第572話・苦心惨憺、席の暖まる暇もない(お助け白桃姫先生)
大雪山系から札幌に戻って来た俺は、今回の一連の情報を擦り合わせるべく妖魔特区へと向かう事にした。
とはいえ、さすがに到着したのが夕方という事もあって、札幌テレビ城下には白桃姫たち魔族の姿と、後は新山さんと要先生の姿しか見えなかった。
時間帯を考えると、まあ、忍冬師範とかは仕事中かもしれないのだが、要先生がここにいるのは何故でしょうか。
「あ、乙葉君おかえりなさい。情報集め、どうだった?」
「まあ、色々と知る事が出来たのと、相変わらず確信には近づける事が出来なかってぐらいかなぁ。新山さん達はどんな感じ?」
「私と遮那ちゃんは、魔法の箒で空から調査をしていたけれど。ほら、有馬博士が開発した魔導具があるので、それを使って調べてみたらって遮那ちゃんがいうので、それを使ってみたのだけれど……」
「それが、これ?」
そう。
妖魔特区にやって来てからずっと、奇妙な物体がテレビ城下広場に止まっていたのに気が付いていた。
具体的に言うとだね、ちょいと大きな魔法の箒でバイクのフルカウルのようなものに包まれているのと、左右に張り出した小さな翼、そして上部に飛び出して大きく広がっている円形のレドームのようなもの。
何ていうのか、『強襲偵察機型魔法の箒』とでもいえばいいのかなぁ。
しかも複座型で、しっかりとヘッドセットの取り付けられている近未来型ヘルメットまで接続しているじゃないか。
「うん。有馬博士曰く、この上部魔導センサーで魔力、闘気、神威、妖気を自在に探査する事が出来るのと、魔族の魔人核反応まで的確に計測する事が出来るんだって」
「……マッドサイエンチィストを越えたなぁ。しっかし、随分とコアなセンサーを搭載している事やら」
そう呟きつつ、強襲偵察型魔法の箒に触れて天啓眼を使ってみるんだけれど。
『ピッ……基礎設計思想は、災禍の赤月調査時に異世界から持ち帰った道の魔導具によるものと推測。そこに有馬式錬金術とファウスト博士の叡智が凝縮して完成した、現代レベルでは最高峰の魔導具である』
「まじかぁ、こいつは参った。俺が作るどの魔導具よりも高性能じゃないか。それで、これを使って調査した結果としては、何か面白いものでもあったの?」
「それなんですけれど……ちょっと、これを見てください」
ちようど近くに置いてあったテーブルに、新山さんが地図を広げる。
それは札幌市の全域図で、あちこちに色違いのマークが施されている。
うん、丸山の表参道にある喫茶・九曜には赤い印が付いているねぇ。
「この赤い点は魔族の反応かな? 青い点はうちにもついているし、新山さんのうちにもあるんだけれど、これってなに?」
「これも魔族反応ですけれど、神威も入り混じっているものだと思います。黒い点は魔導具で、丸山の貿易会社からもっとも多く反応していますね。次が新札幌の露店ですけれど、ジェラールさんかと思って確認してみたのですが、どうやら違っていまして。そちらについては、退魔機関第2課が動いて調査している所です。それで……」
ああ、二か所だけ銀色のマークが施されているねぇ。
一か所は北海道神宮で、もう一か所は豊平神社。
これが神威そのものの反応だとすると、北海道神宮はわかるよ、聖域という意味で反応しているんだろうから。
でも、なんで豊平神社まで?
それにさ、ほかの神社でも反応があって然りなのに、どうしてノー反応?
「こことここの神威反応がおかしいっていう事か。でも、豊平神社でなんで反応が?」
「それは、これからの調査に関わって来ると思います。まずは上空からの広域調査だけですから。それで、乙葉君の方は、どんな感じだったの?」
「こっちの方はねぇ……」
という事で、カクカクシカジカと一通りの説明を行ってみた。
まあ、一番のヒントは宝楼嶺魔さんからの情報が刻まれた石板でね。
とはいえ、ここから先は相変わらずノーヒント。
こうなると、新山さんや瀬川先輩に手を貸した方が建設的だよなぁと思ったんだけれど。
「何じゃ……これだけのヒントがあれば、後は直接現地にて話を聞いてみるだけではないか」
「うわ、誰かと思ったら白桃姫か。今の話ってつまり、ここに記されているものの全てを理解したっていう事?」
「全てではないか。少なくとも、今の妾なら理解出来るものが一つある。『一つはそれを手に悪しき存在をこの世界で再生しようとする者、即ち『過去の亡霊』が所持しているが、その理を知らない』、ここの一説じゃな。これは鏡刻界の我らが大陸の中央帝都、王城にヒントがある。成程なぁ……過去の亡霊とは、あやつの事じゃったか」
「えええ、それって誰ですか?」
新山さんがそう問いかけると、白桃姫はニイッと笑って右手を差し出した。
すると、新山さんもにっこりと笑って両手を合わせ、神威玉を作り出しているじゃないか。
「ありゃ、すっかり神威のコントロールが出来るようになって来たねぇ」
「ううん、まだまだだよ。術式を使って具現化する事は出来ても、それを上手く制御するのは大変だからね」
「そもそも、神威を具現化する時点でおかしいと気付くがよい。これだから、神々の眷属というのは……」
「でも、祐太郎と瀬川先輩は神威を使いこなしていないよね?」
そう白桃姫に問い掛けると、またしてもニイッと笑った。
いや、それってどういう意味なの? 秘密主義も大概にして欲しい所だよ。
「さて。それじゃあ鏡刻界の話じゃったな、以前は妾もよく判らなかったのじゃが……玉座の後ろに掛かっているタペストリーがあるじゃろ。あれは実は、魔人王にしか通る事が出来ない秘密の異空間に繋がっていてな。詳しい話については、直接赴いて銀狼嵐鬼にでも聞いてみるとよい。もしくは、雅なら何か知っているやもしれぬな。彼女も魔人王であったのじゃから」
「成程ねぇ……それで、残りの二つは?」
「知るか、たわけが」
まあ、そういう事になるよねぇ。
となると、後は直接現地に赴いて、色々と聞き込みするしかないか。
とはいえ、今いけそうな場所は北海道神宮と豊平神社か。
確か、祐太郎の親父である慎太郎おじさんも、豊平神社には御奉賛金をしていた筈だよなぁ。奉納石柱があるって祐太郎からも聞いた事があったからなぁ。
それじゃあ、明日は豊平神社にでも聞き込みに行きますか。
「うん、それじゃあ私も付き合うよ。あの場所には縁があるからね」
「ああ、そうだね。それじゃあ朝一番で行って来ますか。その前に慎太郎おじさんに話を聞いてからの方がいいと思うけれどね」
正確には口利きしてもらうだけだけれどもさ、そういうのって大切だよね。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




