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神様にお任せ!!  作者: 砂之寒天


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30/106

悪夢の神ポペードール※怖くないよ!

 シュナは、坂道を下りながら必死に走る。疲れなんて神になってから感じたことないのに、息は切れるし足も疲れた。

 後ろからは大きな鉄球が追ってくる。早く走らないと、下敷きにされてしまう。


「あっ」


 足元にあった小石につまづき、転けてしまう。膝が痛い、擦りむいたか。後ろを見れば、迫り来る鉄球。


「やだー!!!」


 半泣きでそう叫ぶ。鉄球が体にぶつかる瞬間…


「はっ!はぁ、はぁ、はぁ」


 夢から目が覚める。息は切れていて、冷や汗もかいている。一部機能は人間に寄せてあるので、汗もかけるのだ。ありもしない心臓がバクバクとしている感覚がした。


「ゆ、夢か。なんだ…」


 安心する。しかしもう眠りにつく気分ではなくなった。扉を開け、リビングに行く。


 深夜なのに、明かりがついていた。リビングには、薄らと隈を作った眠そうなメアリーが。


「あ、お嬢様なのです〜…こんばんは」

「こんばんは。どうしたの?」

「怖い夢を見るのです。眠るのが怖いのです」


 暗い表情のメアリー。可哀想であった。


「偶然だね。私も怖い夢見たの。眠る気にならなくってさ」

「同じなのです。ここ1週間くらい、怖い夢を見続けるのです」

「ほんと?私もだよ。なんか可笑しいね」


 なにか原因があるのだろうか?サタナに聞いてみた。


『神に悪戯されている様です』


「神から悪戯??」

「え、そうなのです?」


『悪夢の神、ポペードールの仕業です』


「なんか、ポペードールって悪夢の神に悪戯されてるんだって。気付かなかったよ」

「最悪なのです!お礼参りに行くのです」

「うん。行こうか、お礼参り」


 ということで天界に来た。


 まずは遊空殿で、アンさんに挨拶しに来た。一応神にカチコミしに行くので、アンさんにも報告しておこうと思ったのだ。


「ポペードールに会うじゃと?あやつ性格の癖強いからの…まぁいいかの」


 ちょっと難色を示されたが、OKらしい。これで堂々と行ける。


「位置はまぁ自分でも分かるかと思うがの、一応今見たらここの城にいるみたいじゃ。」


 アンは部下の位置が分かる能力を持っている。

 地図で大きな城を示される。それは天界の西の端にあるようだ。


「ありがとう。行ってくるね」

「あぁ、気をつけて行ってこい」


 転移門で城まで転移した。流石に広い天界を歩くのは面倒臭い。


 城の門を叩く。


「ポペードールさーん、居ますかー!」

「はいはい、なによ私がポペードールよ」


 中から身長の小さい白菫色と淡藤色の髪をした少女が出てきた。目は桔梗紫色である。ちょっと面倒くさそうに出てきた。


「シュナです。私に悪夢見せてますよね?」

「げ、シュナ!何よアンタ、カチコミに来たの!?」

「メアリーもいるのです。お陰様で寝不足なのです。一発殴らせろなのです」

「嫌なこーった!べろべろべー」


 ガッ


 メアリーがポペードールを殴った。メアリーは少し手が出るのが早い。


「腹立つのです」

「いった…何すんのよ!!もう怒った!悪夢を見ろ(ショウ・ナイトメア)!」


 ポペードールも沸点が低かった。

 ポペードールがそう言った瞬間、私達は幻覚に襲われた。


 大量の虫が周りから集まってきて私の体をよじ登る。


「きゃはははは!ざーこざーこ!」


 ポペードールは煽る。


 (うわ、これ、)


「やだーっ!!」

『ブロックします』


 一気に悪夢から覚めるシュナ。


「嫌なのですー!!キャー!!」


 体から何かを払うような仕草をするメアリー。顔が青い。


「メアリー!」

『メアリーもブロックします』

「はっ、気持ち悪かったのです…」


 正気に戻ったらしい。良かった。


「えっなんで?なんで無効化出来るの!?」


 ポペードールは焦った様子だ。目に見えて狼狽えていた。


「私全知全能の神だもん」

「それでも可笑しいわよ!私の方が位高いはずなのに!」

「関係あるの?」

「関係あるわよ!序列が上な程能力も強くなるのよ。それだけ強いとなると、高尚ポイントいっぱい貯めたんでしょ!」

「高尚ポイントってなに?」

「あんた何も知らないのね。まぁいいわ、教えてあげるわよ。神や天使は、基本は年功や能力の強さによって位が決まる。それに加えて、高尚ポイントっていう制度に則って進化するのよ。高尚ポイントは、人助けによって溜まる」


 知らなかった。この子供みたいな神様も先輩なのだな、とシュナは思った。


 宗教によって人の心を救いまくって、仕事もちゃんとこなしていて、全知全能。そんなシュナは、神としての序列がまぁまぁ上なのだ。


「そうなんだ。私ルツェルンとシュウィーツの国教みたいな宗教やってるから、それで貯まったのかも」

「はぁ!?国教!?そんな人間界で有名な神に勝てるわけないじゃん!しかも全知全能だし。あんたふざけてんの!?」


 凄い驚かれた。


「神の大概は自分勝手で人助けなんかに興味無いから、高尚ポイントって殆どあってないような制度なのよ」

「へぇー。というか、なんで悪夢見せたの?迷惑だからやめて欲しいんだけど」

「…ちょっと遊び相手が欲しかっただけよ。それに、アンタ最近人間界で調子乗ってるらしいじゃない?それで意地悪したの。宗教やってるのは知ってたけど、まさか国教レベルで有名だなんて。しくったわ」


 いじけた様子だ。靴で地面を蹴っていた。


「それに!大体あんたなんなのよー!新人なのに自己紹介もしに来ないじゃない!自己紹介しなさいよ!新人は神集めて会開いて自己紹介すんのよ!」


 一気にテンションを上げて反撃してくるポペードール。

 なにぃ!?シュナは雷が落ちたような衝撃を受けた。そんな話、聞いてなかった。今まで先神(せんじん)の神々には無意識に無礼を働いていたことになるのか。

 聞いた事がないのもそのはず、実際そんな文化はない。神がいちいち挨拶にくるなんて、正直面倒なのである。ポペードールの口から出任せであった。

 しかしシュナは騙されてしまった。ポペードールの口から出任せによって、前代未聞の、新神(しんじん)シュナによる神集会が開かれることとなるのだ。


「じゃあ今度集会開こうかな。ポペードールも来てね」

「えぇ、そうしなさい!行ってあげるから」

「あとさ、遊び相手欲しいならなるよ?友達!」

「えっ…なに!アンタ良い奴じゃん!見直したわよ!何かあったら言いなさいよ!力になってあげるわ!」


 えっチョロ…?ちょっと引いた。


「え、ありがとう…」

「アンタの家遊びに行ってもいい?」

「いいよ。いつでも遊びに来なよ!」

「お茶くらいなら出すのです」

「わーい!やっぱ良い奴じゃない!」


 ということで、一緒に家に戻った。


〜〜~


 家に帰った。既に起きていた悪魔の皆に、事情を説明し、ポペードールを紹介する。


「悪魔達じゃない」

「まぁ部下だから…皆良い人だよ」

「別に心配してないわよ…私は悪魔って悪いやつだと思ってないし」


 そうなのか。その辺の認識は個神差がありそうだ。


「そういえば、なんで悪魔達には悪戯しなかったの?」

「世界さんに似てるからよ。魔王とか四天王って、どうにも似てるのよね」

「世界さんって誰?」

「地獄の王様よ。黒の神の最下層を担う、トップオブトップ。黒の神と天使は住む階層が低いほど高位なの。知らないだろうから教えてあげるけど、神はその素質によって、黒か白に分けられるのよ。」

「そうなんだ。私はどっちかな?」

「白でしょうね。優しさで人を助けるのは白の神の性質だわ」

「そっか」


「話を続けるわよ。黒の神と天使は悪魔達と似てるけど、悪魔とは違う。悪魔は魔界に住んでいて、黒の神や天使は地獄に住む。優しさだけじゃ天界は統治されない、畏怖を持ってして下から支えるとしたのが世界さん。その畏怖によって地獄を統べているの」


 知らないことばかりである。


「世界さんの本名は世元界司(よもとかいし)。同僚に麗子さんと白越さん、それからアンさんがいるわ。麗子さんと白越さんは両色類で、黒と白両方の性質を持っている。バランスよく天界を統べているの。ゼウスさんも最高神の一柱だけど、創造神じゃないから同僚ではないわね」

「日本人なの?」

「世界を作った後、1度転生して日本人として生きたらしいわ。そこで麗子さんと結婚したそうよ。世界さんの部下の神々も、世界さんに日本語で名前を付けてもらった人が何人かいるわよ」

「そうなんだ。ありがとう、ポペードール」

「ま、新神に師事してあげるのも先輩の役目かなと思ったのよ」


 なんだかんだ頼りになる子供である。


「ところで、メアリーが一発殴っただけなんですか?あれ程不眠に悩まされていたのに」


 アリトンが不思議そうに聞く。


「しかも友達になってきたのかよ」


 オリエンスは少し呆れ気味だ。


「我が主は優しすぎるな」

「確かに、ちょっと甘いわね。もうちょっとこってり絞ってもいい気がするわ」

「えぇー!?そんなことないよー、厳しくしてるよ、多分。でしょ?アスモデウス!」

「いえ…確かにシュナ様は優しすぎる気がしますね。アルマロスの時もそうでしたが」

「えー!アスモデウスまでそんなこと言う」

「ちょっと!!厳しくされたら困るからそういうこと言うのやめなさいよ!!」

「もうちょっと殴るのです?」


 ポペードールは焦る。シュナはぶすくれて、ほっぺを膨らませる。悪魔達にはそんなシュナが可愛らしく映った。


「ぶふっ」


 オリエンスは吹き出してしまう。


「き、機嫌直してください、主様」


 アリトンが慰める。


「別にいいけどさー。メアリーちゃん、殴んないでね。一応友達になったし」

「分かったのです」


 メアリーは頷いた。


「ま、挨拶も済んだし、帰るわね。じゃ!」

「うん、またね」


 ポペードールは城に帰った。

 シュナは友達が1人増えたのであった。

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