英雄の帰還
翌日、英斗達は朝から福岡に向かう。英斗はどこかから謎の視線を感じるも、死王の偵察だと考え、身を隠すのを諦める。
「間にあって……る、かは微妙だな」
英斗が福岡に辿り着いた時には既に福岡市は戦場となっていた。まだ人間側は陥落していないようだが、少し押されていた。
「もう終わりだーー! 逃げろー!」
「どこに逃げるってんだ! 前を見て戦え!」
「人間側の誇りを見せろ!」
「何しても殺せない、死王にいったいどうやって戦えばいいんだよ……」
逃げる者や、戦う者、様々な人間が入り混じり軽いパニックになっている。だが、あらかじめ死王が襲ってくることを英斗から得ていたためか分からないが、集団で固まって戦っている者も確認できる。
「やっぱり、あらかじめ来ると分かっていてもパニックになっている人はいるわね」
「それは仕方ないさ。人はそこまで強くないものだ」
ビルの上で、人々を見て呟く有希に、千鶴が言う。
「だが……このままじゃ近いうちに崩れる。人々に支えがない」
英斗の言葉を、誰も否定できなかった。福岡の人達には現状リーダーが居なかった。今は、少数のグループで戦っているが、アンデッド側よりまとまりがない。
英斗は自分が檄を飛ばし福岡の民を支えるか考えるも、すぐその考えを払った。
(そこまでの信頼関係がない。なにより東京ダンジョンタワー踏破の情報を皆が持っているとは限らない。いきなり現れた強いかも分からない俺を信じてくれる人がどれだけいるか……)
だが、ここで福岡市民が完全に敗走すれば、九州の存続が危うくなる。それは避けなければならなかった。
「分かった! 皆の支えを今から作るぞ! 行こう!」
英斗は何か閃いたのか、笑顔でビルからビルへ移動し、抗争の中心に向かっていく。
「何が分かったんだ?」
「分からないけど、英斗は嘘はつかない。信じましょう、母さん」
それを聞き、他の者も英斗に続く。中心にたどり着くと、英斗は魔力を両手に纏わせる。それに伴い、ビルの屋上に直径二十メートルを超える巨大な輪が生まれる。
「まずは度肝を抜いて、皆の注目を集めないとな!『流星賛歌』」
その言葉と共に、輪から大量の隕石がアンデッド達の頭上に降り注ぐ。
突然の隕石に、市民は皆呆然と降り注ぐ隕石を見つめていた。降り注いだ隕石はアンデッド達を粉砕すると、その跡にはただ大量のクレーターだけが残された。
その異様な光景にさきほどまで騒がしかった戦場に一瞬の凪ができる。
英斗は特製の巨大拡声器を生み出し、叫ぶ。
「九州最強の英雄が死王を仕留めるため、修行を経て帰還したぞオオオオオ!」
英斗のその叫びは、静かになった戦場に高らかに響き渡った。
文明、読んでくださっている方、いつもありがとうございます。
実は四月からリアルの仕事の方が忙しかったのですが、遂に過労で潰れてしまいました。
四月から忙しくて全く書けてはいなかったのですが。
しばらく体を休めようと思います。しばらく休載いたしますが、体調が治り次第再開しようと思いますので気長にお待ちください。
別にエタった訳ではないので、そこはご心配なく。
楽しみにしていた方には申し訳ありません。また体を治して戻ってまいります。





