5-11
……。
……。
……。
……あ、あれ?
「……? 何にも出ないよ?」
「? おかしいですね? ……あ、ちょっと待ってください。これ……」
と、エルさんは弟の指先に何か…〝光るもの〟を見つけ、みんなに近くにくるように言った。
……そこには、
「……水……滴が、ついてますね?」
……そう。〝水滴〟がついていた。いや、でも……
「……汗なんじゃないの? こんな小っちゃい水滴……シーダ、なめてみなよ」
「うん? ぺろ……何の味もしないよ?」
……と、いうことは、やはり……。
「……い、一応、成功した……ということに…なるのでしょうか……?」
「……ま、まぁ…あれだけ身体能力が高いんじゃ。その代償に魔法が苦手なのじゃろう。法則は逆も然り、ということじゃ」
「そうなんだ……あれ? でも、ということはファナは……?」
「「「「「…………」」」」」
「出ておらんの?」「出ていませんね?」「乾いちゃったんじゃないの?」「もしくは……」
ねぇ、ファナ? あたしは提案した。
「もしかしたら、発音とかが悪かったのかもしれないよ? もう一回、今度は一人でやってみれば?」
「う…うん。じゃあ……水よ、集え…〝ウォム〟!」
……。
……。
……。
……??? 何で出ないの?
「……どういうことなのでしょう? 出ない…はずがないのですが……」
「むぅ…確かにの。この魔法を発動できなかった者など、千年以上生きておる妾でさえも聞いたことがないわ」
「ということは……どういうこと……???」
「――お姉ちゃん、魔法の才能も〝ない〟んじゃない?」
ぴしぃ!! ――刹那、だった。
文字どおり無邪気で、悪気なんていうものは、微塵もなかったのだろう……しかし、そんな弟の何気ない一言が、この場の空気を〝殺した〟……。
「……ふぁ、ファ…ナ……?」
恐る恐る、あたしはファナの方を向くと、ファナの〝瞳〟からは、大量のウォムが……
……………………あ。
「ひっく…ひっく……出るもん。絶対、出るもん…………」
……ファナは必死に、瞳から大量のウォムを流しながら…しかしそれでも諦めることなく、とにかく呪文を連呼しまくっていた。
その様子を見て、あたしは……だ、ダメだ。もう見てられない! あまりにも切なすぎる!
「「………………」」
どうやらそれは霊王さまたちも同じのようだった。何も言えず、ファナとは違い、身体中から大量のウォムを垂れ流していた。……恐らくそのウォムは、氷水のように冷たかったことだろう。
「水よ、集え…〝ウォム〟! ……み、水よ、ちゅどえ…うぉむ……みじゅ…うぅ……」
……ど、どうしよう?
「ねぇ~おねーちゃ~ん!」
――と、〝殺し屋〟の弟が、自分で殺しておいてそれに飽きたのか、無情にもファナの手を引っ張ってダダをコネ始めた。
「他の魔法も試してみよーよ~! ボク、他のもいっぱい使ってみたいんだけど~!」
「――じゃ! 邪魔しないでよシーダ! し…ひっく…シーダが手ぇ繋いじゃったら、ひっく、魔法使えなくなるじゃない!」
「「「…………」」」
……だ、ダメだ。やっぱり、何も言うことはできない……言ったらたぶん、ファナは二度と壁から離れられなくなってしまうことだろう……。
「ねぇ~! おねーちゃんってば~!」
しかし、そうなってしまっても弟は構わないらしい。とにかくファナの手を引っ張った。
「ダメったらダメ! もう一回……水よ、集え……う、〝ウォむ――!??」
瞬間、だった。腕力で勝る弟が遂に、ファナの身体を……
――キュイン!!
……きゅ、いん……???
いったい何の音――
刹那、だった。
チュッッドオォォォオオオオオンンンンッッッッッ!!!!!!!!!!
ファナの指先からは、突然、まるで〝巨大な滝そのもの〟を持ってきたかのような、莫大な量の水が光線がごとく勢いで放たれ、壁を貫……い…………
………………。
…………は??????????




