第586話・質実剛健、淵に臨みて魚を羨むは退いて網を結ぶに如かず(あ~、タイトル長すぎ)
――妖魔特区内・札幌テレビ城下
元12魔将のプシ・キャットが帰ってから。
まず、やるべきは集められた情報の中から最適解を探す事。
だけどさ、今まで集めた情報の全てを精査するには、今の地球上の施設などでは難しい。
かといって、そういったもの全てが記録されている場所があるかどうかと考えると、正直言って存在があやふや過ぎるといっても過言ではない。
それでも、一縷の望みを欠けるとすれば、可能性の一つに挑戦するっていうのは男のロマンだよねぇ。
「ということで、瀬川先輩。確か深淵の書庫の能力の一つに、神々の書庫のデータバンクを調べることができるっていうのがありましたよね? そこにアクセスして、今までの情報について調べてもらっていいでしょうか?」
そう、新山さんから聞いた、深淵の書庫の追加モジュール。
それが神々の書庫へのアクセス能力。
それさえあれば、森羅万象いかなる情報も引き出す事が出来るのだ。
「あらら、ごめんなさい。その能力って、魔人王モードじゃないと無理なのよ。魔人スタイルに変身はできるけれど、今の魔力値だとどうしても開ける事が出来ないのよねぇ」
「はい、終了!! っていうか、外部からの魔力供給では無理なのですか?」
要は、俺の魔力を先輩に流し込むことでそれは可能なんだけれど。
そういえば、他人への魔力の受け渡しって魔力玉以外にもあった筈だよね。
「まあ、不可能ではないのですけれど……」
「では、ものは試しにということで、お手を拝借!!」
パパンがパン!!
っていう事で、先輩の手を取って魔力を注ぎ込もうとするんだけれど、そもそも俺の魔力って【神威の魔力変換】なので、とんでもない量が一気に溢れていく。
そしてそれは、瀬川先輩の体内を巡る魔力回路では受け取る事が出来ないっていう事。
要は、キャパシティの問題という事か。
「……うん、ちょっときついわね。以前の私なら、王印に余剰魔力を蓄える事が出来たのですけれど。さすがにこの量では、体から溢れてしまうので。深淵の書庫っ」
――シュンッ
素早く先輩が深淵の書庫を展開。
そして俺が送っている魔力の余剰分をすべて深淵の書庫の制御に回しているんだけれど、一分も経つと深淵の書庫の内部モニター全てが真っ赤に染まり、アラート音が鳴り響き始めた。
「ふぅ……乙葉くん、ありがとう。どうやら魔力波長が私のとは異なること、元々神威だったものを魔力変換していることなどから、私の深淵の書庫では制御は不可能のようね。元々存在していた私の魔力でなら、きっとうまくいけたんでしょうけれど」
「それってつまり、俺の送り出した魔力を先輩が吸収し、先輩の波長にしてしまえば問題ないのでは」
そう説明した直後、先輩と新山さんの顔が真っ赤になった。
え、どういうこと?
「う~ん、乙葉くん、フェイトっていう作品は知っているよね?」
「ええっと、ああ、ゲームの方ね、それはわかっているけ……れ……はぅあ」
そうか、魔力回路を一つのパスとして使用する、そのためには繋がりが大切であり、それが安定していない場合は代用の魔力供給を行わなくてはならない。
これには【心のつながり】というものも関係していて……ってちゃうわ、俺、落ち着け。
「ゴホン。ま、まあ、私じゃなく新山さんになら、綺麗に魔力供給が出来るんじゃないかしら?」
「そうですね、それじゃあちょっと試してみますか」
「た、試すって!!」
アワアワと狼狽している新山さんの手を握り、ゆっくりと魔力を注いでみる。
するとあら不思議、瀬川先輩よりもスムーズに流れて行くじゃあ~りませんか。
「ほほう、心の繋がりが強いほど、魔力の回路は一つとして計算される。これは面白いのう。では乙葉と小春や、接吻してみよ、それならもっと大量に魔力を送り込めるのではないか!!」
「「人前でっ!!」」
ニマニマと笑いつつ呟いている白桃姫に、二人同時に突っ込んでみせたわ。
「ま、まあ、夫婦漫才はそのぐらいで。とりあえず、神々の書庫を開くには、今の私ではちょっと厳しいわね」
――プゥン
深淵の書庫の一角に扉が現れる。
それは、今現在、飽和状態にある魔力を使って無理やり展開した神々の書庫の扉。
だけど、それが開く予兆は何も感じられない。
「うん、ここまでが限界のようね。そうなりますと、別の方法で答え合わせをするしかないという事ね。乙葉くん、例の石板はどうなの?」
「それがですねぇ……」
宝楼嶺魔から預かった石板。
それによると、創世のオーブの一つは伯狼雹鬼の疑似魔人核で正解。
もう一つは例の【井戸の向こうの世界】で間違いはないらしい。
そして残りの一つか。
伯狼雹鬼のように、疑似魔人核として使われている可能性を視野にいれて、色々と調査する必要があるという事だよなぁ。
もう一つの懸念材料であるプラグマティスの存在、これについても問題点はいくつもある。
分体となった核は存在する、それならば、分体は散り散りになったプラグマティスの残滓のようなものを集めて、完全体になろうとするのではないかという事だが。
――フゥン
そう思ったとき、石板の文字に変化が現れる。
そこには、【プラグマティスの分体、その散り散りになったエネルギーはひとつの種として存在する】と浮かび上がったんだが。
さすがにこれは一人で解決するものじゃないという事で、浮かび上がった文字についてその場にいる皆に説明するんだけれど。
「……はぁ、そういうことか。それは発見するのは不可能じゃな」
「え、そういう事なの?」
「うむ」
白桃姫は回答にたどり着いたらしい。
でも、俺たちには何がなんだかさっぱりわからん。
事実、新山さんと先輩がいくつもの可能性について議論を始めているんだけれど、そのどれもが正解とは異なっているようにしか感じられない。
龍脈と一つになった説、偉人の魂説、神威を伴い魔導具の存在などなど、確かにそれらしい説もいくつかあるけれど、そのどれもがあやふやすぎる。
「なあ白桃姫、その答えって、俺にもわかるものなのか?」
「少なくとも、ここにいる者達は一度でも触れた事がある。そういう事とは予想もしておらんかったわ」
「「「え?」」」
俺ちゃんたち、3人とも茫然。
そもそも、俺たちが触れたことのあるもので、共通点は……。
「あ、分かりましたわ。そういうことなのですか」
「うむ。まさかとは思ったが、それが正解じゃな」
先輩も答えが見えたらしい。
ちょい待ち、俺と新山さんには答えが見えないんだけれど。
「では瀬川よ、石板に問いかけるがよい」
「わかりましたわ。石板さん、プラグマティスの分体から散り散りになった力。それはすなわち【魔皇の力】ではありませんか? 正しくは【魔人王】が、そのプラグマティスの分体から散った力を集めていたということでは?」
――スッ
すると、石板の文字が再び変化した。
【プラグマティスの分体、および散逸した意識と力は、王印を通じて魔人王に蓄えられる。それはやがて魔皇紋という力に変化し、授けられた存在にプラグマティスの力の一片を与える】
――フゥツ
その石板の変化と同時に、俺の右手の魔皇紋、新山さんの腕での魔皇紋、先輩の胸元の魔皇紋、そして白桃姫の半身に浮かびあがった魔皇紋が輝いた。
そして俺たちは知った。
この魔皇紋の全てが、【原初の魔皇】と呼ばれるものから与えられたという事を。
その原初の魔皇がすなわち、プラグマティスの分体であるということも。
「……なるほどのう。妾、全ての答えが解ったぞよ?」
「え、そうなのか?」
「うむ。とはいえ、これは直接問い掛けなくては解らぬ。では皆の衆、答え合わせに向かうとしようぞ」
白桃姫がすっくと立ち上がると、精霊樹の元へと近寄って行く。
そして両手を翳して巨大な扉を開くと、そこに向かうように俺達を手招きした。
「あの……白桃姫さん、どこにいくのでしょうか?」
「決まっておろう、全ての答えを知るものじゃよ。目的地は魔大陸帝都ドミニオン。銀狼嵐鬼にも話を聞く必要があるからな」
それだけを告げて、白桃姫が扉の中へと入って行く。
そして俺たちも覚悟を決めて、扉の中へと飛び込んでいった。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




