第六十八話・枯樹生華で仏に会う(大脱出かーらーの作戦タイム)
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正午のニュース。
本日0時、北海道札幌市中央区の一部を覆う、妖魔による結界に対して、防衛庁は特殊戦力自衛隊による砲撃を開始。
同、0時45分、結界に対して物理的攻撃は全く効果が無いことが証明され砲撃は中止、警察庁及び関係各省は対妖魔用の装備についての研究委員会の設立を進言。
なお、対妖魔兵器に対しては、政府外縁機関である『日本学識会議』は必要なしという見解を示しています。
………
……
…
そんなニュースが流れる30分前。
俺たちは早速結界突破作戦を開始した。
「あの砲撃が囮になるから、今のうちに結界装置を起動してくれ」
「了解さ。全員配置についた?」
『こちら新山です。大通り西12丁目、準備完了です』
『同じく築地、大通り西11丁目到着、準備完了』
「オーケィ。こちら乙葉、北海道庁スタンバイ完了‼︎」
俺たちの連絡を聞いて、ティロ・フィナーレ本部の瀬川先輩が最後の確認。
モニター上で結界装置のズレがないか確認すると、すぐさまゴーサインが来た‼︎
『こちら本部の瀬川です。結界装置の確認完了、発動をお願いします‼︎』
──ダッ‼︎
瀬川先輩の合図と同時に、俺たちは走り出す。
結界装置のある場所には、すでに第六課及び警察関係者が待機している。
そこに目掛けて爆速ダッシュすると、結界装置を起動して次の場所に向かう。
予め一つ起動して、また次のを起動するという方法もあるけれど、瀬川先輩が大通り公園あたりに集まりつつある妖魔の反応をキャッチしている。
恐らくは俺たちの動きをなんらかの方法で察知した妖魔たちが妨害のために実力行使に出ようとしているのだろう。
それなら、妖魔に動きを察知される前に全ての準備を終えて、一気に同時起動して大通りの三丁分の聖域を作った方がいいという結論に達したのである。
そしてその目論見は正解だったらしく、二つ目の結界装置の起動と同時に妖魔たちも動き始めたが、すでにTOKIO阻止、いや時遅し。
「止めろ、あの男を止めるんだ‼︎」
叫びつつ祐太郎の下に向かう妖魔に対して、祐太郎は闘気防御を発動、一筋の光の弾のように一気に加速する。妖魔からの魔術的攻撃は全て闘気の膜によって弾き飛ばされ、近接戦を仕掛けるにも速度が追いつかない。
「ちょろちょろと相手している暇なんかないんでね」
さらに足に闘気を集めると、加速が増していく。
その速度で次々と結界を発生させていく。
……
…
「か、風よ、我が身を包みなさい‼︎」
新山の発動したスクロールマジックは『風装術』。
体の周りに風を纏い、走る速度を後押ししてもらう。
さらに飛び道具に対しての完全耐性があるため、妖魔からの遠距離魔術攻撃すら退いている。
「だ、ダメだ、魔術が効かない‼︎」
「足を止めろ、前に回りこめ‼︎」
「足元を破壊しろ‼︎」
妖魔の声が響く。
そして新山の眼前に一体の妖魔が短距離転移すると、力一杯振りかぶって殴りつけた‼︎
──ガギィィィィーン
その一撃は新山には届かない。
彼女の手前に水晶の盾が浮かび上がり、妖魔の拳を止めていた。
「な、なんだこれは‼︎」
「水晶盾です。浄化水晶で作られた魔法の盾です‼︎」
殴りつけた妖魔の拳が霧になって散っていく。
同時に水晶盾も砕けるが、その破片はすぐに集まり新しい盾を作り出す。
動揺する妖魔をよそに、新山は風をうけてさらに加速。
妖魔の猛追を交わしつつ結界装置を作動していくと、先に終わった祐太郎と共に残りの結界装置も作動していった。
……
…
「下から順番に作動。慌てず騒がず作動……」
北海道庁担当の俺。
一つのフロアに六つ、それを二組。
最上階近くは四つを効率よく。
──ガッシャァァァァン
警察官と一緒に結界装置を作動すると、真横にいた警察官が建物の外に弾き飛ばされた。
「あの人は人魔なので確保‼︎」
「はい‼︎」
慌てて走り出した警官が手錠を嵌める。
因みに俺の魔力付与済み、外せるものなら外してみろって‼︎
そんな感じで結界装置を作動していくのだけど、あちこちのフロアーで壁に激突して苦悶の顔を浮かべている人とか、窓をぶち破って外に放り出される人とかが見え隠れしている。
いや、隠れてはいないか。
「……この人も妖魔ね。確保よろしく‼︎」
次々と捕獲されていく妖魔。
それにしても結構な数がいたなぁ。
そして最上階近くの結界装置を起動すると、壁にめり込んでいる議員の方がいた。
「う、うぐぅぅぅぅぅ」
「あ、どこかで見たことあると思ったら、民進党の議員さん。貴方も妖魔だったのですか?」
「よ、よくぞ見破ったなぁ‼︎」
「まあ、結界装置から弾かれて壁にめり込んでいる時点でバレバレなんですけどね。貴方も百道烈士の手下ですか?」
「………」
質問に沈黙です返す。
ということはギルティで良いよね?
──ヒュンッ
右手の中に光銃を生み出すと、議員のこめかみに突きつける。
「撃つなら撃てばいい。所詮は人間の魔術師の技、その程度ではワシを滅することはできないだろうが」
「あー、そうだよね。簡単にいうとHPが削り切られて霧散化するんだよね? でもさぁ」
かこめかみから喉元に銃口の位置を変える。
そこの中に妖魔核があるんだよね。
「ふ、ふん。撃てるなら……」
「魔法はイメージ。そして、俺の魔術は異世界の魔術なので、イメージでどうとでもなるんだよね。第四聖典の魔法体系って、イメージして作り出した魔法が登録されるらしいんたよ、こういう感じに」
光銃の弾丸である光の弾。ここに浄化のイメージを組み込む。
──ヒュゥゥゥゥ
銃身から白い光が吹き出し、それが緑色に変化する。
すると議員の喉元がチリチリと消滅し始めた。
「イメージは浄化の光。そんじゃさいなら」
──ドゴォォォォォッ
一発で喉元を撃ち抜き浄化する。
いつものようにゆっくりと霧状に消滅するのではなく、喉元を中心に消滅した。
──ゾワッ
そして体内の魔力がごっそりと持っていかれる。
「うおう。余剰魔力は注いでないのに、ごっそりもっていかれたなぁ……連射はダメっていうことか」
クラクラする頭を振りつつ、最後の結界装置を作動させると、俺は道庁から外に出ていった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
全員が大通り西13丁目に集まる。
ここに三つの結界を配置して全ての準備は完了。
「よし、第二段階に移行‼︎」
忍冬師範の声と同時に、待機していたパトカーが一斉に走り出した。
『結界内の市民の皆さんにお伝えします。大通り西11丁目から13丁目までの三区画を結界によって覆いました。この区画には妖魔は侵入することができませんので、随時避難をお願いします。
また、結界内には外に出るためのゲートを用意しておりますので、随時避難をお願いします』
警察による避難誘導が始まると、瀬川先輩の深淵の書庫がフルパワーで演算処理を開始する。
予めマークしてあった妖魔が結界に近寄らないように監視体制を強化し、付近にやってきた妖魔に対しての指示は待機している第六課のメンバーに届けられた。
そんな光景を横目に、俺と祐太郎、新山さんはゲート真横の仮設テントで一休み。
「……オトヤン、休むんじゃなかったのか?」
「休むよ、これ作ったら」
俺の魔力でなくては結界は中和できない。
できないというのはなんだか嫌だし、俺無しでもなんとかできるようにしないと今後が不安。
そもそも、全員が避難するまで俺の魔力が持たない。
それなら、外付け結界中和装置を作ればいいんだよ。
「余った材料じゃあ心許ないか。いや、待て待て‼︎」
カナン魔導商会を開いて格安魔導具を探す。
それを幾つか買い込んで、まずはそれを錬金術で分解する。
そして次は魔力の自動回収装置を作り出し、アダマンタイトを細く加工して……。
「オトヤン、扉用のフレームは用意したから、これを使ってくれ」
いつのまにか祐太郎が、単管パイプとジョイントで大きめの扉大の枠を作っている。
それ、何処から手に入れた?
まさか、祐太郎もネットスーパースキルが?
ム〇ーダさんのようにイオン系? それともケン〇チ氏のシャングリラ?
「そこの工事現場で余ってたやつを借りてきただけだよ」
「なんで俺の考えがわかるんだよ‼︎ お前は光速エスパーか‼︎」
「古い付き合いだからなぁ。それで、俺は何をしたらいい?」
「ここを押さえてくれれば……」
そんなこんなで作業続行。
その間にも新山さんは炊き出しの準備。
流石は北海道庁、こういう時のための非常用食料の備蓄は完璧である。流石は食料自給率200%オーバーの北の大地、まあ、今、正に対妖魔戦用『試される大地』化しているような気がするけどね。
警察の避難誘導もあり、一時間後にはポツポツと人が集まってくる。
それに合わせてゲートも完成して設置すると、ここから先は警察にバトンタッチ。
俺はゲートを起動させると、一旦、ティロ・フィナーレへと戻ることにした。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
外に接続するゲートが開いてから四日。
結界内の人々の避難は殆ど完了したものの、まだ残っている人たちもいる。
妖魔はあの結界から出ることはできないが、悪質な人々は結界内で犯罪行為を働いているらしい。
すぐさま結界外から警察官が派遣されてきているので大きな事件にはなっていないが、宝石店などで強盗を働いていた者たちは次々と検挙された。
その背後では、瀬川先輩の深淵の書庫が協力していたということもあるが、逮捕された人たちは皆一様に『妖魔に操られた』『妖魔が憑依していた』と供述しているらしい。
まだ法改正が間に合っていないので、妖魔及び魔術などによる犯罪に対しての取り締まりは現場判断になっているのは仕方がないだろう。
最悪なのは、妖魔に取り入って力を得ようとしている人々。
それがどれだけ危険なことなのか、彼らは理解していない。
結果として、結界内に存在していた人間の減少に伴い、残っている人間に対して大量の妖魔が襲い掛かるという光景があちこちで発生している。
‥‥‥
‥‥
‥
「それで、この映像は……」
「うん、この前の俺たちが結界発生装置を起動したときの奴だな。油断していたので装備はしていても顔はバッチリと映っていたらしいなぁ」
「うううう……どんな顔して学校に行けばいいのですか……」
テレビでは、先日の結界発生装置の設置シーンがニュースで流れていた。
モザイクのようなものが入っているので全国区では正体はバレていない。
けれど、boyaitterでは無修正の画像が一瞬だけ流れてしまったらしい。
結果として、ニュースやネットではこんな感じで説明されていた。
現代の魔術師・乙葉浩介
赤き闘神・築地祐太郎
精霊使い・新山千春
いったいどうやって、いつ、どこからとったのか疑問ではある。
瀬川先輩が深淵の書庫で解析したんだけれど、映像に映っている時間帯にはテレビカメラなんてどこにもなかったんだよ?
ただ、妖魔の中に映像をジャックするやつがいるのはわかっているから、それが流したろうなあっていう結論には達したけれどね。
「うん、新山さんについては精霊使いでもなんでもないのに、噂だけが独り歩きしてしまっているね。祐太郎のは装備の色だし、俺はペストマスク外していたのが失敗だったか‥‥」
「三人が有名人になったので、私のところにもlinesで連絡が来ていますわよ。文学部に入ったら魔法が使えるようになりますかって」
「私もクラスのみんなや友達から質問とかきているし。魔法使いになりたいけれど、どうすればいいのって」
「俺はファンクラブから。なんとなく神格化され始めていてめっちゃ怖いんだけれどさ」
「はぁ。俺のところもクラスのみんなとか古い友達から。なんか奢れってうるさいわ!! なんで俺のところだけ質問じゃなく集りがくるんだよ!」
そう叫んでいると、要先生が笑いをこらえている。
「日本政府としても、あなたたち4人は手駒としておきたいそうよ。まあ、忍冬警部補と築地君のお父様が防波堤になっていて、直接話を持ってこないようにしているそうですけれど。でも、気を付けてくださいね、結界の外に戻ったら、いろいろとうるさい人たちに詰め寄られると思いますから」
「‥‥うん。堂々と開き直る。いっそ、そうしたほうが清々しいでしょ。俺は魔法も使えるし魔導具も作れます。それがなにか? 魔導具を作ってほしければ材料を出せ、金も出せって。魔法を教えてほしければ秘薬を持ってこい、才能がないやつはお断りだって」
そう呟いていると、祐太郎は頷いているけれど新山さんと瀬川先輩についてはどうにかしないとならないよなぁ。
「まあまあ。それで、みんなはいつ頃外に戻るのかしら? 第6課としてはそろそろ結界内の人たちの避難はいったん終わらせたいのよ。結界自体は妖魔が作ったものでしょうから、いつでも彼らは消すことができると思うわ。ただ、妖魔の親玉の……百道烈士がいつ反抗作戦に出るのか予想がつかないって。その対応はあなたたち……正確には乙葉君以外はできないから、それだけは手伝ってほしいって」
「そうはいっても、もうかれこれ一週間以上は学校を休んでいますからね。学生の本分は勉学、早く明るい学生生活に戻りたいのですよ」
「まあ、戻ったところで質問攻めにあうのが落ちだし‥‥俺たちって、無断欠席になってます?」
「文学部の課外活動ということで処理してあるわよ。それに結界内に閉じ込められていた人の中には、あなたたち以外の学生も結構いたのですからね」
そりゃそうだ。
さて、そうなると俺としてはとっとと百道烈士と決着つけたいものですなぁ。
平穏な学生生活‥‥にはもう戻れないので、せめて妖魔に八つ当たりすることにしようそうしよう。
「オトヤン、あと何日ぐらい粘る?」
「三日。その間に百道烈士を見つけて浄化する。それで間に合わなかったら、俺たちは学生に戻ります。ですので第6課に対しての協力も残り三日と思ってください。三日後に結界装置もすべて回収しますので、今後も必要でしたら予算を組んで買い取ってください」
きっぱりと言い切る。
みんなを助けるため、そして一時的避難場所としての貸し出しはしたけれど、恒久的にというのであればお買い上げいただこう。
そう説明したら要先生は一旦道庁に戻るらしい。
さて、明日からの作戦に備えて、今日は英気を養うとしよう。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
。今回のわかりずらいネタ
軽井沢シンド〇ーム / たがみ〇しひさ 著
依頼〇から一言 / 同上
ナーバスブレイクダウン / 同上
あと二つ。




