女の戦い
一方有希は、純白の鎧を纏い、翼を使い宙からほむらと戦闘を繰り広げていた。戦闘態勢となったほむらは、今までと違い、下半身が蜘蛛となる獣化状態である。
「ただの蜘蛛じゃなさそうね」
上半身は肌は紫色であるものの人間型ではあるが、手から蜘蛛の糸を出しつつ、その鎌のような脚で斬りかかる。
「ほおずき会のトップを舐めるんじゃないわよ」
ほむらのスキルは『アラクネ』。その名の通り、魔物アラクネのスキルを持つ。その鎌は有希の槍をも止める硬度を持っていた。
有希は空中に大量の武器を生み出し、ほむらを包囲すると、四方八方から一斉に武器を放つ。
「宵の糸」
ほむらは、指から白い絹のような美しい糸を生み出すと、舞うように腕を振る。それにより、虹をかけるように糸がほむらを覆った。
その糸は有希の武器を完全に受け止めつつも、切れることなくそのまま巻き取ってしまう。
有希は本命である手に持つ神槍『グングニル』を、渾身の力で投擲する。
すぐさまその威力に気付いたほむらは、その糸を槍の後ろに引っ掛けることで軌道を逸らす。
その槍は、ほむらの下の地面を大きく抉り取った。
「凄い威力ねえ」
ほむらは糸を飛ばし有希の右腕に巻き付けると、その化物じみた力で引っ張る。だが、有希もされるがままにはいかない。剣を生み出すと糸を両断し、勢いを活かしそのまま一閃を入れる。
その一撃によりほむらの前脚から血が流れる。
「便利なスキルね。死んで?」
ほむらはその八本脚を使い、目にもとまらぬ連撃で襲い掛かる。有希はそれを躱しつつも、前進し、地面に刺さった神槍を掴み、地面から抜き取る。
「ただで返すと思った?」
そう言って、ほむらは神槍の刺さっていた付近に見えない蜘蛛の糸を張っていたようで、有希の足が完全に糸により捕らえられる。
動きの止まった有希に鎌の一撃が襲い掛かる。
「あんたこそ、私を舐めるんじゃないわよ!」
有希は鎌の回避を諦めると、そのまま槍をほむらの下半身である蜘蛛部分に放つ。
脚の鎌が有希の腹部に刺さると同時に、その槍はほむらの下半身を貫いた。
「効いたわ……! だが、私にはまだ、奥の手があるのよ!」
蜘蛛の部分には、大きな穴が空いており、中々重傷であるがほむらは未だに闘志を失っていない。
だが、ほむらには本当に奥の手があった。獣人系スキル保持者の奥の手、『完全獣化』である。
魔物系スキルも広義では獣人系と同じ力を持つ。
有希も奥の手が『完全獣化』であることに気付いていた。腹部に大きな傷を負い、その鎌には毒が分泌されていたのか、怪我以上に体が不調を訴えていた。
「やれるものなら、やってみなさいよ……メンヘラ女。今度は首を飛ばしてやるわ」
ふらつく足で堂々と言い放つ。
「いい度胸ね……」
そう言って、ほむらが力を開放しようとした時、英斗の超電磁砲がバフォメットを貫いた。
「か、華頂様!?」
ほむらは貫かれた華頂、現バフォメットを見て大声を上げると、有希に目もくれず背中を向けて華頂の元へ走っていく。
「背中を向けるなんて、舐められたものね!」
有希は槍をいくつも生み出し、ほむらの背中に向けて放つ。その槍は脚を貫くも、全く止まることなく華頂の元へ走っていった。
英斗は地面に落ち、倒れ込んだバフォメットに止めを刺すためいっきに距離を詰める。渾身の魔力を込め、イフリートの獄炎を纏った獄炎刀に、神力をさらに重ねる。
渾身の力を込め振り上げた刀はバフォメットに届くことなく、庇ったほむらの背中を斬り裂いた。
明後日3/29(火)の夕方頃に、ハイファンタジーの新作投稿します!
追放ものですが、今作品が好きな人には楽しんでもらえる熱い作品になってますので、是非応援して下さると嬉しいです(*´▽`*)





