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❤❤❤❤❤


「――後に、妾たちはこの男のことを……今までどこにいたのかも分からぬ、まるで〝誰か〟の手によって秘密裏に、計画的に隠されていたように感じたことから、〝秘されし世界の王〟……〝秘王〟と呼ぶようになり、今日に至るまでのおよそ千年間、〝秘王の封印〟を護り続け、世界の平和は保たれ続けてきた――と、そういうわけじゃ。まぁ、もっとも、その封印に全力を…〝魂そのもの〟を注いだせいで、一人の尊き〝友〟の命が失われ、残った妾たちも妾たちで、なぜだかこんな子どもの姿に成り果ててしまったのじゃが、の……」

 ――以上が、妾たちの昔話じゃ。そうまるでため息をつくように言った霊王さまは、一度大きく深呼吸をしてから話した。

「……何はともあれ、〝本命〟とはつまりこのことじゃ。妾たちは確かに〝秘王〟を封印することには成功したものの、それでも精いっぱいやってできたのはただのそれだけじゃ。本来の目的であるやつの〝完全なる消滅〟を未だに果たせていない状態にある……だからこそ、妾たちは真に平和な世界を取り戻すために、この千年間あらゆる可能性を模索し、遂には〝予言〟などという不明確な手法にも頼り、お前たちのような〝特異な力〟を持つ者を集めてはそれを研究していると……そういうわけなんじゃ」

「……なるほど、そんなことが……」

 呟いてから私は、チラリ、と横目だけで弟の方を見てみると……同時に弟も私の方を向いた。

 ……どうやら、などと言うまでもなく、弟もその話には納得したようだった。

 だからこそ、私はすぐに答えた。

「――わかりました! そういうことなら、喜んで協力します。私たちにできることがあったら、何でも言ってください!」

「……そうか。恩に着る」

 ニコ、霊王さまは優しく微笑んだ。それを見て、つられて私たちも笑顔になる。

 ――と、その時だった。ポン、と何かを思い出したかのように手を叩いた霊王さまは、慌てて私たちに聞いてきた。

「――おっと! そうじゃそうじゃ! ところでお前ら、妾の話で何か分からぬことはなかったか? 質問があれば、できるだけお前らにも分かるよう説明するぞ?」

「え? 質問、ですか……?」

 むぅ……私は唸った。だって、分からないことがかなりいっぱいあって、それを全部質問してたらもう、日が暮れてしまいそうだったのだ。

 ……仕方がない。ここはもう、とりあえず一番気になることだけを質問しておこう。

 そう思った私は、頭の中で気になることをまとめてから、霊王さまに聞いた。

「えと……じゃあ聞きたいんですけど、その〝秘王〟と戦った〝王〟さまは、全員で四人だったんですよね? 封印に力を使ったせいで命を失った、ってさっきは言ってましたけど、霊王さまと神王さまと魔王さま……あと一人は、何族の〝王〟さまだったんですか?」

「ん? ああ、なるほどそのことか……しかし、ファナとやら、お前だいぶ説明が面倒なところを質問してくるな……」

「えっ!? あ! ご、ごめんなさい! めんどくさいのなら、じゃあ、違う質問に……」

 いやいや、首を横に振ってから霊王さまは続けた。

「すまんすまん、勘違いをさせてしまったな。…そうではなく、面倒というのは、説明が難しいというだけで、べつに説明するのが面倒臭いというわけではないんじゃ。ただの……まぁ、物は試しじゃ。とりあえずは聞いてみてくれるか?」

「あ、はい…じゃあ……」

「うむ。では説明するが……四人目の〝王〟の名は、〝冥王・ハーデス〟。生者が死後、必ずそこをとおるとされる、〝死者の国・冥界〟の〝王〟じゃ」

「え!? 〝死者の国〟の〝王〟さま!? ――って! も、もしかして……その人はおばけ……」

「……あー……まぁ、確かに性格はおばけみたいに暗いやつじゃったがの? しかし、残念じゃがやつは〝不死者族〟…人間で言うところの所謂おばけではない。そこにいる神王やエルと同じ、〝神族〟の者じゃ」

「えっ…? 〝神族〟の人……??? 違う世界の〝王〟さまなのに?」

 弟が聞くと、「う…うむ」と困ったような顔をして霊王さまは話した。

「これが〝面倒〟と言った理由になるんじゃが……あー、つまりはじゃな? お前たちが考えているとおり、本来なら冥界の〝王〟に相応しいのは最初から冥界に住んでいる〝不死者族〟の者、ということになるんじゃが……残念ながらやつらは元々、〝魂のみ〟の存在で、肉体を持ってはいなかったのじゃ。しかも、それ故なのかは知らんが、とにかく自我がほとんどなく、確かに強い〝マナ〟を持っておる者も何人かはいたのじゃが……そいつらと何か話してみようにも文字どおり聞く耳持たず、とても会話には……いや、どころか、試しに肉体を与えてみたところ、それ以前にいきなり襲いかかってくる始末じゃったのじゃ。――で、それではいかんじゃろう、ということで、すでに〝王〟として世界を治めていた妾たち三人の〝王〟が話し合い、いずれかの種族の者が代表として冥界の〝王〟になり、正しくそこを治めようではないか、ということになったのじゃ。……が、何分冥界はとても人が住めるような場所ではなかったし、いくら何でも造れる〝宝具〟があるとはいえ、魔界と同じように元からその世界にあるような物を造り変えてしまっては、その世界が崩壊しかねない……ということで、結局何もできんようなその世界の〝王〟に好き好んでなりたい者など誰もおらんかったのじゃ。……えーと、それでじゃな――」

「――あー、つまりだな、その最悪な世界の〝王〟になった〝お人好し〟が、俺の世界にいた神兵の兵士長、ハーデスってやつだったんだよ」

「……というわけじゃ」

「………………」

 ……ちゃんと説明してくれた霊王さまたちには悪いけど……聞かなければよかった、と思ってしまった。何だか聞いたら逆に、頭の中がこんがらがっちゃった……。




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