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織也VSレイモンド

 英斗のレガシーの戦闘場所から少し離れた所では、周囲が全て平になった平地に織也が立っている。すぐ傍には、底が見えない程深い大穴が空いている。


「これであのデカブツも、しばらくは戻ってこれない……はず」


 織也は相当の大技を使ったのか、小さく汗をかいている。がしゃどくろはどうやら地下深くに沈められたらしい。

 そして織也は気付いていた。自分の元に何かが向かっていることに。そしてその者が尋常ではない魔力を持っていることにも。


 織也の目が捕えたのは、紫がかった黒い肌をした美丈夫である。綺麗な切れ目に鼻筋の通った恐ろしく整った容姿。ただし、冷たい目をしていた。


「お前が、大阪ダンジョンタワーを踏破した者か?」


「……そうだ」


「俺の名はレイモンド。別に覚えなくてもいい。すぐに終わるからな」


 その言葉と同時に、レイモンドは一気に距離を詰める。そして、鋭い抜き手を放つ。織也はぎりぎりのところでその一撃を躱し、距離を取る。


重力場(グラビティスクエア)二十倍(ツヴァンツィヒマール)


 レイモンドは本能で危険を感じ取り、距離をとった。レイモンドが居た場所が見えない何かに潰された。


「重力を操るスキルか? 人には過ぎた力だ」


 レイモンドは長い長髪を靡かせながら、織也の重力場を躱しながら距離を詰める。


「俺相手に接近戦は……愚かだ」


 織也の重力場(グラビティスクエア)は織屋の指定した場所に重力場を生み出す技である。その範囲は自由に変更可能で、最大の場合、本人から半径100メートル程度なら全て範囲となる。普段は魔力の節約のために範囲を絞ってはいるが。

 レイモンドの速度は素晴らしいものではあったが、重力場を完全に躱すことは難しかった。


重力場(グラビティスクエア)二十倍(ツヴァンツィヒマール)


 遂にレイモンドが重力場に捉えられる。彼に凄まじい重力が襲い掛かる。常人なら一瞬でミンチになる重力だ。だが、彼は人ではない。

 体を軋ませながらも前進する。


 その前進に、織也は僅かに目を細めた。

 そのままレイモンドは重力に耐え、織也に蹴りを叩きこむ。織也は手で受け止めるものの、そのまま吹き飛ばされる。


 それにより、重力場が解除された。するとレイモンドは手に魔力を込め織也に向け翳す。


引力(アトラクション)


 吹き飛んでいた織也の体が、レイモンドに引き寄せられる。


「なっ!?」


 自分の体が謎の動きをすることに、織也は驚きを隠せない。レイモンドは手に引き寄せられた織也の腹部に蹴りを叩きこんだ。

 骨が砕ける鈍い音が鳴り響く。


「ガハッ!」


 織也は血を吐き、そのまま地面に叩き付けられる。織也はすぐさま立ち上がり、頭を働かされる。


(さきほど蹴りを受けた手が引っ張られる感覚があった。おそらくその際に引っ張る力を何か付与されたのか?)


 織也は腹部にポーションをかけつつ、思考する。


「俺のスキルが何か考えているのか? すぐに分かるさ」


 レイモンドの言葉と同時に、そこら中に散らばっている大小様々な鉄筋が浮かび上がり、織也に一斉に襲い掛かる。


「磁力か……!」


 織也は叫びつつも、重力場を展開し、襲い掛かる鉄筋を全て地面に沈める。


「少し似ているな……力が」


 レイモンドはその隙に巨木のような鉄筋に磁力を付与する。その鉄筋が恐るべき速さで織也に襲い掛かった。

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