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おまけ 4-2




 ……魔王は最初から期待してなかったけれど、霊王さまのは結構期待ができるかもしれない。だって、あんなにも霊王さまはあたしたちのことを――


「こほん……では、聞くがいい……【鳳仙花(ホウセンカ)~私に触れないで~】私の両手は恋の導火線。アナタに告げる愛の調(うた)。……でも、私に触れないで。私を本気にさせたら――アナタをバ・ク・ハ・ツさせちゃうゾ☆」


 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……え?


 ――え???


「――かかか、皆、妾のが凄すぎて声も出せんようじゃの! ユカイユカイ!」

 いや……え??????

 ――だ! ダメだ! もう〝え?〟としか出てこない! これ以上考えたらあたしの頭がバ・ク・ハ・ツ☆ しちゃうかもしれない! もう何も考えないことにしよう!

「――お、おおおい、し、神王…次、お前だったよな?」

 ……どうやら魔王もそう思ったらしい。

 テーブルの上で硬直していた魔王は、ギギギ、と神王の方に首だけを向けた。

 それには神王もがんばって応える。

「……お…おう。そそそ、そうだな……ま、まぁ霊王よりはすごくね、ねぇかもしれないが、一応聞いてみてくれ……」

「うむ! まぁそうじゃろうが、チャンスは皆平等じゃ! 一応言ってみるがいい!」

「……あ、ああ……じゃあ……」


「――魔掌……レヴァンティ……」


 ……さっきまではあんなにはりきっていたのに、ものすごく自信なさげだ。

 ……でも、落ち着いて考えてみなよ神王。どう考えてもあんたのが一番マトモだから……。

「……ど、どうだ?」

「うーん……まぁまぁじゃな。やはり妾ほどではなかったが」

「……で、でもよ? 何かすっげぇしっくりこねぇか? 俺様の次に……」

「「「…………」」」

 ――さぁ、リムル! と突然、霊王さまはあたしを名指しして聞いてきた。

「どれにするんじゃ? 何だかんだ言っても、結局はお前の気に入ったものでなければ意味はないからの。――とはいえ、たぶんお前なら妾のを選ぶと思うがの? かかか!」

 ――いや! 神王一択だよ! てゆーかそれしかないよ!

 そう思ったあたしはすぐに叫ん――

「――あいや!! お待ちくだされ霊王様!!!」

 その時だった。突然、あたしたちの前に降り立ったのは冥王……えっ!?

 ばっ!! あたしたちは全員後ろを振り返って見てみたけれど、そこにいた冥王の顔面には、未だエルさんの剣が突き刺さったまま……って! 冥王が二〝匹〟!?

 まさか――!?

「分…身……!!」

 エルさんの言葉に、「イエース! オフコース!」と意味なくポーズを決めた冥王は、仮面を脱ぎ捨て、その銀長髪の、のっぺりした顔をあらわにした。

「〝覗く者〟にとって身代わりなど用意しておいて当たり前のもの! まだまだ考えが甘いですなぁ、エル殿!」

「く……!」

 おっと! ――立ち上がって羽を抜こうとしたエルさんに向かって、冥王は腕を突き出してそれを制した。

「無駄ですよ! この身体もソレと同様、身代わりにすぎません! よってこの私をいくら拘束したとて私は何度でも蘇ることができるのです! ――そう! 精霊・不死鳥のように!!」

「…………ち……」

 ……あれ? 今……あの、すごく優しそうで…いや、実際にすごく優しくてきれいなエルさんが、〝舌打ち〟したかのように聞こえたんだけど……き、気のせい……だよね?

 どうやら冥王の言っていることは本当のようだ――それを確認したエルさんはそのまま…無言無表情のまま、仕方なく席に座った。

「……で、いったい何の用じゃ、二代目? まさか邪魔しにきただけではあるまいな?」

「とんでもございません! ただ……前回と同様ではありますが、二代目、とはいえ、私とて一世界の〝王〟。厚かましく思われるかもしれませんが、私にだって、リムルさんの力名を命名させていただける権利はあるのではないかと思いまして……」

「むぅ……決して賛成したくはないが……確かに」

 じゃあ、と霊王さまは、しぶしぶ、言った。

「……一応、言うだけ言ってみぃ。ただし、〝変態〟的なモノだったら許さんからな?」

「ありがとうございます~! そしてご安心を。ちゃんとカッコイイ名前を考えてきましたから!」

 そう答えた冥王は、ばっ! ばばっ!! とその長い銀色の髪をかき上げ、そしてなぜだかカッコよく(?)ポーズを決め……たぶん魔法で作ったのであろう。芸達者にも細かな水滴に光を反射させて、キラキラ、輝きながら言い放った。


「――〝轟魔爆炎掌(ごうまばくえんしょう)〟!!!!!」


「ぐわあああああああーーーーーっっっ!!!!!!!」

 ――その時だった。なぜか魔王が悲鳴を上げ、テーブルの上で両膝をついた。

 ……いったいどうしたのだろう? そう思っていると、またもやなぜだか、魔王は号泣しながら話し始めた。

「ち…チクショウ……カッコイイ! 俺様のより、遥かにカッコイイじゃねーか……〝決定〟だ! もうこれっきゃねぇ!! 俺様は悔しいが…この勝負、オリさせてもらうぜ……!!」

 ……え? そこまで? ――あ、いや、べつにオリてもらっても、どうせあんたのなんか選ばないから、どっちでもいいんだけどね?

「ん~……まぁ、確かに中々じゃが……おい、二代目。お前それ、リムルが使う力名なのじゃぞ? 男ならまだしも、女の子にそんな猛々しい名前は…どうなんじゃろうな……?」

 ご安心を! そう霊王さまの問いに答えた冥王は、魔法で作った水滴を霧状に空気中に分散させながら答えた。

「――確かに、今のリムルさんではこの名前は不釣り合いです……が! しかし! 考えてもみてください! 〝予言の子〟とは未来を託す存在! ならば使うその力もまた、未来を担うための名前が必要なのです!」

「……なるほどの。つまりお前が考えた名前は、〝大人〟になってから真の魅力を発揮すると……そういうことを言いたいのじゃな?」

「そのとおりです! グラマラス結構! スレンダー結構! とにかく私は、この名を大人になったリムルさんにカッコよく叫んでもらいたいのです!」

「うむ! そういうことならば参戦を認めよう! ――しかし、どーせ選ばれるのは妾で間違いないがな? かかか!」

 さて、と、では改めて……そう呟いた霊王さまは、にっこり、と限りなく優しそうに微笑みながらあたしに聞いてきた。

「……で、どれにするんじゃ、リムル? ちなみにオススメは、もちろん妾のじゃ! 皆驚いて声も出せんほどだったしの? かかか!」

 ……いや、驚く、の意味が全然違うような気がするんだけど……ま、まぁいいや。

 そんなことより、どうしようか? あたしとしては神王の考えた、〝魔掌レヴァンティ〟なのだけれど…悔しいけど冥王の〝轟魔爆炎掌〟も捨てがたい。――力の名前としては神王ので、技名としては冥王、という感じだ。

 う~ん……どうしよう……?

 あたしは悩みに悩んだ末、ある結論にたどり着いた。

 それは……

「――ねぇ、よかったらファナが決めてくれない?」

 えっ? 突然のあたしの指名に、ファナは驚きの声を上げた。

「私が決めて……いいの? だって、リムちゃんの魔法の名前なんでしょ?」

「いいのいいの。だってあたしじゃ迷って決められそうにないし、それに、〝友だち〟に選んでもらった名前って、すごく良い思い出になりそうじゃない? だから……お願い、できないかな?」

「う…う~ん……まぁ、そういうことだったら……じゃあ――」

 と、承諾してすぐにファナは手を挙げた。

 ……どうやら、ファナの中ではすでに、一番お気に入りの名前が決まっていたらしい。ファナはテレくさそうに、その名前をはっきりと言い放った。


「――〝ホウセンカ〟で……!!」


 ああ、やっぱりそれか。そりゃそうだよね。神王と冥王以外はみんなヒドイ名前だったし、まさか霊王さまの〝鳳仙花〟なんて選ぶわけが――


「「「「「「――えッッ!!!!!?????????」」」」」」


 神王、魔王、冥王、エルさん、弟、そしてあたし……の計六人の声が、意思が、今この瞬間一つとなった。


「――ファ、ファナ!? おま……正気か、おい!?!」

「――魔法か! 霊王に何か魔法かけられたのか!!?」

「――リムルさんに対する何か新しい〝プレイ〟ですか!?」

「――ファナさん! 気を…気をしっかり保ってください!!」

「――お姉ちゃん! だいじょうぶなの!? お姉ちゃん!!!」

「――ファナ!?! ホントにそれ!? ホントにそれでいいの!?」


 ――さぁ! ファナの〝答え〟は……!?


「――え……う、うん……だって……え? 〝かわいい〟…でしょ……???」


「「「「「「……………………」」」」」」

 ――しまった。と思った。

 ……今までファナは、ほわんほわん、してはいるけれど、しかし実はしっかり者のお姉ちゃん。というイメージがかなり強かったため、あたしは油断していたのだ。

 この子は……そう。実はこの子は――


 霊王さまと同じ〝部類〟の子……だったのだ。


「かかか! そうかそうか! そんなに〝かわいい〟名前だったか!」

「はい! ――あ、でも、せっかくの良い名前なんですけど、やっぱり名前としては少し長すぎる気もするから、〝ホウセンカ〟だけにしたらどうですか?」

「む? それもそうじゃな……では、これからはファナの言うとおり、略して〝鳳仙花〟と呼ぶことにしよう! ――皆の者! これにて〝決定〟じゃ! じゃからいつまでも悔しそうにそんな言葉を垂れているでない! ちゃんと〝祝福〟せんか!」

「「「「「「………………」」」」」」

 ――ポン。

 と、その時だった。

 あたしの肩に手をそえたのは、後ろにいたエルさんだった。

 その表情はどこまでも優しそうで、どこまでも慈しみの心に満ちていた。

 ……いや、それは、気がつけばエルさんだけではなかった。

 瞬間、無言のまま、あたしに向けての大きな〝拍手〟が部屋中に鳴り響いていたのだ。

 見れば……ファナと霊王さまは満面の笑顔で、それ以外の人たちの表情は、まるでエルさんの表情をそのまま映し出したかのような、とても…とても……優しさにあふれた……そんな、切ない表情だった。

 刹那、あたしは理解する。

 〝これ〟はもう、どうしようもないのだと。

 ファナに託したあたしの、自己責任であるのだと……。


 ――この日、あたしの力の名前は、〝鳳仙花(以下略)〟、と正式に決定した。


「――さてと、では次にファナとシーダの力名じゃが……」

「「「「「「「――えっ!?!」」」」」」」


★★★★★★★★★★





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