表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/99

#5,〝秘王の卵〟。 5-1




♠♠♠♠♠♠♠♠♠♠


「――さて、では二番目の〝予言の子〟・リムルも無事に見つかり、三ヵ月……簡易でいいから文字を覚えてもらわねば話にならん。ということで、今までお前たちには文字についての勉強ばかりさせてきたが…やっと、今日からじゃ。今日からは本格的に、お前たちが持つ〝力〟についての……って、その前に何なんじゃ、〝アレ〟は?」

 ――ボクたち以外、誰もいない貸し切りの訓練場。

 〝予言の子〟であるボクとお姉ちゃん、そしてリムちゃんをそこに集め(ちなみにエルさんは仕事が終わってからくるそうだ)、緑色の大きな板の前で話をしていた霊王さまは、その端っこ……大きな木の箱がいっぱい積まれている所で一人、膝を抱えて丸くなっているリムちゃんのことを指差してそう聞いた。

「――あー、リムちゃんはですね? 一ヵ月前から……ここ数日は特に、ですけど……せっかく釈放されたんだから、一度でいいからお母さんの所に帰りたいって言ってて…それで……」

「……な、なるほどの…………」

 お姉ちゃんの説明を聞いてすぐに納得した霊王さまは、「やれやれ……」と、大きなため息をついてからリムちゃんの方に歩み寄り、諭すように優しく話した。

「……リムル。母に会いたい気持ちは分からんでもないが……仕方なかろう? 前にも話したが、魔界へと繋がるゲートの調子が急に悪くなってしまったのじゃ。――安全が確認できるまでは何人であろうとも……それこそ、造った魔王本人ですらもがそこを通ることは許されん決まり…じゃから、この城にこそいないが、魔王とてゲートがある町に滞在を余儀なくされておるのじゃ。……諦めて、今は妾たちと共に研究に励んではくれぬか? お前とてそう約束してくれたであろう?」

「……したけど…………」

 でも、とリムちゃんは泣きそうな声で続けた。

「まさか三ヵ月経っても直らないだなんて…思いもしなかったんだもん……直すだけなのに、何でそんなに時間がかかるの?」

「……正確な理由を説明すれば時間がかかるから簡単に話すが……よいか、リムル? ゲートとは多くの人や荷を他の世界へと運ぶ重要な施設じゃ。そんな場所で何か重大な事故でも起きてみぃ? 全てはそれを造った妾たち〝王〟の責任、ということになってしまう……物が壊れたのであれば新しく作ったり、直したりすればよいだけじゃが、人や生物の命が失われてしまってはもはや取り返しがつかん。それ故にゲートの修理には細心の注意と、そして安全を確認するための多くの時間が必要になってくるのじゃ。……分かってはくれんか?」

「う~………………わかっ…た……」

 ぐすん……ぐずりながらも、霊王さまに説得されてリムちゃんはようやく戻ってきた。

 その様子を見て、あはは…と苦笑いをしていたお姉ちゃんは、「そういえば……」と霊王さまに聞いた。

「霊王さまは他の〝王〟さまたちとは違って、ずっと私たちのそばにいて色々教えてくれますけど……霊王さまは精霊界に帰らなくていいんですか? それとも、精霊界のゲートも壊れちゃったとか……?」

「ん? ああ、いやいや。妾の場合はただの〝産休〟というやつじゃ。もうすぐ赤子が生まれそうなのに今までと同様に〝王〟として仕事をしていては、赤子の身体に何かと害になってしまうからの。休むがてら、ちょうど良いということでお前たちの指導に当たることにしたんじゃ。指導程度なら害になることもないだろうからの。……もっとも、お前たち〝予言の子〟の育成、指導という仕事は、世界にとっても最も重要な仕事の一つじゃ。譬え妾が身ごもっていなくとも、〝王〟として妾はお前たちの指導に当たっていたことじゃろう」

「……そ、そんなに重要に思われてるんだ、私たち……がんばらなきゃ!」

「うむ、期待しておるぞ! かかか!」

 ――さてと、では改めて……呟いてから再び霊王さまは緑色の板の前に立って話した。

「――これより、お前たち〝予言の子〟の本格的な訓練を始める! それに当たり、まずはお前たちの〝力〟について今一度なるべく簡単に説明をするから、確認という意味を含めてよく聞くように!」

「はい!」「はーい!」「りょーかーい」

 ……よし! ボクたちがちゃんと返事をしたのを確認してから、霊王さまは緑色の板に白くて細長い…石? のようなもので何やら文字を書き始めた。

 ……三ヵ月前までは全然読めなかったけど、今はボクもちゃんとその文字を読むことができた。そこにはこう書いてある。


 エル・〝勝利と栄光の剣〟……〝栄光の剣〟の力、剣を刺した相手の身体及び〝マナ〟をほぼ完全に〝拘束〟できる。発動条件は自身の羽を素手で触り、抜くこと。また、触ってから五秒以内に羽を抜かなかった場合や、五秒後に勝手に抜け落ちた羽は剣にはならない。任意で羽に戻すこともできるが、一度羽に戻すと触っても剣にはできない。剣一本一本自体は脆いが、通常の武器と同様に物を斬ることもできる。


 リムル・〝鳳仙花(※以下略)〟……一定量の〝マナ〟を含む物体に素手(手の平)で触れるとその〝マナ〟の全てを爆薬に変え、爆破させることができる。現時点では自動的に発動し、制御はできない。


 ファナ、シーダ・〝F・D(※フィールド・デュエット)〟……二人の手が繋がれている間だけ発動し、〝シーダの身体を中心〟とする半径二メートル圏内に魔法無効化フィールドを張ることができる。このフィールド内に入った魔法はそのまま〝使っている〟ことになり、フィールド内から外に出れば再び魔法としての力を取り戻す。現時点ではリムルと同様に自動的に発動し、制御はできない。


 エインセル(※霊王の子)……まだ生まれていないため、一切不明。


「――以上じゃ。各自間違いないな?」

 こくこく、とお姉ちゃんとリムちゃんが頷いた。それを見てボクも頷く。

 ……ちなみに付け足すことがあるとすると、〝力〟の名前をつけた人が全員違うということで、エルさんの〝勝利と栄光の剣〟は神王さま。リムちゃんの〝ホウセンカ〟は霊王さま。そしてボクたちの〝F・D〟は冥王さまがつけてくれた。詳しくはおまけ#4と#5を見てね、だって。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ