第六十五話・一撃必殺、暁を覚えず
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札幌市に巨大結界が発生した当日。
その光景は世界中に報道されていた。
テレビ局はもとよりBSチャンネルやインターネットにまでその様子は伝播し、世界中の妖魔を知る人々はこれから先に起こるであろう事態を、指をくわえつつ見守るしかなかった。
百道烈士の放った魔導回線による『人間牧場』の光景についても、それを録画した者たちがインターネットを通じて世界中に配信。公開AVなどというサブタイトルをつけてネット配信しようとしていたものまで現れる始末である。
そして、各国の対妖魔組織は、日本がこの事例に対してどう対処していくのか様子を見ていた。
魔術・対妖魔組織としての実力は、今や先進国各国の中でも日本は断然最下位、国家レベルでの研究機関もないため妖魔に対しての知識も御神楽から学んだ程度しかない。
そんな日本が、どうやって上級妖魔とやり合うのか、その一点に意識は傾けられていた。
だが、その評価は一瞬でひっくり返る。
乙葉浩介の変装による『現代の魔術師』の登場、それと同時に姿を現した重装備の第6課。
手にしたミスリルソードで次々と妖魔を蹴散らしていく光景の後ろでは、魔術師が次々と魔術を繰り出して上級妖魔を蹴散らしていたのである。
いつの間に対妖魔兵器を開発したのか?
それよりも、あの魔術師はいったい何者だ?
いくつもの問い合わせが防衛庁に届くのだが、当然ながら国家機密であり詳細は伝えることはできないという一点で話を終わらせている。
それは至極当然。
防衛庁でさえ、今回の一件でここまで事態が好転するとは思っていなかった。
そして対妖魔兵器と魔術師の存在、これだけは秘匿しなくてはならないと思い始めていた。
妖魔の存在が公になった以上、妖魔に対しての有効手段はいわば外交の切り札ともなる。
それこそ安保条約の中に組み込まれていてもおかしくないし、他国での妖魔による紛争に対しての派遣も可能になるだろう。
それがうまくいったのなら、それを推していた人々は、いったいどれほどの甘い蜜を味わえるか。
それに気づいた議員たちも、こぞって魔術師の正体と退魔法具の出先を探るべく調査を開始していた。
‥‥‥
‥‥
‥
そんなことはつゆ知らずの、札幌。
消息を絶った妖魔を探すために、乙葉と祐太郎はゴーグルを装備したまま結界内を手分けして歩いていた。
乙葉は要先生と、そして祐太郎は忍冬とツーマンセルで行動し、都度確認できたデータはティロ・フィナーレ本部の瀬川に送られる。
その本部、瀬川の後ろでは新山が大量のスクロールを抱えて奮闘中である。
これも先日、ミスリルソードを購入したときにまとめて買いこんだ魔法のスクロールであり、これらを調べて妖魔に有効なものがないかどうかを新山は調べているところである。
――築地・忍冬チーム
直径3kmはなかなか広い。
俺と忍冬師範は、ススキノ方面を調べることにした。
俺のゴーグルで中級妖魔以上の反応を確認し、そのターゲットが人間だった場合は忍冬師範が対処するという方向で作戦を練っていたのだが。
――ドッゴォャォォォッ
目の前にいた妖魔は、俺の正拳で壁にぶっとんでいく。
その後ろでは忍冬師範が腕を刀状に変化させた妖魔とやりあっている。
まあ、それでも師範の優位性に間違いはないと思っていたのだが、思ったよりも師範の動きが悪い。
「師範、手伝います!!」
「あ、ああ、頼む‥‥‥」
息も切れ切れの師範に後ろに下がってもらうと、俺は入れ替わりに妖魔の前に出る。
「ほう、師範の代わりに弟子が相手ということか。たとえガキでも、俺は容赦はしない主義でな。百道烈士様が配下の25!! 斬剣のカスパッチョが参る!!」
「ん~。そんじゃ自己紹介な。機甲拳使い・築地祐太郎参る!!」
詠春拳の構えから機甲拳に切り替える。
闘気が体内を循環しつつ、体内にある256の闘気溜りで練り上げた闘気を圧縮する。
「‥‥機甲拳だと?」
おや?
戦捺羅 仕込みの機甲拳を知っているとは。
「へぇ。知っているのかよ」
「知るも何も、その技はわれら現王派にとっては忌々しい敵である旧王派の、それも先々代十二魔将の技ではないか!! まさか貴様は‥‥妖魔なのか!!」
――ドッゴォォォォッ
鋭く踏み込んでの正拳一撃。
拳がインパクトする瞬間に、拳骨から圧縮された闘気を爆発させた威力を載せての一撃である。
「機甲拳・一の拳・インパクトドライブ!!」
その一撃で、目の前の妖魔の胴体にぽっかりと風穴が穿たれた。
当然、そこに妖魔核があることもセンサーゴーグルで熟知済み。
「やっぱり‥‥そうか、貴様が戦捺羅 か‥‥」
「お前、俺の話を聞いていたのか? だから俺は関係‥‥関係者であって本人じゃねえよ」
そう叫んでいても無駄であった。
ゆっくりと霧状に散っていく妖魔。
これで、この界隈にいた妖魔は二体目、とっとと次を探すことに‥‥って、師範、不思議な顔で俺を見ているのはなんで?
「祐太郎、いまの技はなんだ? 詠春拳にも見えるが、それだけじゃないな」
「まあ、師範から学んだ詠春拳と、とある人に師事して教えてもらった体術の組み合わせですね。妖魔に対して切り札を持っているのはオトヤンだけじゃありませんよ? まあ、それでもオトヤンには全くかないませんけれどね‥‥‥」
「なるほどなぁ。まあ、おまえ自身が力をコントロールできているのなら多くは語らないが。それにしても一撃とはなぁ。霧散化してしまったが」
「あ、妖魔核を破壊したので霧散化はしませんよ。って、これは説明していませんでしたっけ?」
おぉっと、これについては知っているのは師範じゃなく御影さんなのかもしれない。
そんなことを考えつつも、ススキノの巡回を続けてみたものの、百道烈士ほどの強力な妖気を感じ取ることはできなかった。
――乙葉・要チームの場合
「要先生、斜め前のいきりジャンバーの兄ちゃんから中級妖魔反応、憑依。そのとなりの太もも丸出しねーちゃんからは下級妖魔反応、同じく憑依ね」
センサーゴーグルを装備して町中に出た。
俺の担当は大通より北西・旧道庁赤レンガと北大植物園あたり。
このあたりは妖気反応が多いけれど、ほとんどが中級妖魔もしくは下級のフローターばかり。
それも憑依しているので、うかつには手を出すことができない。
憑依されている人間は、少し体がだるいとか肩が凝っているとか目が疲れているとか、生きていてつらいとか仕事が辛いとか残業がきつくて耐えられませんとか、そういった感情がより強くなるらしい。
「あ~、Boyaitterの投稿とかで闇落ちしていそうな人って、妖魔に憑依されている人が多いのかもしれませんね?」
「いや、要先生。あれは地で生きていると思いますよ。匿名なら何を書いていてもいいと思って、人様のちょっとした隙を突いたり揚げ足とって叩きまくって、挙句に勝手にグタグダ文句言った挙句に放置していたら『はい、反論できませんね、論破!!』とか言い出して勝利ポーズとって粘着してくるような奴らですよ?」
うーん。
そう言ってはみたものの、なんだかそういう人って妖魔に憑依されているのかもしれないなぁって思ってきた。
もしくは妖魔そのものとかね。
そう考えるとさ、いま、国会で野党って仕事していないよね?
自分たちは今の政権を叩いているんだ、彼らの間違いを正すことが我々の使命だなんだって言っているようだ゛けれど、結局は『国会議員という既得権益』にぶら下がっておいて、ある程度の支持率が下がろうとも自分たちは比例代表で議員として残れるから、好き勝手に言っていればいいと思っているよね?
それでいて発言の大半はブーメランで戻ってきているけど。
しかも、国会中継だって、そういうシーンばかりを狙って放送して、しかも大声をあげて現政権を批判しているシーンばかりを民放は取り上げているじゃない。それって『今の政権はろくなもんじゃありませんよ、とっとと見切りをつけて彼らを糾弾している野党に乗り換えなさい』っていうプロパガンダだよね。
俺知っているよ、民放の会社の入っているビルって、他国の、アジアのいろんな‥‥〇国とか韓●とか、あとは北〇鮮の報道会社も必ず同じビルにあって、そこの責任者や関係者が民放に出向したり責任者を兼ねているんだよね。でも通名だからわからないんだってさ‥‥。
奴らって、きっと妖魔だよね?
「‥‥乙葉君、さっきからなにか真剣な顔で考えているけれど、何わかったの?」
「ん? 妖魔に憑依されていると、その人の思考とかもコントロールできるのかなぁって。催眠状態とか刷り込みじゃなく、そのことの思考の方向性を制御できれば、それってかなりすごいことできるよなぁって」
「まあ、いまの国会議員にも少なからず妖魔非容認派とか妖魔の存在自体がトリックだって言っている人もいるからね。あと、いまの野党だって、そもそも妖魔をボディガードに使ってるっていう話も出ていますから」
「ふぅん。それなら、国会議事堂の敷地を結界で囲ったら、それって面白いことになると思わない? 人間は通り抜けられるけれど妖魔は通り抜けられないやつ」
そうつぶやくと、要先生も悪い笑みを浮かべている。
「それなら、いっそ日本の領土すべてを囲ったほうがいいんじゃない?」
「ははっ、違いないけどね。あ、植物園に下級妖魔の群生地があるよ‥‥見てみる?」
「群生地?」
「まあ、何があるのかわからないけれど、動かない妖気反応があるんだけれど」
「へぇ。取り敢えず確認に向かってみましょうか」
‥‥‥
‥‥
‥
北大植物園。
その一角に広がる、大量のネギ坊主。
長ネギの収穫時期は終わっているんだけれど、どうしてここにこんなに生えているんだろう。
しかも、微弱な妖気も発している。
「スプリントオニオン‥‥かなぁ。でも、こんなところに自生しているなんて‥‥」
まさか、この北海道に自生しているなんて‥‥いやいやちょっとまて、これって、夏祭りの時に逃げ出した奴が、ここに根を張って増えたのか?
でも、それがそうなら、この隅っこに生えているつぶれた長ネギは何なんだろう?
ゆっくりと両根で地面を掘りつつ、ゆっくりと地面に埋まっていく。
けれど、どう見てもひん死だよなぁ。
「乙葉くん、このネギ畑が何かあったの?」
「ネギって春から夏ですよね? こんな秋の、それももうすぐ雪が降る時期に自生するなんて‥‥でも、北大植物園だから、何か研究しているのかもしれませんね?」
そうごまかしておいたけれど、正直言ってここで増えられるとどうなるかわからないんだよなぁ。
まあ、いまの様子だと、せいぜい春にならないと収穫はできそうもないか。
春の草原に生えるネギ。
焼き鳥の具材でしかなかったネギが逃げて、ここに安息の地を作ろうとしている。
ネギマの具がねぇ。
よし、君たちを今日からネギ=スプリングフィールおっとっとと。
ネギマだしねぇ。
春になったら、責任取ってすべて刈り取ってやるか。
「それで、ここの妖魔は大丈夫なの?」
「妖魔ではないんですよ。妖気をわずかに保有している植物ってところでしょ? 次行きましょ」
「あ、その程度の危険度なんだ。じゃあ、マークはしておくわね」
スマホで写真を撮って、次のターゲットのポジションに移動する。
今のところ人魔には遭遇していないのはよかったのか悪かったのか。
早く次の手を考えたほうがいいよなぁ。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりずらいネタ
三つあるけど、一つは名前すら出ているので割愛。
・今回の危険なネタ
政治を絡めるのはやめろと、口を酸っぱく言われていますので何があったかは割愛。




