十五章:「たしか何処かの国で成功したんだっけ……」
放課後、桐に連れられやって来たのは誰もいない旧校舎。
20年前から放置されているがあまり目立った破損部分もなく掃除すればまだ使えると思う。
よっぽど聞かれたくない話なのか旧校舎の中まで入っていき元々は保健室だった部屋に入っていく。
中は意外にも綺麗で人が使っている形跡が所々ある。
おそらく桐が掃除したのかもしれない。
「そこに椅子あるから座れよ」
「分かったけど梢さんは?」
「姉貴は先に帰った」
あまりにも意外過ぎる答えに目を丸くするが、彼の苛立ちをはらんだ怒りの表情を見ると納得する。
先に帰したくはなかったが“最上司”に何かしら言われ先に帰さざるおえなかったのだろう。
そこまで考えて僕は不思議に思う。
梢さんを先に帰らせてまで僕に話したいことなど彼のなかには存在するのだろうか?
答えは“ある”。
梢さんに関することだ。
「……姉貴から俺らが“デザインチャイルド”って聞いたと思う」
いきなり本題に入る桐。
「“知らない”って言っても意味ないよね?」
「まぁな」
僕の冗談に桐は苦笑する。
だけど次の時には真面目な表情を浮かべている。
「俺ら双子は数少ない成功例で“最上司”に重宝されたんだ
自分の研究を裏付ける存在だからと言うこともあるが、一番の理由は母さんだ」
「4年前に亡くなった人だよね?」
僕の言葉に桐は静かに頷く。
「母さんが亡くなってから“最上司”に引き取られたんだが……あいつの姉貴に対する依存は異常なまでにヤバイ」
そう言って桐が一枚の写真を僕に差し出す。
僕は躊躇いもなく受け取り、そして目を通して……
絶句する。
写っていたのは幼い桐と梢さん。
そして、夜色の髪と瞳を持った……
梢さんに似すぎている女性だった。
桐は重い口を開く。
「“最上司”は母さんによく似た……いや、死んだ母さんの若かりし頃の姉貴を匿うが如く依存している
最初はただ研究者としての名誉が欲しいが為に俺たち双子を造り出したが、今は違う
音樹は“クローン羊”を知っているか?」
「たしか何処かの国で成功したんだっけ……」
そこまで言ってから僕は恐ろしい事を柄にもなく想像してしまった。
凡人の僕らしくない、非平凡的な考えを……。
だけどそれは桐のヒントにより確定している。
誰かに否定して欲しい気持ちで僕は言葉にする。
「まさかだけど……桐たちのお母さんを“造る”気?」
思いのほか言葉は震えずに出たが桐は否定しない。
それすなわち“肯定”だ。
桐は少し躊躇うが隠してもムダだと思うと深いため息をついてから僕を見る。
「より正確に言えば“違う”が大まかに言えば“正解”だ
だが“クローン”の寿命はかなり短い」
「……ごめん、桐
僕は凡人で乏しい想像力しかないから取り間違えているかもしれない
“最上司”が造りだそうとしているのは桐たちのお母さんによく似た“才能”を持った子なわけないよね……?」
「……」
僕の言葉に桐は答えない。
ただ彼らしくない哀しげな微笑みを浮かべるだけだった。
遅くなってすみません!
しかも話が滅茶苦茶で申し訳ありません!
簡単に説明すると“最上司”が双子を造り出したのは“研究者としての名誉”のためです。
しかし、双子のお母さんが双子を連れて逃げ出し死んだと分かると“デザインチャイルド”を造るのではなく、双子のお母さんを造ろうとします。
ですが“クローン”の寿命は短い、そこで“最上司”は双子のお母さんによく似た“才能”を持つ“デザインチャイルド”を作成している……と、言う感じです。
一番外見が近い梢は可愛がられており、数少ない成功例として桐は重宝されているのが現状です。




