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「――あの……それで、霊王さま? 私たちの〝力〟を訓練するって……具体的にはどうするんですか? というより、そもそも何で訓練を? 研究…するんじゃなかったんですか???」

 お姉ちゃんが聞くと、「簡単なことじゃ」……霊王さまはすぐに答えた。

「妾たちの目的は確かに研究にあるが…そもそも、お前たちが〝力〟を使いこなせなければ研究をしようにも、その〝力〟でいったいどんなことができるのか? また、逆にできないことは何なのか? が全く分からんということになってしまうのじゃ。それ故に〝訓練〟……まぁ、考え方としては、どのように訓練すれば〝力〟を使いこなすことができるようになるのか? それをまず以って研究をして行こう、ということじゃな?」

 なるほど……お姉ちゃんが納得したのを確認してから霊王さまは続けた。

「よし、では気になるその訓練法じゃが……前にも言ったとは思うが、お前たちの〝力〟は異質ではあるが、基本的には魔法の〝ソレ〟と全く同じものじゃと妾は考えておる」

「魔法の……〝ソレ〟???」

 うむ。霊王さまはボクの問いかけに頷いてから答えた。

「そもそも世界における〝魔法〟とは、〝マナ〟を消費し、物理的に起きる現象を……あー、つまりは…そう! 〝火〟じゃな! ――おい、リムル。お前、魔法を使わずに火を起こすとしたら、どのように起こす?」

「え? そりゃあ……こう、木の枝とかで、ぐりぐり、擦って……」

「うむ。そうじゃな。ぶつけると火の出る石を使うにしても、お前の言うとおり木の枝で擦るにしても、要は摩擦によって熱を発生させ、火を起こさなければならん。――魔法とはつまり、この火を起こすまでの〝過程〟を〝マナ〟で代わりに補うことによってそれを高速で発動させることを言うのじゃ」

「へー、魔法ってそうやってできてるんだ……」

 ん? ということは……お姉ちゃんが聞いた。

「例えばお水を出すような魔法は…どこかから集めてきて出す、ってことですよね? お水が近くになかったら……どうなるんですか?」

「良い質問じゃな。――その場合は当然〝使えん〟。…と言っても、空気中にも多少は水があることから、全く使えん、ということにはまずならんのじゃがな? 魔法としての威力が格段に下がることは明白じゃろう。……じゃが、逆に水が大量にある雨の日や、川の近くでは水魔法は極めて強力になることもまた明白じゃ」

 おお、そうじゃ。ちょうどよいから……そう言って霊王さまはまた板に何かを書き始めた。

 そこに書かれたのは……


 〝魔法の種類〟


 火 赤

 水 青

 土 茶

 風 緑

 雷 紫

 光 白

 闇 黒


「――以上〝七種類〟。これは現存する〝マナ〟の種類でもあって、魔法を使う際は……例えば火に関係する魔法を使う際は、この〝赤〟の〝マナ〟を使わねば魔法を発動させることはできん。これはこの世の〝絶対の理〟というやつであって、〝宝具〟を持つ妾たち〝王〟であっても絶対に逆らうことはできんのじゃ。つまり……おい、リムルよ? お前、いつだか言っておったよな? 〝鳳仙花〟が発動する時、身体から〝赤いマナ〟が噴き出して相手の〝マナ〟にくっつく、と……」

「え? うん。そうだけど……あっ!!」

「気づいたか……そうじゃ。〝赤いマナ〟が噴き出るということは、つまり――」


「――〝鳳仙花〟は〝火の魔法〟……!!」


 そういうことじゃ。頷いて、霊王さまはそこに補足を付け足した。

「リムルの〝鳳仙花〟と同様に、エルの剣も〝白いマナ〟の塊でできておる。つまりはエルの〝栄光の剣〟は〝光魔法〟ということになるわけじゃ。――もっとも、実際にはそれ以外にも色々と〝混ざって〟いるようじゃし、ファナとシーダの〝F・D〟に関してはその特性上何の魔法かも分からんのじゃがの?」

「……〝混ざって〟る? 魔法って、混ぜることもできるの?」

「当然じゃ」

 霊王さまはボクの質問に即答した。

「例えば水魔法で〝お湯〟を作ろうとしても、火がなければ温まらんじゃろう? ということはつまり、水魔法でまずは水を集め、火の魔法それを温める……これでようやく〝お湯〟にすることができるわけじゃな。――〝混ざる〟とはつまりこういうことじゃ。混ぜる〝マナ〟の量や種類によって魔法としての難易度は上がっていくが……基本的には意味があろうとなかろうと、魔法は全種類、混ぜることが可能なのじゃ」

「なるほど……あ、でも……」

「ん? どうしたんじゃ、ファナ?」

「あ、はい……その、前に確か、霊王さまは私たちのその〝F・D〟は〝魔法だ〟って断言してましたよね? でも今、特性上何の魔法かわからないって…それなのに何で……?」

 おお、そのことか。霊王さまは今度は板に文字の他に、絵も描きながら説明した。

「それはな、この〝三眼(サード)〟という光魔法で調べることができるのじゃ。――この〝三眼〟はな、当然フィールド内に入っている状態のお前たちには効かんが、使用したモノの〝マナ〟の総量を目で見ることができるようになるのじゃ。つまり、この絵でも分かるように、フィールドを張る前のシーダと、張り終わって出てきたシーダの〝マナ〟の総量を見ると、僅かながらもシーダの〝マナ〟が〝減って〟おる。……ついさっきも説明したとおり、〝マナ〟を使用してフィールドを張っているということはつまり、〝F・D〟も何かしらの魔法であると結論づけられるわけじゃな」

 なるほど……なるほど、の連続だ。ボクにはちょっと難しすぎてよくわからないけど……とりあえず、ボクたちが使っている〝力〟はみんな魔法ということで間違いないらしい。よく、わかんないけど……。

「……まぁ、いきなり全てを理解しろ、というのも何かと無理があろう。各自、今説明したことだけでは他にも様々な疑問は残るとは思うが…今はその辺に置いておいてくれ。そして話を訓練法へ戻すが……要はこれじゃ」

 コッコッ…霊王さまは板に書かれた、魔法の種類、を指しながら話した。

「詳しくはまだ分かっていないとはいえ、魔法であることが確かなのであれば、その訓練法も魔法と〝同じ〟であるはずなのじゃ。つまりこれから行う訓練とは……ファナ。答えてみよ」

「あ、はい! えっと……〝魔法使いになる〟……っていうことですか?」





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