レガシー③
吹き飛ばされたレガシーは何事も無かったように体を起こす。
「俺でなければ、効いていただろうな」
レガシーは手元に巨大な黒い鎌を生み出す。その研ぎ澄まされた刃は、目の肥えていない英斗でもその素晴らしさが理解できた。
レガシーはまたも動作を感じさせない滑らかな動きで英斗に迫ると、英斗の首に鎌を振り下ろす。
英斗も獄炎刀でその一撃を受け止める。
「死の抱擁」
再びレガシーの体から黒い煙が放出される。その危険度を知っている英斗はすぐさま距離を取る。
「逃がさんぞ、英斗。しばし乱舞を楽しもう」
レガシーは逃がすつもりもないようで、英斗に襲い掛かる。問題は体中から噴き出している黒煙である。至近距離では避けようもない。
英斗はとっさに体中に神力を纏わせた。危険を感じた英斗の本能が神力を発動させたと言えるだろう。
どうやら黒煙は神力を越えてまで英斗を骨にすることはないようだ。
「神力か。いつまでもつかな」
レガシーはどうやら死の抱擁を纏いつつも接近戦に切り替えたらしい。その判断は非常に正しい。体中から致死性の猛毒が常時分泌されているような物である。どんな生物も裸で逃げ出すだろう。
英斗も自分の置かれた状況を理解したのか、獄炎刀を振るい、レガシーの首を狙う。だが、レガシーは鎌使いも中々のもので激しい剣戟の音が響き渡るだけである。
「素晴らしい逸品だな。我がサイズはL級の神器なのだが、全く負けておらぬ」
「どうも。自慢の逸品でね。あんたもその見た目で接近戦もいけるとは」
「普段は我が一撃で皆死ぬので、披露する機会はないんだがな。感謝している」
レガシーはそう言うと、大鎌で英斗を水平に薙ぎ払った。
英斗は吹き飛ばされ大きく後退する。
(駄目だ。接近戦で長時間戦うと神力が持たない! 一気に決める!)
英斗の全身から魔力が溢れ出る。それを見たレガシーは、英斗が勝負を決めに来たことを感じ取る。
「この戦いを終わらせよう。弾幕合奏」
英斗のその言葉と共に、英斗の背後には百を超えるミサイルが浮かび上がる。これだけの数があれば、一つの都市を更地にすることも可能だろう。
英斗はそして握っている獄炎刀に輝かんばかりに神力を流し込む。ミサイルでレガシーの手を全て潰し、その首を討ち取る計画である。
レガシーは鎌を消し、先ほどとは違うスタッフを握る。
「いきなり、クライマックスか。もっと戦ってて見たかったが。生と死の屍門」
目の前に巨大な門が現れる。その門には悪魔や屍者の意匠が刻まれており禍々しい雰囲気を醸し出している。観音開きのその門が独りでに開くと、その中から夥しい数の怨霊が放たれる。
英斗のミサイルが一斉に発射される。全てのミサイルがレガシーに向いており、怨霊に着弾し爆ぜる。門から生まれる怨霊達が出た瞬間にミサイルの弾幕により爆散している。徐々に増えていくその弾幕に生まれる怨霊が少しずつ間に合わなくなっていく。
少しずつ押されていっているのをレガシーは感じていた。
(出力が足りない……! このままじゃ破られる。エルメロイスタッフがないせいか! あの女、やってくれる!)
レガシーは手に持っているスタッフを強く握り締める。
そして、遂に英斗のミサイルが門に直撃し、粉砕する。ミサイルはまだまだ残っている。ミサイルはレガシーに向かって大量に放たれ、レガシーを周囲ごと火の海にした。
(勝機!)
英斗はレガシーに向かって一気に距離を詰める。神力がこもってないため再生はするだろうが、一瞬の隙は生まれる。
英斗は、粉々になり再生中のレガシーを、その刃の間合いにまで入り込んだ。
「貰ったあああ!」
英斗がその刃を大きく振り上げると、横から襲い掛かる姿があった。
「レガシー様に何をしている!」
それは幹部がしゃどくろであった。その巨大な両腕をレガシーを守るように伸ばして二人の間に割り込んだ。
(なっ!? 奴ごと斬るか? だが、こいつを殺せてもレガシーにまで届くか? ここで逃げられたら全てが無駄になる!)
英斗は一瞬で様々なことを考える。その英斗の視線を通り、がしゃどくろの両腕にいくつもの銃弾が刺さる。
その弾丸はがしゃどくろの腕に触れると、大爆発を起こした。それにより、がしゃどくろの両腕が一瞬吹き飛んだ。
それにより、英斗とレガシーを遮るものは何もなくなった。
英斗が銃弾の飛んできた先を見つめるとそこにはかつて村で会ったシゲ爺の姿があった。
「英斗さん! この九州を救ってくれい!」
シゲ爺は叫ぶ。
英斗はその叫びを背に、獄炎刀をレガシーに振り下ろす。
「緋炎・焔天」
その美しい一刀は、レガシーの体を両断した。
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