神魔会議
太平洋上に浮かぶとある島。人の手は全く入っておらず、木々と動物だけの楽園であった。だが、その島の中央に大きな神殿が建っている。神殿内に、人ならざる者が続々と吸い込まれていた。
その中の一人に、六つの翼を持つ巨大鴉に乗るサンドラの姿があった。鴉から飛び降りたサンドラは、浮かない顔で神殿に入っていく。
中には既に多くの魔人が集まっていた。皆久しぶりに会う仲間に親し気に話しかけている。
だが、中央の祭壇に巨大な火が灯った瞬間、全員の魔人が言葉を止め祭壇に向かって跪く。
「これより神魔会議を行います。今日の司会は私バンデッド・セイルが行わせて頂きます。それではまず、メシス様からのお言葉を頂戴いたします」
祭壇の横には眼鏡をかけた研究者のような姿をしたセイルがマイクを持って話している。祭壇の大火が形を変え、人の形に変わる。
『お前達、今日は集まってくれて礼を言う。地球へ来て既に一年半以上が経過しているが……まだ人間どもが蔓延っているようだが、何をしているんだ?』
その言葉を聞き、多くの魔人たちが僅かに震える。メシスの言葉には静かな怒りがこもっていた。皆顔を上げられず、黙っていた。その沈黙を破ったのは、先頭に居た男である。
「た、大変申し訳ございません……。必ず、人類を滅ぼして、メシス様の供物とさせて頂きますので……」
震えながらも神相手に応えられるだけ胆力があった。
『口だけでなく結果で示してほしいものだが……まあいい。しっかり結果を残している者もいるからな。セイル』
「はっ! 本日は我々魔族と人類の現状についての報告になります。まず、アルジェリアですが、ダンジョンタワーにより滅ぼすことに成功いたしました!」
「おおおおおおおおお!」
セイルの報告に、魔人たちも歓声を上げる。その場にアルジェリア担当の魔人が立ち上がり、頭を下げる。
『アルジェリアの滅亡により、我にも多くの力が宿った。素晴らしい結果だ。ベース、これからも励め』
「ありがとうございます!」
そう言って、ベースと呼ばれていた魔人は嬉しそうに頭を下げる。
「他にもガンビア、ウルグアイも同様に滅ぼすことに成功いたしました! 人類の減少率は九十パーセントを越えています」
「順調じゃないか!」
他の魔人もその報告に気を良くして喝采を送る。
「そして踏破されたダンジョンタワーですが……九基です。そして同胞である魔人が、二人やられました。一人目はホルス・バリアナイトさんです」
セイルの報告に皆、水を打ったかのように静かになる。
「馬鹿な! 彼は第二次人魔大戦でも多くの成果を残した豪傑だぞ! 彼がやられるなんて……」
途端に騒めく魔人達。
「討ったのはアメリカ所属の『完全英雄』リチャード・アレクシス」





