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3-7




 なるほど……今日何度目かの納得をした私は、だけどその瞬間、また新たな疑問がわいてきてしまった。それは――

「――あの、ところで霊王さま? じゃあ、その〝予言の子〟の……私とシーダとエルさん以外の残り〝二人〟って……どんな人たちなんですか?」

 ――そう。自分たちと同じ、〝予言〟によってここに導かれた人たちのことだ。……いったい、どんな人たちなのだろう?

「おお、そのことか」

 頷いた霊王さまは、よいしょ、となぜか椅子から立ち上がって、お腹をなでながら話した。

「紹介しよう。妾の娘にして〝四番目〟の〝予言の子〟……〝エインセル・クレナディール〟――〝次代の霊王〟じゃ」

 ええっ!? 驚きのあまり、私は思わず声を上げてしまった。

「よ…〝予言の子〟の一人って……霊王さまの子ども……赤ちゃんのことだったんですか!?」

「うむ。四番目の〝予言〟の一文にはこうあってな……『〝王〟より生まれし者。その絶大なる御手の力で〝全て〟を呑み込まん』――ほれ、ここに〝王〟より生まれし、とあるじゃろ? 神界や魔界、それに冥界の者は人間や妾たちとは違い、腹に子を宿して生む、などということはできん。全て〝始まりの樹〟である〝ユグドラシルの実〟より生まれ、そこから里親という形で各家庭に迎えられる……人間界に〝王〟がいない現在、つまり〝王〟より生まれることができるのは、霊王たる妾の娘にしか他有り得ん、ということなのじゃ」

「へー……じゃあ、もう一人は誰なの?」

 弟が聞いた。

 これにも霊王さまはすぐに答えて……と思ったら、しかしなぜだか今度は、顔を曇らせてしまった。……いったい、どうしたのだろうか?

 実はな……と霊王さまはため息混じりに、椅子に座り直して話した。

「それが、まだ見つかっておらんのじゃ」

「え? 見つかってないの?」

「うむ。一番目がエル。三番目がお前たち。で、まだ生まれていない妾の子が四番目……そのことから、どうやらこの〝予言〟の順番は、年齢の順だということが推測できる。それを考えると二番目であるこの〝予言の子〟はもうとっくに生まれていると思われるのじゃが……これが、どうにも見つからんのじゃ。いやはや本当に、いったいどこにおるんじゃか……」

「――け…ケケケケケ……」

 ――と、その時だった。

 霊王さまがもう一度ため息をついたその瞬間、魔王さまが突然、変な笑い声を上げ始めたのだ。

 それにはまた、当然……

「――遂にイカレたか……おい、エル。こいつうるせぇから処刑場まで連れてって首ハネとけ。絶対に生かして帰すな」

「――いや、待て神王。妾たちは首をハネても死なんぞ? ここは音が漏れんような牢屋に閉じ込めてじゃな……」

「――うるせーぞテメーら! 俺様をいったい何だと思ってやがる!!」

「「……」」

 神王さまと霊王さまは無表情に一度顔を見合わせて、それから魔王さまの方を向いて同時に答えた。

「「バカ?」」

「――よし、分かった。もういい。今にその言葉後悔させてやる!」

 ほぅ? と言うと? 霊王さまが聞くと、魔王さまは突然、パン! パン! パン! と大きな音を立てて手を三回叩いた。

 ――すると、瞬間魔王さまの背後に真っ黒い煙に包まれた木製の〝扉〟が現れ、ギィィ、という音と共にそれはゆっくりと開き始めた。

 そこから出てきたのは……〝棺〟??? あの、死んだ人をお墓に埋める時に使う、煙の色と同じ、真っ黒な棺だった。

 ただし、その棺には〝鎖〟がいっぱい巻かれていて……何だか、見るからにすっごい怪しげな、不気味な雰囲気を漂わせている。

 ケケケ! それを手で、バンバン、叩きながら、高らかに笑った魔王さまはそのまま大声で話した。

「テメーらこれが何だか分かるか!! 驚くぞ!? 聞いたら、絶対! 驚くぞ!?」

「えっ!?」

 ひつぎ……棺、じゃないの、これ!? だったらいったい……???

「おお!? こいつはすごいな!」

 と、私がそんなことを思っていると、それを見た神王さまがすぐに声を上げた。

「〝自分が入る〟棺を先んじて用意してるたぁ、見直したぞ魔王! バカなんて言って悪かったな……どれ、さっそく入れてやるよ?」

「……神王、事が済んだら意地でもテメーをこの棺ん中に詰めてやる……」

 あ、やっぱり棺なんだ……ほっ……私はそれに安心してため息をついた。

 ……あれ? でも、それなら何で魔王さまは、この棺のことを……???

 やれやれ…といった具合にため息をついた魔王さまは、気を取り直してすぐに話し始めた。

「――聞いて驚け! 実はな…この棺の中には、今話していた〝二番目〟の〝予言の子〟が入ってるんだよ!!」

「何じゃと!?」――誰よりも早く、真っ先に声を上げたのは霊王さまだった。そのまま続ける。

「どういうことじゃ魔王!? まさかお前、見つけたのか!? 〝獣が奏でし却火の爪〟を!?」

「おうともよ!!」

 魔王さまははっきりと答えた。

「今は人の姿に〝戻ってる〟が、その獣のナンタラで間違いねぇよ! 〝捕まえた時〟はちゃんとでっかい獣だったらしいからな!」

「戻ってる……捕まえた時は…じゃと!? いったいどういうことじゃ!? ちゃんと説明せぃ!」





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