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 ……。

 ……。

 ……。

 ……あ、あれ?

「……? 何にも出ないよ?」

「? おかしいですね? ……あ、ちょっと待ってください。これ……」

 と、エルさんは弟の指先に何か…〝光るもの〟を見つけ、みんなに近くにくるように言った。

 ……そこには、

「……水……滴が、ついてますね?」

 ……そう。〝水滴〟がついていた。いや、でも……

「……汗なんじゃないの? こんな小っちゃい水滴……シーダ、なめてみなよ」

「うん? ぺろ……何の味もしないよ?」

 ……と、いうことは、やはり……。

「……い、一応、成功した……ということに…なるのでしょうか……?」

「……ま、まぁ…あれだけ身体能力が高いんじゃ。その代償に魔法が苦手なのじゃろう。法則は逆も然り、ということじゃ」

「そうなんだ……あれ? でも、ということはファナは……?」

「「「「「…………」」」」」

「出ておらんの?」「出ていませんね?」「乾いちゃったんじゃないの?」「もしくは……」

 ねぇ、ファナ? あたしは提案した。

「もしかしたら、発音とかが悪かったのかもしれないよ? もう一回、今度は一人でやってみれば?」

「う…うん。じゃあ……水よ、集え…〝ウォム〟!」

 ……。

 ……。

 ……。

 ……??? 何で出ないの?

「……どういうことなのでしょう? 出ない…はずがないのですが……」

「むぅ…確かにの。この魔法を発動できなかった者など、千年以上生きておる妾でさえも聞いたことがないわ」

「ということは……どういうこと……???」

「――お姉ちゃん、魔法の才能も〝ない〟んじゃない?」


 ぴしぃ!! ――刹那、だった。


 文字どおり無邪気で、悪気なんていうものは、微塵もなかったのだろう……しかし、そんな弟の何気ない一言が、この場の空気を〝殺した〟……。

「……ふぁ、ファ…ナ……?」

 恐る恐る、あたしはファナの方を向くと、ファナの〝瞳〟からは、大量のウォムが……

 ……………………あ。

「ひっく…ひっく……出るもん。絶対、出るもん…………」

 ……ファナは必死に、瞳から大量のウォムを流しながら…しかしそれでも諦めることなく、とにかく呪文を連呼しまくっていた。

 その様子を見て、あたしは……だ、ダメだ。もう見てられない! あまりにも切なすぎる!

「「………………」」

 どうやらそれは霊王さまたちも同じのようだった。何も言えず、ファナとは違い、身体中から大量のウォムを垂れ流していた。……恐らくそのウォムは、氷水のように冷たかったことだろう。

「水よ、集え…〝ウォム〟! ……み、水よ、ちゅどえ…うぉむ……みじゅ…うぅ……」

 ……ど、どうしよう?

「ねぇ~おねーちゃ~ん!」

 ――と、〝殺し屋〟の弟が、自分で殺しておいてそれに飽きたのか、無情にもファナの手を引っ張ってダダをコネ始めた。

「他の魔法も試してみよーよ~! ボク、他のもいっぱい使ってみたいんだけど~!」

「――じゃ! 邪魔しないでよシーダ! し…ひっく…シーダが手ぇ繋いじゃったら、ひっく、魔法使えなくなるじゃない!」

「「「…………」」」

 ……だ、ダメだ。やっぱり、何も言うことはできない……言ったらたぶん、ファナは二度と壁から離れられなくなってしまうことだろう……。

「ねぇ~! おねーちゃんってば~!」

 しかし、そうなってしまっても弟は構わないらしい。とにかくファナの手を引っ張った。

「ダメったらダメ! もう一回……水よ、集え……う、〝ウォむ――!??」

 瞬間、だった。腕力で勝る弟が遂に、ファナの身体を……


 ――キュイン!!


 ……きゅ、いん……???

 いったい何の音――

 刹那、だった。


 チュッッドオォォォオオオオオンンンンッッッッッ!!!!!!!!!!


 ファナの指先からは、突然、まるで〝巨大な滝そのもの〟を持ってきたかのような、莫大な量の水が光線がごとく勢いで放たれ、壁を貫……い…………

 ………………。


 …………は??????????






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