第六十四話・鳩首凝議も神頼み?
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俺がここに来てから、いったいどれぐらいの時間が経過しただろう。
この家の女主人が、時折俺の頭の部分を切断して持っていくが、この土は栄養価が高く、三日もすればすぐに再生できるから、その程度は大目に見てやろう。
幸い、ここは平和だ。
子供が毎日水を与えてくれるし、一週間に一度は肥料も追加してくれる。
魔力のこもっていない土だからと高をくくっていたが、俺が植えられてからは俺の魔力で土は肥沃になっている。
そして俺を食べたものは、そのうまさに虜になっているはずに違いない。
あ、今日は必要ないのですね、わかりました、今晩中にもう少し伸びておきます。
そんな平和な毎日を過ごしていたのだが、つい先ほど。
俺のいる街に突然結界が張り巡らされた。
上級妖魔による対物理障壁、しかも結界妖による複式立体結界じゃないか。
あれは非常に厄介な代物で、結界妖は結界を形成したのち、その結界内を自在に泳ぎ回る。
結界を解除するためには結界妖をせん滅しないとならないのだが、このサイズとなると結界妖の数は一桁じゃないだろう。
そして結界内は、ゆっくりと鏡刻界と同じ環境に変化していく。
いや、それはまずい、ここの土地はもともと魔力がないんだぞ、そんなところで環境を変化させたところで、魔力を伴わない廃墟に変化していくだけじゃないか。
それはやばい、ちょいと結界妖と話をつけてくるか。
そう考えてプランターから両根を引っこ抜いて立ち上がった時。
――ドンッ!!
突然、俺は超高速でベランダの壁にたたきつけられた。
その直後、ベランダの一部が崩れ落ち、俺はマンション最上階から外に向かって吹き飛ばされた。
体内から甘く濃厚なネギ汁が噴出しつつ、俺はゆっくりと地面へと落下していく。
ああ。
こんな死に方をするぐらいなら、いっそおいしくポアレの付け合わせにしてほしかった。
あばよ。
いい夢見させてもらったぜ!!
〇 〇 〇 〇 〇
札幌市中央区・結界内での対妖魔戦での初戦は、人間サイドの勝利で終わった。
もっとも、完全に駆逐したわけではなく、寧ろ催眠術にかかっていた人々を助け出す救出作戦という色合いが濃かったのと、完全に人間に対して優勢であると感じていた妖魔に対しての奇襲作戦だったのが勝利のカギであったといえよう。
催眠術にかかっていた人々は、一時的にティロ・フィナーレ一階ロビー及びいくつかある空室を開放して保護、高校生チームによる強制催眠解除の後、今はベッドに横になって休んでいるところであった。
――乙葉浩介宅では
「こ・と・わ・り・ま・す」
ソファーに座って俺に話を持ち掛けてきた忍冬師範だけど、その話の内容については俺は容認することができなかった。
まず一つ目は、俺の家にある結界装置を、第6課のある北海道庁に移譲してほしいということだった。可能ならという話だったので、これは謹んでお断りさせていただく。
「現状、北海道庁及び札幌市庁舎が使い物にならないと、北海道自体が立ち行かなくなる事態が発生してしまう。いつ妖魔に襲撃されても問題のないように、政治的拠点だけは結界で保護したいという我々の意図は理解できるね?」
「理解はできます。ですので、次に結界装置が完成したら、その時は対処します。ただし、俺が作ったとかいう話は一切オフレコでお願いします」
「それはいつごろになる?」
「さぁ? 材料の調達目途がついたらということで、明日になるかはたまた一か月後か、一年後になるのかはわかりませんよ」
きっぱりと言い切った。
ついでにもう一つ。
「それと、結界装置の製作費用、支払えますか? 一つで軽く一兆円は飛ぶ代物ですよ?」
「そこまでするのか?」
「いや、正確にはもっと安いですけれど、以前、井川巡査長に作った魔導具と同じ、一千億円で手を打ちますよ。分割支払いもオッケーということで、それ、工面可能ですか?」
あまりこっちにすり寄られても困るので、ここは吹っ掛けておく。
そうでもしないと、あれもこれもって俺のやることが増えてきそうだからね。
「効果がはっきりとした時点で、そして納品可能になったときに改めて話し合いを設けることにするよ。札幌市の予算だけでは全くもって足りないだろうし、第6課の予算枠でも立て替えるのは不可能だからね」
「あ、ついでにその金額に対しては無税でよろしく」
「うわぁ、オトヤン鬼だわ。でもそれぐらいだよなぁ」
俺の話を聞いて祐太郎も思わず突っ込んでくるが、もともと祐太郎たちと話し合ったことをここで改めて話しているだけなので。
「それじゃあ次。退魔‥‥いや、あの魔導具の剣と楯を、第6課で購入したい。これは可能か?」
俺が魔力付与したミスリルソードとミスリルバックラーね。
どっちもサイドチェスト鍛冶工房で、一つ128万円だったのよ。
セットで256万円がトータル15セット。
さあ、ハウマッチ!!
「ざっと概算で楯と剣セットを15こ。3840万円でよろしく。これは売ってあげるよ」
「まあ、妖魔に対抗するための装備としては安いほうか。支払いは現金のほうがいいのか?」
「ええ。それで、できればこっちも無税で。この年で確定申告だなんだって面倒くさいし。そもそも原価で譲るので税金取られたら赤字になりますから」
「ううむ‥‥‥これも税務署とか関係各省には手を回しておく。それで、追加で作ってもらえるのか? もしくは仕入れられるのか?」
ほらきた。
まあ、支払いさえしてもらえればいいと思ったんだけれど、あいにくとサイドチェスト鍛冶工房でも品切れ。ついでにカナン魔導商会では取扱いしていませんので、当面は入手不可能。
「まあ、入手方法や製作方法は秘密ですが、ミスリル銀が在庫ないので無理っす」
「そうか。まあ、そっちも可能ならということで検討していてほしい。あと最後になったんだが」
そう説明しつつ、忍冬師範は瀬川先輩のほうを見る。
「彼女の情報処理魔法についてだが、第6課で正式に運用したい。レクチャーが不可能なら、せめて出向もしくはアルバイトという形で手伝いをお願いしたい。それは可能なのか?」
そっちは俺の管轄ではないので、瀬川先輩の出番です。
「申し訳ないのですが、私としては、仲間内の協力というのであればかまいませんが、正式な依頼となりますといろいろと弊害が出る可能性もあるので、お断りさせていただきます。それに、出向という形になりましたら、第6課の事務局での作業となりますよね?」
ようは安全性。
うちでやる分には結界や、万が一の時は俺も祐太郎もいるので安心らしい。
けれど北海道庁でとなると結界による防御は期待できない、さらに魔導具によって総合戦闘力が上がっている第6課局員では、守りに対して信頼性がない。
「厳重な警備を約束するが」
「乙葉君と築地君を正面から止められるだけの守りがあるのでしたらかまいませんよ」
「それは‥‥‥ないな。わかった、では、ここからの協力者として手伝いをお願いする分には?」
「それでしたらかまいませんわ」
こっちは話がついたようで。
「それじゃあ、俺は修行に戻るから」
祐太郎はそれだけを告げて別室へ。
そこでは新山さんに対しての闘気コントロールについての講習をしているらしい。
今回の一件で、新山さんだけが何もできなかった。
いや、俺たちの空腹を満たしてくれるという大切な仕事をしていたんだけれどさ、魔法が使えないということがひけめになってしまっている。
それで、自分なりに何とかしようと色々考えていたらしく、先輩の持っているオーニ・ソプターの加護の卵との相性も調べていたらしい。
結果として、自分の持っている加護の卵が一番安定しているのは理解できたので、それほど落ち込んではいなかったものの、いまはその加護の卵の孵化を促すためにいろいろなことをやっているということだそうで。
がんばれ、新山さん。
「ふぅ。それじゃあ、ミスリルの剣と楯のみ購入ということで。さて、ここからは妖魔の話に戻すが、この結界を破壊して外に出る方法は、いまのところ浩介の魔法による一時的な中和のみということで間違いはないんだな?」
「そうですね。それも、普通の家にあるような扉の大きさで、どれだけの時間を維持していられるかわかりません。そして、それを作ったとして、どうやって結界内の全ての人を誘導できますか? 放送なんて使ったら妖魔に感づかれるでしょうから、そうなったら戦闘待ったなしですよ」
「妖魔の動きが分かればいいのだけれど。瀬川君、今現在の監視システムでは、妖魔の動きは見えないのだろう?」
深淵の書庫を展開している先輩に問いかける忍冬師範。
「ええ。実体化を解除した妖魔は肉眼ではとらえることはできませんので。それに、霧散化してしまった妖魔は、再び力を得るために人間に憑依して精気を吸い取っているはずですから」
「それだ。そこも問題なんだ。実体化した妖魔を滅するのは、妖魔核を破壊するしかないんだろう? けれどそれを破壊する前に消滅したり霧散化したら、それは人間に憑依して精気を吸収し始める。我々にとっては、常に後手後手になってしまう」
そんなこと言われてもとは思うけど。
「それで、妖魔について有効な手段としては『浄化』もしくは『封印』という手段がある。浄化はまあ、聖属性の魔法により存在そのものを浄化するというもので、封印は、弱った妖魔を封印媒体に封印し、封印呪符を施すことで妖魔の活動を停止するというものなんだが‥‥‥浩介、こういうものを作り出すことはできるか?」
「それは無理ですよ。そもそも浄化も封印も、そのギミックがわからないのですから。俺の知っている魔導術式にも存在しないものなので無理ですって」
突然振られたけれど、それは無理。
第三聖典までにはそんなのはないし、第四聖典には俺の生み出した魔法しか存在していない。
まあ、第四聖典が開けているのでそこにあるのかもしれないけれど、魔導書にはまだ移っていないから不可能である。
「そうか。となると、いましばらくは妖魔は霧散化させる方向で時間を稼ぐしかないか。わかった、一度本部に戻っていろいろと検討してみる、いろいろとすまなかったな」
「いえいえ。それじゃあ何か分かったら連絡をお願いします」
では~。
玄関まで忍冬師範と要先生を見送ってから、とりあえずは腹ごしらえということでみんなで食事タイム。
そののち俺たちはどうするべきかを話し合うことにした。
誤字脱字は都度修正しますので。
その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
・今回のわかりずらい? ネタ
柳〇慎吾
あと二つほど特撮ネタと、アニメが一つ。




