神力
英斗達が南門付近に辿り着くころには、既に戦いは終わっていた。血溜まりから城門前の戦いで敗れたことが分かる。
「既に終わっていたか……」
城門前に罠があるだろうことは分かるものの他に情報は得られなかった。
「あれが幹部の一体、がしゃどくろだ」
千鶴が指差した先には、巨大な骸骨が居た。全長十メートルは越えているであろう巨大な骸骨が門の前に存在している。
「おそらくあいつにやられたのね……。奴も不死身なの? 母さん」
「そうよ」
「一度、相手してもらおうかね、何かあったらすぐに逃げるのでそのつもりで!」
英斗は幹部の不死身を一度体感したかった。それにより策を練らないといけないからだ。
「だが……不思議と負ける気がしないな」
英斗はなぜか分からない自らの奇妙な余裕に笑いながら、がしゃどくろの元へ走る。
「まだ一匹残ってやがったのか……あいつ殺して帰るか」
がしゃどくろはだるそうにいいながらも、しっかりと英斗を見定める。がしゃどくろはその巨大で大きく振りかぶりながら、拳を放つ。
英斗はその拳を躱しつつ、刀を握る。
(馬鹿が……一回斬らせて、油断したところに渾身の一撃を与えてやるぜ)
がしゃどくろは内心ほくそ笑みながら、英斗の動作を見ていた。英斗が魔力を剣に纏わせ、がしゃどくろの頭部に一閃を入れる瞬間、がしゃどくろは生まれて初めて恐怖を感じた。
「獄炎閃」
がしゃどくろは普段攻撃を特に避けないのだが、この時はなんとか頭部を右に移動させその一撃を回避した。
次の瞬間には、その大きな胴体は英斗の一撃で、真っ二つに斬り裂かれ、がしゃどくろは悲鳴をあげる。
「ぎゃああああああ! 痛てえええええ!」
がしゃどくろは生まれて初めて感じるその激痛に、悲鳴を上げる。体を構成している鎖骨から胸骨は全てその一撃で粉々に粉砕され、倒れ込む。
(再生しねえええええ! なんだこいつ、聖属性を極めてやがるのか!? ここまで神力を使いこなせる人間がいるなんて……!)
がしゃどくろは、目の前の男が自分を殺すことができることを察し、恐怖した。そしてこの情報はなんとかレガシーに伝えなければならないと感じていた。
「おっ、普通に効くな。再生もしないし、先ほどの戦いで再生能力を使い切ったのか、それともやはり神力が効いているのかどっちなんだ?」
英斗は首をかしげる。神力なら効きそうだな、程度にしか思っていなかったので自らがどれだけ凄いことをしたのかいまいち分かっていなかった。
だが、英斗は現状人類で数少ないスキル『不死』に対抗できる貴重な力を持っていた。
「な!? 効いているだと! は、初めて見た……! 彼なら幹部を、そして死王を倒せるのではないか!?」
その凄さを千鶴は感じ取り、心が震えていた。死王を倒す、その唯一の切り札がこの場に居るのだ。





