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誰が敵か

 英斗はナナと有希と廃アパートで合流する。


『何か分かった?』


「いや、さっぱり分からなかった。本当に知らないのか、それとも隠しているのか……」


「けどこれじゃ、また振り出しねえ」


「俺達の手で探すしかないな。出ろ」


 英斗は手からカラス型の自動人形(オートマータ)とモニターを生み出す。レベル八十を超えたことで、様々な機能を持った自動人形を生み出せるようになった。


「カラス? それを放つの?」


「ああ。こいつが見たもの、聞いたものをリアルタイムで確認できる。カラス型のドローンみたいなもんだな」


 英斗がカラスを放つと、モニターは空からの風景を映し出す。


『凄いね! 偵察に使うの?』


「だろう。十匹程生み出して、空から偵察してみよう。意外に近くに恭一郎は居るかもしれん」


 英斗は計十匹のカラスを放つ。三十二インチ程のモニターには上から壊れた名古屋の景色が映りだされる。分割されているため、一つ一つは小さい。


『けど、争っている人達は居るけど、あまり新情報はないねえ』


「そんなすぐにはなあ。少量とは言え、魔力をリアルタイムで消費するからそこまで長時間は厳しい。早めに何か分かるといいんだけど……」


『あっ! 玉閃が居るよ!』


 モニターに映る玉閃を見て、ナナが言う。


「知らない女の子に声かけてるわね」


「口説いてるな」


「口説いてるわね」


「あいつこんな時に何考えてるんだ……聞いておくか」


「聞いておきましょう」


「行け、カラス」


 女性を口説こうと頑張っている玉閃の元にカラスを向かわせる。近くまでよると、玉閃はカラスに反応して振り向く。


「うおっ! ばれたか?」


 玉閃は一瞬だけカラスを見つめた後、再び口説き始める。


「うーん……あまり聞こえんな」


「もっと寄ったら?」


「あまり寄るとばれそうなんだよなあ……」


 有希と話していると、女性は話を打ち切り、玉閃を置いて去っていった。


「失敗したな」


「失敗したわね」


『失敗したねえ』


 調査どころか、これではただの覗きである。




「はあ……。真面目に探すか」


 英斗は、再び調査を再開する。


「あれ、華頂さんとほむらさんじゃない?」


 彼女たちが映る映像を見て有希が声を上げる。


「うーん。まあ別にいいんじゃない? 隠れてるだろうし俺達に知られたくもないだろう」


 英斗が話していると、ほむらが華頂に抱き着く。


「ほむらさんが抱きついたわ! 付き合ってるのかしら!? もっと近くまで寄りなさい!」


「他人の恋愛関係を探ってる場合じゃないんだが……」


 そう言いつつも、カラスを近くに向かわせる。ある程度近づくことで、少しずつ声が拾えるようになってきた。


「ねー、華頂様もずっとこもりっきりは飽きたんじゃない? 遊びに行きましょう?」


「僕を狙っている人も多いからねえ。しばらくの我慢だ。だって、君がすぐに解決してくれるのだろう?」


「勿論! 全て私が解決してあげますよ。すぐにね」


 ほむらは、くしゃりと、歪んだ笑顔を浮かべる。


「そういえば、恭一郎を逃がしたらしいですね。月城達と、高峰商会が相打ちになれば良かったんですけど」


 思い出したかのようにほむらが手を叩いて言う。可愛い仕草とは裏腹に、言っている内容は聞き捨てならない内容であった。


「そうなれば良かったんだけど、そう上手くはいかないものだ」


 英斗は有希の方に顔を向ける。


「ど、どういうことだ? なぜ俺達はほおずき会からも恨まれてるんだ?」


 有希は、さっぱり分からないと首を横に振る。


「なぜか知らないけど、恨まれてるようね……」


 英斗達が話していると、華頂とほむらはどこか建物の中にはいってしまったようで声は聞こえなくなってしまった。


『これからは、ほおずき会も警戒したほうが良さそうだねえ』


「どうやら、そうらしいな」


 本当の敵は誰なのか? 英斗は混乱しつつも、今後は華頂達についても調べようと考えていた。

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[一言] どっちも腐ってますな。
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