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「――コンニチワ!!」

「――ひっ!! きゃあああああっっ!!???」


 バチーン!! 「おほうっ! ナイスビンタ!」


 ドサァ! ――仮面のカーテンはそんな不気味な声を上げ、地面に倒れ込んでしまった。

 だけど、「え!? 何!?」とあたしはそれどころではない。

 思わず、つい、とっさに、気持ち悪くて、気持ち悪くて、気持ち悪くて! あたしの大変危険な力を持つ手の平で叩いてしまい、慌ててあたしはその手の平を後ろに隠したけれど……運が良かった…のだろうか? そのカーテンは仮面をつけていたおかげで爆発だけは免れたようだ。倒れ込んだ先の地面で、くねくね、さらにさらに気持ち悪く胴体(?)を動かし、そこから伸びた手であたしの叩いた箇所をなで回していた。

「何これ!! 気持ち悪い!! ここにはこんな〝化け物〟まで住んでるの!?」


「――確かに気持ち悪いが……安心せい。そやつも〝神族〟……人じゃ」


 ――何の前触れもなく、辺りに唐突に響き渡ったのは、そんな、ほんの少しだけ幼さを残した女の子の声だった。

 あたしは、え? え? と当然辺りを見渡してその姿を捜したけれど、どこにもその声の主は見当たらない。

 ――だけど、

「「――霊王さま!」」

 どうやらファナたちは声の主の正体を知っているようだった。それを聞いて、カーテンが倒れたおかげで姿が見えるようになったファナたちは叫んだ。

 瞬間、だった。

「――やれやれ……〝デス〟よ。お前も相当じゃのぅ? 〝宝具同魂の儀〟はとっくの昔に完了しているとはいえ、一歩間違えば身体が粉々に吹っ飛んでおったのじゃぞ?」

「――!?!」

 また、だ。また、何の前触れもなく、しかし今度は、ぱっ、と唐突に、その子はあたしの目の前に姿を現した。

 花でできた冠に、薄い緑色のドレス……腰まで伸びたきれいな金の髪色から、一瞬神族? かと思ったけれど、その細長い耳の形を見てすぐに違う、とあたしは断言することができた。

 ――〝精霊族〟……何度かお母さんに聞いたことがある。

 〝人の形〟をしている精霊族の者の一番の特徴は、その他の種族と比べると明らかに細く長い耳の形で、寿命が極めて長いその人たちの年齢は、成人とされる二十歳をすぎた時点で限りなく年を取るスピードが遅くなり、見た目だけでは絶対に年齢が判断できなくなる……とのことだ。

 〝霊王〟さまと呼ばれたこの女の子場合は、明らかにまだ成人を迎えてはいない。そのため年齢は見た目どおり、あたしと同じ十三歳ほどだということは確かなのだろうけれど……あの真ん丸に張ったお腹はいったい何なのだろうか? あれも、精霊族の特徴なのだろうか?

 ――って! いやいや、そんなことを考えている場合じゃない……この女の子が自称魔王が言っていた〝王〟さまごっこの遊び相手、自称霊王か!

 ……何か、その身に纏ういかにも貴族っぽい高貴な雰囲気から、とてもそんなごっこ遊びをするようには見えないけれど……まぁ、見た目と性格は違うからな。

 そんなことを考えながらも、ジリリ、と気づかれない程度に自称霊王からほんの少しだけ離れたあたしは、同じく気づかれないように身構えた。

 ――その時だった。

「いやぁ! 〝リムル〟さん! あのビンタ! 素晴らしかったですぞ~!!」

「ひぃ!!?」

 突然、自称霊王に〝デス〟と呼ばれていたカーテンが起き上がり、あたしに飛びかかってきたのだ。

 その瞬間あたしは今度は拳を握りしめ、「この〝変態〟!!」という言葉と共に〝グーパンチ〟を繰り出した――けれど、

 パシッ!

 なんと、カーテンはそれを、カーテンの隙間から出してきた白い手袋をはめた〝手〟で、受け止めてしまったのだ。

 そして、あたしの耳元で、こう…ささやいた。

「……〝グー〟はダメです。下品で、何の面白味もない……だから、〝ビンタ〟でお願いします。〝ビンタ〟であれば、私はあなたの〝愛〟を感じることができますので……!!」

「ひいぃぃぃぃッッ!!!!!」

 ゾゾゾゾゾ!!!!!! あたしの全身に一気に悪寒が走って行った。

 ダメだ、こいつ! 〝本物〟だ! 〝本物〟の〝変態〟だ!!!!!

 それを直感したあたしはすぐに逃げようとした――が、〝変態〟はがっしりと、あたしの拳を掴んだまま離してはくれない……どころか、

「――さぁ! 〝リムル〟さん! 私に〝愛〟を!! 〝愛〟を〝愛〟を〝愛〟を!!!!!」

「いやあああああああぁぁぁーーーっっっ!!!!! 助けてーーーッッ!!!!!!!!」





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