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【書籍化】ネット通販から始まる、現代の魔術師  作者: 呑兵衛和尚
第十部・幻想郷探訪と、新たな敵

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第575話・山紫水明、事実は小説よりも奇なり(不思議な井戸の底には……)

 豊平神社の蚤の市を見て歩いてから。

 俺たちは社務所へとやって来た。

 ここに来た目的は、新山さんと紗那さんが上空から確認した『聖域反応』の真偽を確かめる為。

 幸いな事に、晋太郎おじさんと親父の伝手もあるらしいのでここの宮司さんに話を聞く事になった。

 

 社務所の受付で事情を説明すると、そのまま奥の応接間へと案内されました。

 え、事情の説明はどんな感じだって?

 そりゃあもう、ストレートに『札幌市内の聖域について、ちょっと伺いたい事がありまして』って話したら、あっさりと通してくれたんだよね。


「初めまして。この豊平神社の宮司を務めています姫小路切前(ひめのこうじきりさき)と申します。乙葉浩介さんと申しましたね。豊平の乙葉さんというと、築地晋太郎さんの隣の乙葉さんで間違いはありませんか?」

「はい。うちの事はご存じでしたか」

「ええ。神社本庁と陰陽府は深い繋がりがありましたので……とお伝えすれば、ご理解いただけますか?」


 うはぁ。

 何もかもお見通しっていう感じなんだけれど。

 つまりも親父や母さんの伝手でもあるという事か。

 それなら話は早いか。


「ありがとうございます。今のご説明で十分に理解出来ました。では、早速ですが本題に入らせていただきます。魔力計測機で札幌市内を調査していたのですけれど、こちらの神社から神威反応がありまして。それでちょっと気になったもので、詳しいお話をお聞かせ願いたいなぁと思って来ました」

「札幌市内の神威反応は、こちらと北海道神宮の二か所だけだったのです。それで、ちょっと気になってしまったもので」


 俺に続いて新山さんが補足してくれる。

 すると姫小路宮司は頤に手を当ててフム、と呟いた……かと思ったら、そのまま思案を始めた。


「あ、いえ、思い当たる事がないのでしたら別に構わないのです。ちょっと気になっただけですから」

「ああ、そうではありません。思い当たる節が多過ぎまして、どれかと考えた次第でしてね」

「「……はぁ?」」


 おっと、新山さんと思わずハモってしまった。

 

「え、えぇっと。思い当たる節があるのですか?」

「まあ、うちの倉庫には陰陽府から預かっている魔導具もありますし、そもそも害意を成す妖魔が封じられている媒体も丁寧に保管してあります。それらが反応したのではないかと」

「ああ、そういうことでしたか……って、そんなものがここに安置されていて、大丈夫なのですか?」


 問題は、そこね。

 厳重管理されているというのならわかるけれど、倉庫に入れてあるだけなの?

 そういうものってさ、大規模な術式結界に包まれた総古都華で、外部に魔力が漏れないようにされているんじゃないの?

 それを、何だか骨とう品のような扱いってどういう事?


「まあ、問題はないでしょう。でも、聖域反応があったということは、それらとは関係ない物があるっていう事ですよね?」

「まあ、そういう事でしょうね」

「もしよろしければ、それを教えて欲しいのですが。詳しい事情はお伝え出来ませんが、ある目的で探しているものがありまして、それがここにあるのかもしれないのですよ」


 新山さんがそう説明すると、姫小路宮司がパン、と自分の右ひざを軽くたたいた。


「まあ、それならよろしいでしょう。ただし、この件については口外してはいけません。そうですね……お二人の目的の解決に必要な場合は、信じる事が出来る相手にだけ伝えてください。では、こちらへ」


 先程までとは違い、何というか威圧のようなものを感じる。

 そして先に立ち上がって歩き始めたので、俺達は黙ってその後ろについて行った。

 社務所を出て真っ直ぐ前に進んで行く。

 丁度右手に本堂があるが、そこを通り過ぎて更に奥へ。

 御神礼授与所と清興殿という看板のある小さな建物の前を抜けると、正面に交通安全記念塔が立っている。

 でも、その先は壁だし、右に曲がっても針供養塔とか、ますかみ会館っていう建物があるだけなんだけど……って、あれ?


――シャンッ

 清興殿という建物の前を抜けたとき、姫小路宮司がいつの間にか手にしていた鈴を軽く鳴らした。

 そして左手、清興殿の横へと進んでいくんだけれど、そこって何もないんだけれど……。


――スッ

 そして姫小路宮司が消えた。


「……はぁ?」

『これこれ、そこで立ち止まって驚いてはいけませんよ。私の後について来てください』

 

 丁度姫小路宮司が消えた辺りから声が聞こえて来る。

 思わず新山さんと顔を見合わせてしまったけれど、ここは勇気を出して踏み込んでみるか。


――スッ

 そして姫小路宮司が消えた辺りにたどり着いた時、周囲の風景が一瞬で変わった。

 目の前には深い森。

 そしてそこに立っている小さな石造りの古い蔵。

 その蔵の横には、屋根付きの井戸が一つ。

 姫小路宮司は、その井戸の前で俺たちに手招きしている。


「あの、姫小路さん。ここは一体、どこなのでしょうか?」

「神域……でしょうね。北海道に存在する神社のいくつかには、このように境内の中に神域とつながる道が封じられているものがあります。といっても、殆どの道は封じられたままでして、今もこうやって出入り出来るのはうちと北海道神宮だけでしょうねぇ。さてと、それじゃあ、この井戸の中を覗いてみてください」

「あ、は、はい……それじゃあ」


 なんというか、俺たちの知識の範疇を越えた話が聞こえているんだけれどさ。

 まずは姫小路宮司に言われた通り、井戸の中を覗き込んでみる。


「……うん。結構すぐのところまで地下水が上がってきているのですね。青空が映り込んでいますよ」

「ああ、今日は晴れでしたか……」

「そうみたいですけれど……」


――ツンツン

 そんな話をしていると、新山さんが俺の服の裾をつかんで軽く引っ張っている。


「んんん? 新山さん、なにかあったの?」

「何かじゃないよ。上、上を見て」

「上って……ああ、井戸に雨が落ちないようにしっかりした屋根がついているだけじゃ……え?」


 慌てて井戸を覗き込んでみると、やっばりそこには青空が映っている。

 しかも、そこまで綺麗に空が映っているにも関わらず、俺の顔は映り込んでいない。

 は、は、はぁ?

 一体何が起きているんだよ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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