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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第一部・妖魔邂逅編、もしくは、魔術師になったよ、俺。

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第七十六話・一蓮托生、頭は東に尾は西に

『ネット通販で始める、現代の魔術師』の更新は、毎週日曜日と火曜日、金曜日を目安に頑張っています。

 川端政務官の暴走。

 

 それは国会をも巻き込む大騒動となった。

 忍冬師範から聞いた話では、妖魔共存派も一枚岩ではなく、中には中庸派や武力協力派など、さらに細かい派閥が存在しているらしい。

 中でも面倒くさいのが中庸派。

 表向きは妖魔との共存を唱えているが、その実、参加している議員の殆どが四菱重工だの太田技研などの、国産兵器開発メーカーと裏で繋がっているらしい。

 その中庸派のリーダー格が川端議員。

 国産戦車、護衛艦の兵装部分の生産を行なっている山崎重工から多くの献金を受けたとかで、度々国会を賑わせている。


 そして今回の件。

 どうやら川端議員の完全な独断先行、これで手柄を立てて自分の議員としての立場を高めようと考えていた節があるとかないとか。


 まあ、そんな事は俺には関係ないからね。


………

……



「乙葉、俺にも魔法の箒を寄越せ‼︎」

「一本、20億だよ。それで良いなら売ってやるよ、一括な、円な。ガバスとか無しな」

「……ジンバブエドルはダメか?」

「そもそも、今は使われとらんわ‼︎ 出直してこいや」


 そう言われて、織田はスゴスゴと席に戻る。

 それと入れ替わりにクラスの女子も来るのだが。


「あ、あのね乙葉君。私の友達が、魔法で痩せる薬があるかどうか聞いてくれないって頼まれてね。そう言うのってあるの?」

「あるよ?」


──ガタガタガタッ

 クラスのあちこちで立ち上がる女子。

 そして何事もなかったかのように椅子に座っている。


「そ、それってさ、どんな効果なの?」

「脂肪1キログラムを水1キロに物質変換するやつ。そのままオシッコとして体外に排出されるけど?」

「へぇ、そうなの。それってさ、作るのって高いの?」

「まあ、材料費だなんだで、一錠六万円ぐらいかかるけど?」


 そう告げると、あちこちの席で指折り数える女子の群れ。やはり、皆さんこう言う話には目がないようで。


「へ、へぇ。でもさ、それって本当に効くの? なんなら私が実験台になってあげようか?」

「効くよ。ほら、その証拠がやってきたけど?」


 入り口からは新山さんが入ってきた。

 あ、数人の女子に拉致されて廊下にゴー。

 何が起こったのか、新山さんは理解していないが、ほんの数分で慌てて教室に戻ってくると、俺のところに走ってきた。



「あのね乙葉君。あの薬のことは秘密じゃないの? みんなに知られて良いの?」

「ん〜。まあ、定価で流す分には構わないかなって思ってきた。いくら隠していてもさ、俺が現代の魔術師だって言うのは国民全員が知って……全員ではないけど、そこそこ知っているし」

「ふぅん。それで、薬の出所は、どう説明すればいいのかな?」

「俺が全て作っている。それでよし」

「分かったわ。それじゃあ、私の持っている分を売って、その売り上げを乙葉君に渡せば良いのね?」


 いや、その分はしっかりと新山さんから代価をもらっているんだけどさ。

 だから、全て新山さんの取り分にして良いよって伝えたんだけど、代価の方が釣り合わないって言うことで、幾分かは支払ってくれるらしい。

 別に、構わないのに。


 そして、女子が痩せる薬が欲しいと言うことは、当然ながら男子も欲しい薬があると言うことで。



「乙葉‼︎ 惚れ薬はあるか‼︎」

「魔法で精力増強できるか? そういう薬は?」

「フェロモン増強薬は?」

「ん、無理。そんなのあったら使ってるわ‼︎」

「ステータスをドーピングする薬は? ほら、ラノベでよくあるレベルが上がるやつ」

「ラノベでも、そんなのないわ。飲んでレベルが上がる薬なんてあったら俺が使うわ、そもそもレベルってなんだよ?」


 あぶね。

 

「怪我の治る薬は? 来週、部活の対抗試合があるんだけど、足を捻挫してな」

「怪我を治す薬か? 捻挫程度を治す薬ならあるけど、高いぞ? それでも良いのか?」


 捻挫程度なら、中回復ポーションでいける。

 値段は一瓶10万円ナリー。


「ほ、本当か、それはいくらで売ってくれるんだ?」

「12万円でどや?」

「たっか‼︎ そ、それなら諦めるわ……」


 すまんな。

 一瞬で捻挫どころか骨折までいけるぞ。

 けど、捻挫に12万円は出せないよなぁ。


「まあ、リハビリ込みで一ヶ月が一瞬だから。そこは時間を買うって言うことで」

「乙葉、なにか、商品カタログみたいのないか?」

「いや、そこまで手広くやる気はないから。クラスメートのみんなだから売るだけでさ、そもそも作ったりするのに時間が掛かるから、大量生産なんてできないからな」


 そう説明すると、一様に納得してくれる。

 まあ、教室の端っこでブツブツと20億稼ぐ方法を思案している織田が怖いんだけどさ。


「そうだ、乙葉‼︎ よくラノベである無限に入るバッグはあるのか?」

「あ〜。今は在庫一つだね。億単位だけど買う気か?」

「たっか‼︎ なんでそんなに高いんだよ」

「魔法に使う秘薬とか、特殊な材料とか、色々とあるんだよ。と言うことで、金が貯まったら考えるんだな。そもそも、マジックアイテムが高いのなんて、ファンタジー小説じゃ定番だろうが」


 その説明で、大体は納得してくれる。

 まあ、中休みのたびに他のクラスからも質問や相談はくるし、見たことない女子先輩に新山さんが拉致られたりしているけど、スクロールマジックあるから大丈夫だよね、ガンガレ新山さん。

 俺はアトランジャー派だけどね。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 楽しい部活タイムだよー。


「あの、新山さんがぐったりしていますが、何があったのですか?」

「聞いてくださいよ、先輩。乙葉君がですね……」


 と、俺の悪行が淡々と説明された。

 流石に驚いてはいたけど、どうやら現状を考えて先輩も妥当だと理解したらしい。


「俺にもカナン魔導商会が使えたら、多少は協力してやれるんだけどなぁ」

「そんな夢みたいなこと……あるわ」

「「「 あるの(かよ、ですか????) 」」」


 部員全員が立ち上がる。

 よし、要先生は職員室だ、いつもの遮音結界で音が外に漏れないようにして。


「実は、一ヶ月に一度だけ。カナン魔導商会を俺以外の人が使えるようにできるけど。残念ながら、査定禁止で現金一括なので、使い勝手が悪いのですよ」


 そう。

 夏前にカナン魔導商会のレベルが上がったときに得た、『顧客招待枠+1』。

 これがあれば、祐太郎とかも使えるんだけど、査定禁止なので使い勝手が悪い。


「成る程なぁ。そりゃあ、俺たちじゃ無理だわ」

「まあ、夢が見られたのでよしと言うことで」

「そうですね。折角、乙葉君くんのカナン魔導商会を見ることができると思ったのですが」


 そう言えば、カナン魔導商会の画面って祐太郎にしか見せたことなかったよな。

 確か、新しくアップデートされたシステムでは、画面を誰でも見られるようにできるオープン設定をさらに細かく指定できるようになっている。

 ここに祐太郎と新山さん、瀬川先輩を新しく登録しておいて……。


──ピッ

 突然、俺の前に大型の画面が浮かび上がる。

 祐太郎は知っているが、新山さんたちは初めて見る光景に驚いている。


「そ、そ、それはなんですか?」

「新しい魔道具ですか?」

「いえ、これがカナン魔導商会の画面ですよ。誰でも見られるように設定を変更しました。まあ、見るだけですけど、かなり便利ですよ?」


 そう説明してから、画面を先輩たちの席の前に移動させる。俺から5m以内には自由に動かせるのも便利である。

 早速画面を開いて、商品のリストを見ているのだが、あれが欲しいとか、これは便利だなどと楽しそうに話をしている。



「しかし、オトヤン、なんで今まで隠していたのを公開するようにしたんだ? 方針転換か?」

「公開したといっても、カナン魔導商会の事は秘匿し続けるよ。魔導具は全て俺が作ったことにしてあるし。材料とかがないと作れないって説明しているから、そうそう頼まれる事はないよ」


………

……


 カナン魔導商会を秘匿して、俺の錬金術で魔導具を作っている。

 そうする事で、俺の知名度が上がる。

 正確には、俺以外の三人は狙われにくくなる。

 先日、国会で色々な話を聞いて、様々な相談を受けたりして、ふと気がついた。


 力を持たないものは、力を持つものを有効に利用しようとする。


 今の日本で、魔術師は俺一人。

 だけど、国会の答弁では俺以外の瀬川先輩たちの事も問われた。

 未成年なので実名はでていないけれど、俺はいつも通りに否定したさ。


 魔術師は俺一人だって。


 それでも、防衛省の川端政務官のような大人も存在する。

 それなら、可能な限り俺が目立てば良い。

 そうする事で、少なくとも能力覚醒していない新山さんは守ることができる。

 祐太郎はまあ、忍冬師範の弟子で闘気が使えると言うことで目はつけられているが、闘気については修行次第で身につける事も難しくないため、今は目立つがやがてはそうでもなくなる。


 そして瀬川先輩。

 深淵の書庫アーカイブの持つ力は絶大すぎる。

 でも、知られているのは『指定された書庫の情報を元に、魔術による超解析を行う』であり、その本質部分は秘匿されたまま。

 なんと言っても、直接見たことあるのは俺たち以外は第六課の、それも忍冬師範と要先生だけだからね。


 結果としては、俺が一人目立ちしてみんなを庇う形になっているんだけれど、この状態を何処か楽しんでいる俺自身でもある。

 結局、俺がみんなを巻き込んだ事については、みんなは気にしていない。

 けれど、俺はどうしても引っかかっているからね。


………

……


「……オトヤン、並列思考タイムは終わったか?」

「おういぇーい。という事で、分かったかな?」

「よくわからんが……オトヤンが囮を買ってでているんだろうなぁって気がするが?」


 はい、一言で終わりましたね。

 その通りだよ、祐太郎。

 だから、カナン魔導商会に夢中な二人には見つからないように、真面目な顔で頷いたさ。


「まあ、ここだけの話な」

「そっか。まあ、俺もできる限りのことはするわ」

「そこはアレだろ? 俺も混ぜろじゃないのか?」

「前にも話していただろう? 俺はディフェンス、オトヤンがアタッカー。状況に応じて入れ替えれば良いさ」


 さすが分かっているなぁ。

 あとはまあ、二人がカナン魔導商会を見終わった頃に部活もおしまい、はい今日は解散。

 俺と祐太郎は堂々と玄関から出ると、魔法の箒に乗ってスーパー帰宅。

 瀬川先輩と新山さんは、以前よりもマークが弱くなったので普通に帰宅した。



 そして、その日の夜のニュースでは、俺が魔法の箒に乗って空を飛ぶシーンが茶の間で話題になりましたとさ。

 どっとはらい。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 翌朝。

 楽しい日課も終えていざ登校。

 祐太郎宅の庭から飛び立とうとするんだけど、外で待機している報道が中継車の上でカメラを構えている。

 これはアレか?

 昨日、学校で使った魔法の箒を撮影したいのか?

 オーケーオーケー。

 それならこっちにも対策はある。

 すぐさま中継車を送り込んだ会社にクレーム一本。

 内容はしごく簡単だよ。


『築地家の敷地内を無断で撮影している中継車をなんとかしてください。さもなくば、今度予定している記者会見で、そちらの局は出入り禁止にしますので』


 用件だけ伝えて切る。

 するとほら、責任者が慌てて車両の上のカメラを下ろし始めたよ。



「オッス。今日はどうする?」

「どうするもこうするも、普通に学校だな。外の報道陣は今、釘を刺したからとっとと行こうぜ」

「だな。そんじゃ行くか」


 すぐさま箒を取り出して跨ると、いつものように透明化して学校へGO‼︎



………

……



 堂々と玄関前に着地して姿を出す。

 そして悔しそうに此方を見る報道陣を横目に、堂々と校舎に入ろうとして。


「乙葉浩介、築地祐太郎。校則違反なので生徒指導室へ」


 突然、風紀委員に呼び止められたわ。

 俺たちが何をした?


「あのな、俺たちが何を違反したんだよ?」

「その辺りを詳しく説明してほしいんだけど?」

「校則では、魔法の箒での登校は、許可されていませんよ? 登校については徒歩もしくは最寄りの公共交通機関、あとは許可を取った自転車のみです」


 え?

 

「何を、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているのですか?」

「……指導室行きますわ」


 うわぁ。

 こんな落とし穴があったとは思わなかったわ。

 そのまま二人して生徒指導室に移動、10分間の説教と反省文提出で事なきを得た。


「はぁ。まさか魔法の箒での登校許可を申請する羽目になるとは、思わなかったわ」

「だけど、申請とおるのかよ? 最悪は、何か別の方法を考える必要があるよなぁ」


 ブツブツと文句を言いつつ、取り敢えずは教室で反省文を仕上げて提出。

 あとはのんびりと授業を受けるだけ。



………

……



「乙葉君、お願いがあるの‼︎」


 昼休み、顔色の悪い女子が教室に突入してきた。


「なんだなんだ? ダイエット薬は在庫切れだぞ?」

「そうじゃないわよ、乙葉君の魔法って、亡くなった人は生き返るの?」


 あ〜。

 この問題が来たかぁ。

 魔術師として公言した以上、いつかは聞かれるかと思っていたよ。

 けど、マスコミ関係には聞かれなかったんだよなぁ、不思議不思議。


「無理。俺の魔法はどっちかと言うと、攻撃か防御がメインなんでね。怪我や病気を癒す神聖系魔術は使えないよ?」

「そ、そっか……ごめんね、変なことを聞いて」


 一言謝ってから、女子は教室を後にした。

 済まない。

 生きてさえいれば、ポーションでどうとでもなるんだけどね。流石に死者蘇生は俺の分野じゃない。

 そして新山さん、今の話を聞いて申し訳なさそうな顔はしないで。


「わ、私が覚醒していたら……」

「それでも死者の蘇生はダメだよ。それで無くても、俺の魔法は物理的法則をかなり無視しているんだよ? そこに倫理観を破壊する死者蘇生は覚えたとしても使わないほうがいいよ」


 小声で伝えると、新山さんは力なく頷く。

 俺の魔法、第四聖典でどうにか回復魔法のようなものは作れなくもない。

 けれど、死者蘇生は神の領域、カナン魔導商会で購入した魔術大全でも、死者蘇生は『禁忌』とされている。

 それだけ、命と言うものを軽んじて考えてはいけないと言うことなんだろう。


 そもそも『死者蘇生』は複雑な条件がある。

 死後30分以内、肉体に欠損がないこと。

 これが最低条件で、例えば病死の場合は、蘇生しても病気を治癒しない限りはいずれ死が訪れる。

 まあ、ポーションで一発治癒なんだけど、30分以内と言う条件がかなり厳しい。

 俺が病院に詰めていて、患者が死んだのでとかならなんとかなるけど、事故死とか遠方とかなら確実に間に合わない。

 そう言う時に限って、蘇生できないと恨まれる。

 だから、死者蘇生はあってはいけない。


 そう、新山さんにも淡々と説明すると、彼女も納得していた。


 魔法の存在は、倫理観も破壊しないように注意しないといけないよなぁ。

 さて、神聖魔法以外の回復手段を研究しますか。


 

誤字脱字は都度修正しますので。

その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。


・今回のわかりづらいネタ

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― 新着の感想 ―
[一言] ジンバブエドルキターーー
[一言] 死者を生き返らせまくって神に殺されたアスクレピオスという前例もありますからねぇ。 死後に神と崇められるかもしれないけど、自身の命をベットするのは流石に・・・
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