから身体の一部を出しさえすれば物理不要の極大魔法…じゃぞ? こんな信じられんような魔法ばかり使う者にいきなり的確に指示などできるものか!」
……ですよね~。
「……い、いや、でも…とにかく何かしらの指示を出してもらわないと、あたしもどうしていいのかわかんないんだけど……」
「……むぅ、確かにな……では、こうしようではないか。――エル、お前はすでに神兵として活躍している身じゃ。自分のことはもはや自分が一番分かっていよう。そこで、お前にはファナたちの訓練教官の任を命ずる。…なに、シーダの方はとりあえず体術を教えれば良いだけじゃし、ファナの方も威力が桁違いというだけで、やることは普通の魔法使い育成と同じじゃ。何とかなるじゃろ?」
「かしこまりました。――ということは、霊王さまがリムルさんを?」
「うむ。リムルの場合はテファイ程度の初級魔法といえど、出し続ける、などの制御はできているのにも関わらず、手の制御だけができていない状態じゃからな……こういうのはやはり、妾のように知識の多い者の方が、教えるのには何かと便利じゃろう」
……というわけで、
「いざ! 特訓開始じゃ!」




