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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第十部・幻想郷探訪と、新たな敵

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第588話・一触即発、男女7歳にして同衾せず(プラトニックなんですよ、信じてくださいよ)

――コトッ

 侍女さんに差し出された紅茶を一口、喉に流し込む。

 うん、紅茶についての蘊蓄なんて俺は持ち合わせてはいない、そういうのはどっちかというと祐太郎の出番だからなぁ。

 その祐太郎だけど、大学の講義が終わったらすぐにアルバイトで親父さんの後援会事務所に赴いたり、大通り13丁目の内閣府退魔機関に出向したりと大忙し状態。

 『闘気修練教官』という仕事を引き受けたらしくてね、武神ブライガーさまの頼みである【この世界に魔術を広めてほしい】を実践している真っ最中とのこと。

 ちなみに新山さんは、魔術知識を高めたうえで教員免許を取って、『魔術教師』として高校などで積極的に魔法を教えるとかで。

 瀬川先輩も同じように大学で情報処理を専攻し、後継者育成とまではいかないものの魔術の基礎を広めている真最中とか。


 あ、俺ちゃんは北海学園の魔術講師資格を得ているので問題はないよね。


『さて、そろそろ現実に戻って来てくれないかね?』

「まあ、そうですよねぇ……」


 俺の目の前に座っている虚無のゼロがそう問い掛けて来るので、手にしたティーカップをテーブルに戻す。

 そう、のんびりと休憩している間に、虚無のゼロと銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)さんが俺に頼みごとをしたんだよ。

 それは二つあってね。

 一つは、現行の十二魔将に所属してほしいという事。

 これは俺だけでなく新山さんと瀬川先輩にも打診しているんだけれど、今回は上位ではなく中位、つまり第4位~6位までに収まってほしいとか。

 四天王には前回に引き続き計都姫も所属しているらしく、裏地球(リヴァース)には白桃姫と計都姫、鏡刻界(ミラーワーズ)にも二人の魔族が四天王として所属しているらしい。

 そして12魔将にはプラティさんや嫉妬のアンバランス、傲慢のタイニーダイナーが配属されている。

 第12位は虚無のゼロが、そして残りの5人のうち4人が獣人族代表が務めているとか。

 あ、あとは知らない魔族なのでパス。

 兎にも角にも、裏地球(リヴァース)での抑止力として所属して欲しいらしい。


「事情は把握しましたので、別に名前だけでの所属なら構いませんよ。まあ、俺たちの世界で魔族が猛威を振るうというのなら、力ずくで排除しますけれど」

『それで構わん。新山殿、そして雅嬢も如何かね?』

「乙葉君が引き受けるのでしたら、そのサポートという点でも協力はできますけれど」

「私の場合は、『魔人王の娘』という立場を利用したいのでしょうね。それと先代魔人王という点も」


 そう新山さん達が問い掛けても、虚無のゼロはそれを否定する事はない。

 

『ああ、うまく利用されて欲しい』

「そこまでいうのでしたら、分かりました」

「そうね。では、私も助力させていただきます。ということで、これが一つ目という事は、二つ目も存在するという事ですよね?」


 その先輩の問いかけに、ゼロが頷く。

 そして今まで沈黙を貫いていた銀狼嵐鬼(ぎんろうらんき)が言葉を紡ぎ始めた。


「二つ目だが。伯狼雹鬼(はくろうひょうき)から創世のオーブを取り戻して欲しい。そして三つのオーブを回収した後、封印大陸に向かい武神様にそれを渡してほしいという事だ」

伯狼雹鬼(はくろうひょうき)から……か」


 それはつまり、大隅純也を殺さなくてはならないという事。

 いや、創世のオーブが大隅の体と完全融合していないのなら、まだ助けられる可能性はあるっていう事だけどさ。

 いくら腹黒くて新山さんに危害を加えようとした相手とはいえ、命まで奪うっていうのは違う。

 これは感情ではなく、人としての倫理観。

 数年前、妖魔相手に切ったはったを繰り返していた俺としても、同じ地球人の命を奪うっていうのは違うと理解している。

 まあ、感情的に考えれば悪・即・斬で封印してしまいたいけれどね。

 

「う~ん、無傷で回収っていうのは、かなり厳しいよなぁ。となると、またしても伯狼雹鬼(はくろうひょうき)とやりあうっていう事になるんだけれど」

『創世のオーブが魔人核として馴染んでしまうと、以前よりも強大な力を手に入れるという事に繋がる。それこそ、かつて奴の魂も亜神にたどり着いたがゆえ、魔神ダークさまに等しい力を手に入れる事が出来るやもしれぬ』

「そんな奴相手にかぁ……再生怪人っていうのは、弱いっていうのが相場なんだけれど……。何か対処方法ってありますか?」

『うむ』


 力強くうなずく虚無のゼロ。

 そして口から出た言葉に、思わず呆然としてしまう。


『乙葉浩介、君も創世のオーブを取り込むのだ』

「……はぁ? 待って、ちょっと待ってください。創世のオーブは全部で三つに分割されていて、一つは伯狼雹鬼(はくろうひょうき)の魔人核として使用されている、一つは知識の井戸とかいうところの向こうの世界に存在しているっていうこと。そして最後の一つは、俺たちの身近な存在が所持しているっていうけれど……」


 まさかとは思うが。

 最後の創世のオーブって、俺の魂と同化しているとか?

 以前、新山さんを蘇生した時、俺の魂の殆どがコストとして支払われたけれど、僅かに残った魂の欠片から俺の魂を再生したっていう話だったよな。

 その時に、創世のオーブを使用したというのか?


「ま、まあ、可能性の一つとして尋ねるけれど。残った最後の欠片って、俺の魂と同化しているっていう事じゃないよな?」


――ゴクリ

 喉がからっからになる。

 気のせいか、嫌な汗も流れてきた。


『ふむ。そういう可能性もあったということか、いや、乙葉浩介、君の魂と創世のオーブは関係ないな』

「そうか……って待て、創世のオーブは魔人核の材料にもなるっていうことだよな。まさか、ミラージュの魂がそうだっていうのか?」

『ミラージュとは誰かね? 私はその可能性については0%と断言できるが』

「……うあっあっ、ああ、そうですか。なんかホッとしたわ」


 とはいえ、まだ油断はできない。

 新山さんの再生の時に組み込まれたとか、いろんな可能性が残っているからなぁ。


「あの、私達の身近に存在するっていうのは、どういう事でしょうか?」

『君たちの身近であるというのは、その場所を訪れる事が出来るのは君達だけ、乙葉浩介ゆかりの者達だから。そしてそこに向かうための道標は、君の右手が知っている筈だ』

「俺の右手……って、魔皇ヘルメスさんが? え、どういう事?」

『私も初耳ですが。虚無のゼロ、私には見当が付きませんね』


 さすがにここで黙っている訳にはいかないと、俺の右手にヘルメスの魔皇紋が浮かび上がりゼロに問い掛けているのだけれど、


『残りの一つは、乙葉浩介、君の夢の中に存在する。破壊神を滅ぼした際、君は虚無に飲み込まれ、ある場所にたどり着いたはずだ。つまり最後の創世のオーブは、幻想郷レムリアーナに存在する。正確には、創世のオーブを持ち逃げした者が、そこにたどり着いたという事であるがね。残念な事にそのものは消滅したが、その際、オーブはどこかに隠されてしまっている』

「それを探して来いっていう事か。でも、幻想郷レムリアーナって、どうやっていけばいいんですか? その手段なんて知りませんよ?」


 そう問い掛けるけれど、虚無のゼロはあっさりと一言で返してくれた。


『幻想郷レムリアーナに行きたい。そう思って眠りにつくだけでいい。そうすれば、幻想郷レムリアーナへ向かう為の扉は開かれるだろう。ただし、気を付けたまえ。あの世界は全ての世界の人々と、夢という道を使って繋がる。ゆえに、君の夢を道標に、良からぬ存在までこの世界へとやってくる可能性があるからな』

「良からぬ存在とは、一体何でしょうか?」


 先輩がそう問い掛けると、虚無のゼロも腕を組んで考え込む。


『いや、それは禁則事項であるが……先代魔人王の問いという事ならば……良からぬ存在とはすなわち、滅びし故郷から逃れた流民。それも、我々の世界ではない、外世界の神々の落とし子たちという事であろう。乙葉浩介に分かりやすく説明すると』

「異世界からの侵略者……ですか?」

『いかにも。そしてそれらは我らと異なる法則で生きている故、対処が可能かどうかも定かではない。よいかね、外世界の者に悟られず、創世のオーブを回収したまえ。一つでも手元にあれば、知識の井戸の向こうにある創世のオーブは引き寄せられる』


 つまり、レムリアーナで創世のオーブを回収すれば、もう一つを発見する事は容易たやすいという事か。

 そうと決まれば、とっとと自宅に戻って寝る事にしますか……って、ちょい待ち、俺の夢の中っていう事は俺しか行けないっていう事?


「あの~、俺がレムリアーナに行く方法は分かりましたけれど、これって新山さん達は行けないという事ですよね?」

『いや、身を寄せた状態で、同じ夢を見れるように祈れば、あるいは可能。ただし、出来るだけ多くの面積で触れ合っていた方が安定する』

「あ~、なるほどねぇ……って、ちょい待ち、できるだけ多くの面積ってどういう事? まさかとは思うが」

『肌の触れ合い。そうだな、裸で抱き合えばよいかと思うぞ、君たちは恋人同士なのだろう?』

「「ちょ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ」」


 俺と新山さん、同時に突っ込み。

 いや、その方法ってどうよ、今まではずっとプラトニックな交際を続けていたんだよ、それをいきなりすっ飛ばしてしまえっていう事か?


「そうですよ、私と乙葉君は、プラスチックな絞殺死体……いえ、プラトニックな交際をしているのですよっ」

「まあ、この機会にくっついてしまうというのもありかもしれませんね」

「せ、先輩まで!!」


 ああ……新山さんが真っ赤な顔でその場に座り込んでしまったんだが。

 いやあ、この混沌状態をどうにか打破する方法はないものかね。 


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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